概要
後漢末期、黄巾の乱が起きた際、義勇軍を結成し挙兵した劉備に関羽らとともに当初から付き従い、以降は劉備と関羽とは兄弟のような絆で結ばれ、ともに戦乱の世を渡り歩く。
その人柄は単純で怒りっぽく、奔放で無類の酒好き。知略に疎い筋肉馬鹿であるが、それを気にしてか兵法を学ぼうとしたり、策で曹操軍を足止めしたりするなど、関羽にはバランス面で劣るものの優秀な武将である。
その武力は関羽に匹敵するとも言われ(関羽は曹操に一時降っていた際、曹操に対し自分より張飛の方が強いと述べている)、長坂の戦いではたった一人で曹操軍の侵攻を食い止めたほど。
一方面の軍司令官や行政長官を務めた関羽と異なり、張飛は野戦指揮官としてその力を発揮し、劉備も外征戦争などで同行させていた。
矛を得物とし、後世で演義に語られる場面では明時代の武器・蛇矛を武器にする。
そのため「張飛といえば蛇矛」というイメージが定着しており、関羽の青龍偃月刀同様に彼を象徴するアイテムとなっている。
関羽の敵討ちで呉へ出兵した際、以前から自分に恨みを抱いていた范彊・張達に就寝中に寝首を掻かれて暗殺される。
人物
信義に厚く目上の者や自分より実力がある者には礼節を持って接するので、位の高い将軍などからは評判が良かった。
一方で粗暴で気性が荒く、しばしば兵を死刑にしたり、指揮官クラスの部下を鞭打ち、あろうことかその人物を近侍として侍らせるという暴挙も行っていた(人前で大恥をかかされるのは中華文化圏の人々が非常に嫌う行為である)。劉備もこうした行いを注意していたのだが、結果的に張飛の首を絞めることとなる。
これは関羽とは逆の評判であるが、陳舜臣はこのことについて、関羽と張飛はともに卑しい出自をコンプレックスにしており、成功してもたたき上げの矜持を捨てなかった関羽は馬超のような豪族を目の敵にし、反対に張飛はその成功を素直に喜んで士大夫層を敬ったのであり、根源は同じであるとしている。
創作における張飛
「愛すべき馬鹿」として民衆には人気で、三国志演義の原型となった三国志平話では主人公格の扱いを受けている。
また明王朝期の中国には「野原で楊貴妃の遺骨を見つけて供養した男が、その礼として幽霊の楊貴妃に夜伽をしてもらった。それを羨ましく思った別の男が同じく野原で遺骨を見つけて供養したところ、幽霊の張飛が現れ夜伽をすると言い出した(妃と飛は中国では共にフェイと読む)」というアッー!な笑い話があるが、こういった民衆のジョークのオチ要員として使われている辺りからもその人気の程が窺える。
ただ、演義や平話では粗暴な一面や酒癖の悪さが強調されており、本来は劉備や関羽がやらかした事件を張飛がやった事にされてたりと結構貧乏くじを引かされてもいる。このため、直情的で粗暴な荒くれものとして描かれがちな張飛は、教育水準が向上した現代の創作もの三国志においてはあまり読者の共感を得られず、人気は凋落傾向にある。
余談
しかし史書を紐解くと、演義とは少し違った意外な「知将」張飛の姿が垣間見える。有名な「長坂の戦い」では、演義とは違い橋を焼き落とした後に護衛の20騎に弩を構えさせたとある。
この時、曹操は自ら先行軍として騎兵5千を率いて劉備軍を追撃した。三日三晩の強行軍で昼夜問わず追いかけているため、この時率いていたのが軽装騎兵である事はほぼ間違いない。
持っている弓は精々が軽弓や馬上弓であり、川を挟んだ状態で射程距離の長い弩兵に相対する事は自殺行為以外の何者でもない。それが寡兵である事など敵である曹操に知りようも無く、彼は本隊が来るまでは劉備の追撃を諦めざるを得なかったのである。
つまるところ、長坂の張飛の名場面は一世一代の大ハッタリだったのだ。
長期的な戦略を構築する能力こそ無いものの、その場に応じて臨機応変に戦術を組み立てる事ができる。案外、彼はそんな武将だったのかもしれない。
容姿
娘が二人とも劉禅の皇后になっていることから、「張飛美形説」が存在する。
しかし容姿だけで後宮入りが決まるわけでもないので、あくまで説の一つ。
大体のメディアでは虎髭に丸顔の豪傑然とした姿で描かれている。その中でも横山版はワイルド系のイケメンとして描かれており、かっこいいと評価が高い。
登場作品ごとの張飛
横山三国志における張飛
おおむね、演義に沿った活躍を見せる。声優は藤原啓治氏が担当した。
蒼天航路における張飛
担当声優は関貴昭。
他の演義系作品に比べて変態化されたキャラが多い中で、割と他の創作作品に近い造形や性格であり(元がネタキャラに近いせいもあるが)、むしろ奇人めいた劉備や関羽に対しツッコミを入れる常識人めいた場面も多く見られる。物語は関羽が死んで、直後に主人公曹操が死ぬ場面で終わっているので、最後は死んだことが簡潔に書かれているだけである。
名前は正史にならって「益徳」だが、作内の世界内の講談で「翼徳」と呼ばれていることが民衆の会話で語られている。
コーエー三国志シリーズなどのSLGにおける張飛
数値的には全体的に武力は高いが、知力は低い典型的な猛将として描かれている。呂布と比べると武力に関しては必ず劣るが(呂布が武力100なら、張飛は99~98前後)、関羽とは互角かそれ以上の数値がついている。作品によっては、前述した戦果をふまえて知力値が高い場合もある。
劉備に対しての義理は固いので、少なくとも呂布よりは安心して使える。
ニコニコ動画『ニコニコ歴史戦略ゲー』における張飛
史実で夏侯淵の姪を嫁にしてしまっているために、大概の場合「ロリコン扱い」されている。
『真・三國無双』シリーズ
声:掛川裕彦
『三国伝』
『一騎当千』
『恋姫†無双』シリーズ
担当声優は芹園みや(PC版)、西沢広香(コンシューマーゲーム&アニメ版)。鈴々を参照
『三国恋戦記』
『三国戦紀』
張飛(三国戦紀)を参照
『十三支演義』
声:岡本信彦
『DRAGONSISTER』
『イナズマイレブンGOクロノ・ストーン』
声:奈良徹
孫悟空のような格好をしており、劉備に全幅の信頼を置いており、劉備の意見には『おう、俺もそう思っていたんだ』と相槌を打つ。それは自分が納得いかない意見であっても劉備が納得するならば言うことを聞く様子。
『邪神ちゃんドロップキック』
声:小西克幸
凶悪魔界動物の監獄でもある魔界動物園にいた魔界パンダ。登場悪魔の一体『ランラン』に呪いをかけた事で彼女をミニチュアサイズのパンダにしてしまった。その後、食べ過ぎで死亡している。暴れん坊で魔力が高く、天界で危険生物リストに入っていた。彼の呪いをかけられた相手はパンダの頭部に中年男性の身体をしたパンダ人間となってしまう。