概要
レシプロエンジンのうち、シリンダーを直列に6つ配置したエンジン。
点火タイミングの関係上、振動を最も打ち消しやすい構造のため「完全バランス」と呼ばれる。特にBMWの直6は「シルキーシックス」と称されるほど滑らかな味で人気が高い。また直6を2つ並べたような構造のV12も同様に「完全バランス」とされる。
市販四輪車における直6
直6は構造上非常に長いため、必然的にほぼ縦置きとなる(横置きはボルボの一部モデルのみ)。
かつてはスポーツカーやSUVなどによく使われたが、年々厳しくなっている衝突安全基準のクリアが難しくなった(ぶつかったときにエンジンが運転席に突っ込んで来てはならないため、エンジンルームに空間の余裕が必要)ことから、1990年代後半以降はやや複雑だが全長がコンパクトにできるV6エンジンにとって代わられていった。2000年代にはトヨタの2JZや日産のRB26など名機と謳われたエンジンも次々と終焉を迎え、日本車ではトラックやバスなど大型車両に使われるのみとなっていた。
その中にあってボルボ・カーズは直6を横置きする奇策に打って出、衝突安全とボンネット短縮を両立できることから多くのモデルに搭載されていたが、2015年に生産を終了。直6の乗用車を手掛けるのはBMWのみとなった。
ところが2010年代半ばにメルセデス・ベンツが技術の進歩により衝突安全をクリアして、乗用車用の直6を復活させたことにより注目が集まるようになった。
元々直6には振動面以外にも、
- V6より構造をシンプルにできる(バランスシャフトがいらない、シリンダーヘッドを1つにできる、触媒の数を半減できるなど)
- 全長はともかく、占有空間体積自体はV6よりも少ないため、ハイブリッドシステムを載せやすい
- モジュラーエンジン化で直4や直3に構造を応用でき、開発コストを削減できる
- 排気温度を下げずに触媒へ排気ガスを導けるため、触媒性能を高めやすい
などといったコスト・環境面でのメリットが多かった。
そのためコストをゴリゴリに詰めて環境性能を追究する"CASEの時代"においては重要な武器と再認識されるようになり、開発が噂されるメーカーもチラホラ見え始めている。
日本車ではトヨタがBMWからの供給という形だがGRスープラ、マツダがディーゼル仕様でCX-60に直6の乗用車を復活させている。
法律の厳格化が理由で消滅した技術が復活するという例は、近年ではやや珍しい。
レーシングカーにおける直6
レーシングカーでは市販車ベースの競技で威力を発揮しており、特にグループAを制圧した日産のR32型スカイラインGT-RやBMW M3などが有名である。
開幕した当初のJGTC(現SUPER GT)でも日産が、WTCC(世界ツーリングカー選手権)でもBMWがタイトルを獲得していたが、直6は長いため前後バランスに難があり、その後競争の激化と共に日産はV6、BMWは直4へとそれぞれエンジンコンバートが行われている。
2020年代でもドリフト系競技では、1990年代国産スポーツカーに搭載されていた直列6気筒(トヨタ2JZや日産RB26DETTなど)がチューニングベースとしての素性の良さから、一線級で用いられている。市販状態では直3しか載らないGRヤリスにすら、直列6気筒が押し込まれるほどである。
二輪車における直6
バイクではかつてはホンダ(CBX1000)やカワサキ(Z1300)なども作っていたが、現在はBMWが生産するのみである。
主な直6エンジン
主な搭載車種
トラック
バス
気動車
最近の気動車のほぼすべて。キハ40系もすべてこれである。