ーーーああ、ロミオ、ロミオ! なぜあなたは、ロミオなの? お父様と縁を切り、家名をお捨てになって! もしもそれがお嫌なら、せめてわたくしを愛すると、お誓いになって下さいまし。そうすれば、わたくしもこの場限りでキャピュレットの名を捨ててみせますわ
ーーー黙って、もっと聞いていようか、それとも声を掛けたものか?
ーーーわたくしにとって敵なのは、あなたの名前だけ。たとえモンタギュー家の人でいらっしゃらなくても、あなたはあなたのままよ。モンタギュー ――それが、どうしたというの? 手でもなければ、足でもない、腕でもなければ、顔でもない、他のどんな部分でもないわ。ああ、何か他の名前をお付けになって。名前にどんな意味があるというの? バラという花にどんな名前をつけようとも、その香りに変わりはないはずよ。ロミオだって同じこと。ロミオという名前でなくなっても、あの神のごときお姿はそのままでいらっしゃるに決まっているわ。ロミオ、そのお名前をお捨てになって、そして、あなたの血肉でもなんでもない、その名前の代わりに、このわたくしのすべてをお受け取りになって頂きたいの
ーーーお言葉通りに頂戴いたしましょう。ただ一言、僕を恋人と呼んでください。さすれば新しく生まれ変わったも同然、今日からはもう、ロミオではなくなります
(新潮文庫『ロミオとジュリエット』:シェークスピア作:中野好夫訳:<第2幕第2場>より)
略称
たいていはシェイクスピアの名作『 ロミオとジュリエット』の略称として扱われる。
ネットスラング
……純愛の代表作として著名な同作だが、そもそもストーリーをダイジェスト化するとこうなる。
- 時は中世のイタリアの都市ヴェローナ。そこに根ざす二大有力貴族であるモンタギュー家とキャピュレット家、双方はヴェローナ領主の大公エスカラスの家臣同士でありながら諸事情から血で血を洗う抗争を繰り広げていた。
- そんな中、(お互いに婚約者や恋人がいたのに関わらず)ひょんなことから「モンタギュー家の一人息子」ロミオと「キャピュレット家の一人娘」ジュリエットが出会ってしまい、しかもお互いを一目惚れしてしまう。そしてあっという間に修道僧ロレンスを巻き込んで密かに結婚の誓いをする。この間、約1日。
- その直後に両家の若衆の間で衝突が発生。ロミオの親友マキューシオは殺され、報復にキャピュレット夫人の甥ティボルトも殺される惨々たる事態になる。事件の中心となったロミオは領主エスカラスによって追放に処され、一方の悲しみにくれるジュリエットは領主一族の青年パリスに嫁入りを命じられる。
- 進退窮まった修道僧ロレンスは、仮死の毒を使った計略を立てこれをジュリエットに施して彼女とロミオをなんとか再会させ、添い遂がせようとする。だが、当のロミオ側にそのことがうまく伝わらず彼は「ジュリエットが死んだ!!」と絶望。とうとう無敵の人と化したロミオは、ジュリエットの墓前で彼女の婚約者であったパリスを決闘の末に殺害した後に、彼女の後を追うため自らも毒をあおる。仮死の毒から蘇ったジュリエットもその惨状をみて悲嘆し、ロミオの後を追うべく短剣を手に自らも本当に自殺。
- 悲劇の真相を知り改心した両家は、愛し合ったロミオとジュリエットが生前に願ったこと、つまり和解を果したのでした、めでたしめでたし。 なおこの間、全体で1週間に満たず。
「このストーリーのどこが『めでたしめでたし』なんじゃい!!?」と思ったあなた、そう思うユーザーは同作が発表されてから現在までゴマンといるから安心されたし。つーか普通にバッドエンドである。そしてスーパー超展開である。
メタな見方をすると、ロミオもジュリエットも「有力貴族の跡取り」であるにも関わらず俗に言う大人の事情という現実に向き合わず、あまつさえ「御家大事」や「最大多数の最大幸福」がモットーである貴族の義務をぶん投げたあげくに文字通りの恋は盲目にひた走ってしまっている。理由がどうであれ、彼らの「暴走」の末にモンタギュー家とキャピュレット家は跡取りや有力子弟を失い主君である領主一族にまで迷惑をかけるという大ダメージを負わされている。
ぶっちゃけいえば、一歩間違えれば即座に御家取り潰しだってあり得たのである。両家が和解したのだって穿った見方をすればこの騒動によって失った信頼とこれからなすべき各方面への賠償などから『争っている場合ではなくなった』とも考えられる。領主一族のパリスなぞ、他の男に永遠の愛をちかった女を押し付けられそうになったうえに、その不義の相手の男に殺されてしまっているのである。
正直なところ、ロミオとジュリエットの愛が高潔であったかどうかを考慮しなければ『恋愛を理由に現実逃避をしたあげくに周囲を巻き添えにして自滅したバカップル』という解釈も十分できるのである。
このようなために、特に日本国内のネット界隈においては「ロミジュリ」というワードは以下の意味を孕む結果となっている。
- 身分などの様々な理由から本来結ばれてはならない2人が困難を乗り越えて真実の愛を貫く、という恋愛作品のテンプレート。
- この名(迷?)作の内容を真に受けて、『駄目だこいつ…早く何とかしないと…』レベルで痛い言動を繰り返す恋愛脳への揶揄。
ロミオレター&ジュリメール
上記から派生して、いちど破局したり絶交した相手から復縁をせまる恋愛脳全開でポエミー感あふれる怪文書が送られてきた場合、国内のネット上ではこれをロミジュリメール(※アナログ媒体ならレター)と呼ぶ。
↑ジュリメール凡例
↑ロミオメール凡例
ネット上に寄稿された用例をトータルすると、(※独自研究)
・普段はあらたまった文章を書くことがないためか、誤字や脱字、慣用句の間違いだらけ。
・内容が文字通りのポエム。しかも著名アーティストの楽曲をほぼパクっていることも。
……だけならまだしも。
・「あれは間違いだったんだ」とか「あなただって悪い」といった他責思考や責任転嫁
・「夢に君がでてきた」とか「また迎えに行くっていったじゃん」といった記憶の捏造
・内用を要約すると「お金貸して💛」「実家を追い出されちゃった☆」といった遠回しの援助要請
・「君だけがボクの正妻だ」とか「アイツの子供はもう降ろしたわ」といった倫理感を疑う文面も。
しかも、これを受け取った側からは、
・そもそもの破局の原因は、相手の浮気やDV、共用資産等の無断での使い込み……ect。
・当時は義家族等からイジメられていたが、元パートナーはかばってくれなかった。
・破局の前後で元パートナーがストーカー化して警察案件へ。自身はPTSDを患った。
といった「『あなたも悪かった』なんてとても言えた義理じゃないだろ」となりかねない実態が添えられるケースが大半。