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継国縁壱の編集履歴2024/07/08 21:51:27 版
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CV:井上和彦

概要

吾峠呼世晴による漫画『鬼滅の刃』の登場人物。

主人公・竈門炭治郎が夢で見た先祖の炭吉の記憶に登場。本編では既に故人で、炭吉(炭治郎)、黒死牟、そして鬼舞辻無惨の回想にのみ登場し、彼ら三人の視点からその人物像が描かれている。

鬼の始祖たる無惨がこの世の誰よりも恐れた耳飾りの剣士の正体であり、今現在鬼殺隊で使用される剣術の基礎となった始まりの剣技日の呼吸」の開祖

彼は人の目を眩ませる程の剣才を持つ一方で、苦悩の絶えない人生を歩んだという。

人物

「この世はあらゆるものが美しい、この世界に生まれ落ちることができただけで幸福だと思う」

と、穏やかに語り、たとえ自分が辛くても他者が幸福である事を強く願い、日々の小さな物事に喜びを感じる、とても思慮深く心の豊かな人物。

作中最強の剣士でありながら才無き者を見下したり、自らの実力を誇示するようなことは決してせず、己の剣術も乞われれば隠すことなく誰にでも丁寧に教えるほど謙虚で、人並みに悲しみや苦しみ、痛みを感じる繊細な性格をしており、周囲の人からは「素朴で物静かな人」と語られている。

幼少から老境に至るまで、彼は落ち着きのある、おおよそ戦士には似つかわしくない人間であり、青空よりも広く優しい人格者だった。

その純粋な人柄に惹かれるのか、彼の周囲にはたまに野生の動物や虫がよってくるという。

しかし、子供の頃は自分を「無いもの」と思って息を潜め、常に「自分はここにいてはいけない」と考えながら過ごし、長じてからも「何の価値もない男」と自身を認識している等、幼少期や過去の失敗の影響からか謙虚を通り越して卑屈な程に自己評価が非常に低く、自分の犯した失敗を必要以上に責めてしまう悪癖もある。

基本的に無表情で口数が少なく、激しい感情を表に出す事こそ少なかったが、決して無感情というわけではない。

その精神性は母である朱乃に似た争いを好まないおっとりしたもので、周囲の人物が評した通り素直で素朴そのものであり、誰に対しても穏やかに接し、困った人を放っておけない純粋な心の持ち主。

そんな誰よりも心優しい彼でも、無惨を始めとする鬼とその在り方には「人の命を踏みつけにする存在」として強い拒絶の意志を示し、いつもの彼にしては珍しい明確な怒りを見せている。

初めは兄の継国巌勝の影響で侍に憧れたが、元より人を傷つけることを好まない性分から、他人を武器で打つ感覚すら耐え難く不快に思い、指南役を倒してしまった後は侍になりたいとは言わなくなった。

しかし、物静かではあるが愚鈍ではなく、むしろ大変聡明で、幼いながらに病身の母を常に支え続け、自分を「忌み子」とした父すらも庇おうとしており、母の死後は身を引いて姿を消すなど、昔から心優しい子供であった。

一方で、天錻の剣才を持つ自分を妬んだ兄の心の闇には、巌勝自身が内心を隠していた事もあり気付けなかった。そのため彼の視点での巌勝は、まだ縁壱の才能を知らずに憐れんでいた頃の優しい兄でしかない。

個人個人に合わせた呼吸の指導まで行う事ができ、育手としても大変優秀だったことが窺える。他の隊士からも一目置かれていたようで、鬼殺隊を追放された後も一部の柱とは連絡を取り合っていたようだ。

容姿

炭治郎と同様の赤みがかった赫灼の瞳と纏めた長髪(老齢期には白髪)が特徴の凛々しい青年。

また、額の左側から側頭部を覆う前述の痣を生まれつきのものとして持つ。

両耳には後述する母の御守りである日輪の耳飾りを付けている他、黒い長襦袢の上から黄土色の長着に赤い羽織を着用し、下は黒いを履いており、白い兵児帯を巻いている。足元は場合によっては脚絆を巻いており、赤い鼻緒の草履を履いている。

刀は後の時代の鬼殺の剣士達と同様、脇差を差さない一本差。

孤独な英雄が遺した意志

道を極めた者の宿命なのか、縁壱の心を本当の意味で理解できた人間は少ない。

実際、その神がかった強さ故に一人の人間としての姿は霞んでしまい、剣技抜きで縁壱の人物像を詳細に語れる人間は少なく、誰も彼の真意を理解できなかった。

縁壱本人もそのことを承知しており、幼少期から漠然とした疎外感を抱き、それに人知れず苦しんでもいた。

そんな縁壱の苦悩に気付き、優しさを持ってよりそうことができたのは、最愛の妻であるうたや縁壱に命を救われた竈門家夫妻など極々少々の人間だけだったのだ。

しかし、全集中の呼吸を教え、竈門家が代々ヒノカミ神楽を継承した功績は計り知れないもので、珠世の薬の制作を鑑みれば、彼の名の由来である人と人との繋がりは後世の鬼殺隊が無惨を倒す為の助けになっている。

実力では縁壱に遠く及ばない炭治郎が良き人々との出会いに恵まれ、決して道を踏み外すことなく戦い続けられたことを考えると、絶対的な力を持つ一人では無理な事でも、力が劣っていようと皆が集まって協力すれば成し遂げられることが千年の歳月を経てようやく証明された。

彼の生涯は無駄ではなかったのだ。

生涯

幼少期

武家である継国家に産まれた縁壱は、跡目争いの原因となる事から当時は不吉とされた双子である事、更に生まれつき額に不気味な痣があったという理由から、「忌み子」として父に疎まれ、すぐに殺されそうになったが、母・朱乃の猛反対に父が根負けし、「十歳になったら寺に出す」という条件で生きる事を許される。

その後は物置のような三畳の部屋で軟禁に近い生活を強いられていた。「縁壱」という名前は、「人と人との繋がりを何より大切に」と願った母から付けられた。

縁壱は二歳の時に父親から「お前は忌み子で継国家に災いをもたらすだろう」と言われていた為、災いが起こらぬよう自分の存在を「無いもの」と思って息を潜め、固く口を閉ざし、縁壱は常に「自分はここにいてはいけない」と思いながら過ごすしかなかった。

後に、母親から何故喋らなかったのか聞かれても理由を話さなかったが、母親はそれが父親を庇っての事だとすぐに気づいた。

朱乃は縁壱が口を利かなかった事から、息子は耳が聞こえないと思い込み、何とか喋れるようにと太陽の神へ一心に祈りを捧げ、縁壱の耳に御守りとして作った日輪の耳飾りを付けた。

それは母親として我が子の幸福をただただ願う無償の愛の印だった。

母親から耳が不自由だと思われていた事に気付いた縁壱は「私は耳が聞こえます」と生まれて初めて喋った。縁壱はこの事を、自分が口を利かなかった事で心配を掛けたと申し訳なく思っていたと語っている。

縁壱は七歳になるまでは碌に言葉も話せず、母にしがみ付いて回るだけの生活を送っていたと思われており、縁壱の才能を知る前の兄・巌勝は弟を哀れみ、時折、父親の目を盗んで縁壱の部屋を訪れては双六や凧揚げ等の遊びを教えたりと、何かと気にかけていた。

それを知った父親は巌勝の頬を殴り、忌み子である縁壱との関わりを絶つ様に言ったが、巌勝はその翌日には自らが作った笛を縁壱に与えていた。この件については温厚な母親も父親に対し激怒し、大喧嘩に発展している。両親が自分達が原因で度々喧嘩をする事に、兄弟は心を痛めていた。

ある時、兄の指南役だった男が戯れに縁壱を剣術の稽古に誘い、縁壱は指南役に圧勝する。縁壱の才能が兄を含めて周りに知られ、巌勝は自分と縁壱の立場が逆転するのではと危惧した。

しかしそれから間もなく母親が病で死去し、縁壱はこれを契機に継国家から去ることを決意する。

「いただいたこの笛を兄上だと思い どれだけ離れていても挫けず 日々精進致します」

巌勝に恩義を感じていた縁壱は、そう告げて、寺に行かずにそのまま家から出奔した。

父親は愛する妻の死と縁壱の出奔から心を入れ替え、みるみると穏やかになったが、同時に心労からか体調を崩しがちになった。妻の遺言通り縁壱との関係を修復しようと彼を捜させていたが、巌勝が結婚して安心したからか、三十代で世を去った。縁壱達の母・朱乃亡き後は、後妻をもらう事もなかったという。

出奔、愛する人との出会い

人生で初めて自由の身となり、昼夜走り続け山を越えた縁壱は、黒曜石のような瞳の少女うたと出会う。

流行り病で家族を皆亡くしてしまったうたは、田んぼでぽつんと佇んでいた。

縁壱が何をしているのか問いかけると、その少女は「一人きりになって寂しいから田んぼにいるおたまじゃくしを連れて帰ろうと思って」と言う。

しかし、日が暮れ始めると、うたは「家族と引き離されるこの子たちが可哀想じゃ」と思い直し捕まえたおたまじゃくし達を逃がしてしまった。

それを見た縁壱は一言――――

「じゃあ俺が一緒に家へ帰ろう」

こうして幼い二人は身をよせあうようにして暮らし始めた。

うたは本来朝から晩までよく喋る娘であり、口数が少なく内気な縁壱の表情以外からも感情の動きを感じ取り、心を通じ合わせた。

縁壱は動物や虫に好かれるので、周りに小鳥や蝶、狸や狐等が寄ってきて手ずから餌を食べる為、うたは大喜びしていたらしい。

彼女との生活の中で、縁壱は生き物の体を透かし見る事ができる者が自分だけである事等を教えられた。うたは糸の切れた凧のようだった縁壱の手をしっかりと繋いでくれた人で、縁壱はうたと手を繋いで歩く田畑への道がとても幸せだったという。

それから十年経って成長した二人は愛し合い、正式に夫婦となった。単行本21巻の扉絵では、大人になった二人がそれぞれ蝶と蛙を手に乗せて幸せそうに笑い合っていた。

両者が結ばれて間もなく、うたは縁壱の子供を授かった。

愛するうたと子供と小さな家で静かに暮らす事だけが縁壱の望みであり、自分にも新しい家族ができたという幸福を噛みしめる。

ささやかではあるが確かな幸せがそこにあった。

しかし、悲劇とは突然やってくるもので、その日うたの出産に備えて様子を見て貰おうと産婆を呼ぶ為に出かけていた縁壱だったが、道中戦で負傷した息子の死に目に遭うべく、心臓が悪いのも押して山を越えようとする老人をおぶって息子の元に送り届ける。縁壱は産婆を呼ぶのを明日に回し、日が暮れながらも家路を急いだが、その間、うたをお腹の子共々に惨殺されてしまう。

あまりにも唐突に縁壱は幸せだった日常を奪われてしまった。

始まりの剣士である彼もまた鬼に当たり前の幸せを奪われた犠牲者の一人だったのだ。

十日程彼女の遺体を抱いて茫然自失とするしかなかったところを、鬼を追っていた剣士(外見からして恐らくは煉獄家の先祖)が現れ、彼に言われてようやく我に返ると、妻と子の亡骸を埋葬。鬼と戦う組織として鬼殺隊の存在を知った縁壱は、自分のささやかな望みを奪い、叶わない物とした鬼を自身の思う美しい世界から滅するべく、鬼狩りの道に入った。

その純粋な愛はうたが亡くなってからも変わらず、縁壱は生涯彼女一人だけを愛していた

鬼狩りとして生きる中、武将として成長した兄の巌勝が鬼に襲われていた所を助け、数十年ぶりの再会を果たす。

縁壱は当時の達と気が合うのか、よく話しており、相手に適した呼吸法を教える程指導が上手であった。

その後は同じく「(縁壱の視点では)部下を殺された為に」鬼狩りとなった兄や、他の剣士達と共に剣の研鑽、呼吸法の開拓を並行して続けながら鬼と戦っていた。

鬼舞辻無惨との対峙

ある晩ついに、縁壱はとある竹林にて全ての元凶である鬼の首領、鬼舞辻無惨と対峙する。

出会って間もなく「自分はこの男を倒すために生まれて来たのだ」と悟った縁壱に対して、当の無惨は呼吸法を使う剣士に興味を無くしており、先制して腕を立ち振るう。縁壱は戦いの中で無惨の恐るべき速さと広い間合いの攻撃に掠り傷でも死に至ると生まれて初めて背筋を冷やしながらも、己の剣技・日の呼吸の型を完成させる。

最強の鬼である無惨を一撃で切り刻んで圧倒し、追い詰めた縁壱はどうしても聞きたかった他人の命を踏みにじる理由を問い詰めるが、どんな状況に置かれようと自己中心を貫く無惨の心には届くはずはない。

止めを刺そうとした次の瞬間、無惨は自らの肉体を弾けさせ、1800個の肉片となって逃亡。

縁壱はその内1500と少しを斬るも、残りの小さすぎた300の肉片は刀で斬る事ができず取り逃がしてしまった。

無惨が弱った事で随伴していた珠世が支配から一時的に解放され、その状況と無惨に憎悪の言葉を吐露した事を鑑みた縁壱は彼女を信じ、無惨を倒す手助けを頼む。しかし、その後駆け付けた鬼殺隊士から兄・巌勝が当時の産屋敷家当主を殺し、裏切って鬼となった事を聞かされる(相対した際の無惨が呼吸法を使う剣士に興味を無くしていたのはこのため)。

鬼殺隊の本拠に戻った縁壱は、隊士でありながら身内から鬼を出した事、無惨を取り逃がした事、鬼である珠世を見逃した事を激しく糾弾された。

煉獄家の剣士が仲間達を制止し、縁壱を庇う姿勢を見せたが、中には自刃せよとの声もあった。父である殺された先代の後を継いだ産屋敷家の新たな当主がそれを止め、結果、始まりの剣士縁壱は鬼殺隊を追放される事となった。

ただし、追放された後も数名の柱達(煉獄家の剣士も含まれると思われる)とは連絡を取っており、当時の産屋敷家当主もそれを黙認した。

竈門夫妻との出会い

鬼殺隊を追放後は放浪の末に縁壱が嘗てうたと暮らしていた家のあった場所に向かうと、鬼に襲われて逃げ惑う炭吉とその妻、当時臨月であったすやこを発見する。炭吉達は、あばら家と化したかつての縁壱の家を偶然見つけて自分達の住居としていたようだ。

縁壱がすかさず鬼を切り捨て、炭吉達を助けた後、産気づいたすやこの為に産婆を呼びに行き、翌日無事に竈門夫妻の娘・すみれが誕生した。かつて最愛の妻と子供の為に出来なかった事を炭吉達にする事こそ縁壱にとって何よりの救いだったのだ。

それでも縁壱の苦悩は根深く、妻子を守れず、信頼していた兄に裏切られ、無惨を倒す事も出来なかった自身を「何の価値もない男」だと、炭吉に卑下して語っている。

「しかし私はしくじった 結局しくじってしまったのだ 私がしくじったせいでこれからもまた多くの人の命が奪われる」

「心苦しい」

自分の生い立ち、そして苦悩を誰かに打ち明けたいと思った縁壱は2年後、再び彼らの家を訪れ、心を許せる友人である炭吉に自らの過去を語った。

炭吉は深い悲しみに沈み自分を責め続ける縁壱の余りに過酷なその人生に、掛ける言葉を見つけられなかった。

その時、炭吉とすやこの娘・すみれから「抱っこ」を乞われ、炭吉にも勧められた縁壱は彼女を抱き上げた。

高く持ち上げられ、嬉しそうにはしゃぎ、無邪気に笑いかけるすみれの顔を見た瞬間、縁壱は「失われたもの」、そして見失いかけていた「守るべきもの」を思い出し、止め処なく涙を溢したのであった。

縁壱はその後暫く竈門家に滞在し、すやこに乞われ、竈門一家に日の呼吸の型を披露する。

型を全て披露し終えると縁壱は竈門家を離れる事を決意し、餞別として母の形見である日輪の耳飾りを炭吉に手渡した。

別れ際、炭吉が自らと家族を救ってくれた事への感謝と、縁壱が決して価値のない人などではない事の証明として、耳飾りと日の呼吸を竈門家の子々孫々に後世へと受け継いでいく事を約束すると、縁壱は「ありがとう」と安らかな微笑みを残し、去っていった。

炭吉、そして先祖である彼を介してその記憶を垣間見た炭治郎は少しでも縁壱の心が救われることを強く願った。

そして、縁壱が炭吉達の元を訪れる事は二度となかった。その後、兄と再会するまでの動向は一切分かっていないが、恐らく日本全国を巡って鬼を斬ってまわって居たと思われる。

晩年、その最期

お労しや 兄上

それから六十年以上経ったある月夜の晩。人喰いの鬼となり果てた兄と齢八十を超えた老いさらばえた弟は対峙する。

昔の兄がもうどこにもいないことに惜別の涙を流し、縁壱は一瞬で彼を追い詰める。

しかし、最後の一撃を放つ前にとうとう寿命を迎え、立ったまま事切れてしまう。

縁壱の亡骸は最後まで擦り傷すら負わせられなかったことや死んで勝ち逃げされてことに怒った黒死牟に両断され、その懐には形見である亡き妻の着物から作った袋と、それに包まれた嘗て兄から貰った笛が遺されていた。

最終話にて

単行本化に伴い、最終話の現代において、後ろ姿が縁壱によく似た人物とうたによく似た夫婦が、赤ちゃんを抱いて仲睦まじそうに歩いている姿が新たに描かれている。

能力

「道を極めた者が辿り着く場所はいつも同じだ」

生まれながらにして人の理の外側に立ち、後にも先にも、人も鬼も誰一人として追いつく事はおろか影を踏む事すら叶わなかった「全てを焼き尽くす程、強烈で鮮烈な太陽の如き者」

生前は兄の巌勝をして「神々の寵愛を一身に受けた者」と言わしめ、ラスボスであり自分を大災に例える無惨すら「本当の化け物は(自分ではなく)あの男だ」と恐れた作中最強の存在

いずれも柱や上弦の鬼が長い鍛錬の末に会得できるものである、体の機能が極限段階に達している事を示す「痣」と、相手の筋肉と骨格、果ては内臓の動きも見通せる透き通る世界 生まれた瞬間から既に体得し、常時発動させていた という、最初の呼吸の使い手にして最初の痣者。

その剣才は途方もなく、七歳の時、兄がどんなに鍛練しても敵わなかった指南役を、袋竹刀の持ち方を教わって即、素振りさえした事が無い状態で一瞬の内に四連撃を打ち込み、気絶に追い込んで見せた。(打たれた所は握り拳ほどに膨れ上がり青黒い痣になってしまっていた)

成長し鬼狩りとなった時、その才は更に高次元で開花した。

始まりの呼吸である『日の呼吸』の使い手であり、これを当時の鬼殺隊士が使っていたそれぞれの剣技に上乗せする事で、現在の全集中の呼吸の技術を生み出した。『日の呼吸』を使えない仲間達に向けて、それぞれの適正に合わせた呼吸法である「五つの基本の呼吸」を、考案して教授したのも縁壱である。云わば、現在の鬼殺隊に到る礎を築き上げた中興の祖である。

それ故に日輪刀の刀鍛冶の里では、後に鬼殺隊の剣士の訓練用に縁壱を模した絡繰人形縁壱零式のシリーズが開発された。しかし、素の戦闘能力及び技能も卓越していた縁壱の動きを再現するには、絡繰り人形の腕を六本にしなければならなかった(それでも再現できたとは言い難いが)。

その人生において、生涯唯の一度も、かすり傷すら負わされる事はなかった。

始祖にして最強の鬼、後世で極度に弱体化した状態でも何人もの痣者を相手に終始圧倒した無惨ですら、万全の状態でも縁壱に傷一つ付ける事すら叶わずに身体を切り刻まれて、死の淵にまで追い詰められた。明らかになった無惨の戦闘方法からすれば、無惨との直接戦闘で生き延びるには無傷でなければならない為に、ある種当然の帰結である。

無惨はその時の恐怖が細胞一つ一つに至るまで焼きついて今でも忘れられておらず、無惨の血が濃い上弦の鬼達も、炭治郎との戦いの際に無惨の細胞に刻まれたその記憶がフラッシュバックする程である。

この時に完成した「十三番目の型」とは、日の呼吸の十二個の型を順番に連続して繰り出すというもの。縁壱は無惨と対峙した時の事や、恐らくはこの十三番目の型についても、煉獄家の先祖に伝えているようだが、それが原因で煉獄家の先祖は自信を喪失してしまったとの事。

生涯最後の闘いは黒死牟と出会った八十歳を超える老齢の頃。痣者でありながらその歳まで生き、全盛期と変わらぬ速さと威力の技を振るい、黒死牟ですら刀を抜くどころか反応も出来ず、続く二振り目での死を確信させられた程だったが、振るう前に立ち往生してしまった(全盛期と変わらぬ速さと威力というのはあくまで黒死牟視点である、詳しくは後述)。

全集中日の呼吸

始まりの呼吸とも呼ばれる呼吸法の源流にして最強の御業、『日の呼吸』を扱う。

彼にしか扱えなかったこの呼吸法を、当時の鬼狩りの剣士達の身体の適正に合わせた形に変化させて伝授し、それを当時の剣士達がそれぞれの使っていた剣術の型と合わせて編み出したのが、現在のの基本の呼吸五大流派である。

縁壱は生まれながらにして全集中の呼吸・常中をしていた。

彼の死後、黒死牟と鬼舞辻無惨の二人によって日の呼吸を知る剣士達は片っ端から抹消されたのだが、彼等の目を逃れた例外的な伝承として、竈門家に伝わる厄払いの神楽という形で、その型と呼吸法は今もなお残っていた。

型の詳細はヒノカミ神楽を参照。

全集中の呼吸を極めて、一定の条件を超えた者が発現するさらなる力。

他ならぬ彼こそが悲鳴嶼が予想していた「痣を発現させても二十五を超え生き延びた唯一の例」である。

しかし彼に限っては、生まれた時から既に額の左側から側頭部を覆う形で炎のような痣が発現していた。

史上初めて「痣」を発現した人物であり、鬼殺隊の記録によると彼が持つ「痣」が周囲の者に伝播する形で、他の呼吸を極めた剣士達にも「痣」が現れ始めた事が伝えられている。即ち「痣」とは元々、全集中の呼吸と共に縁壱によって齎された力である

一方で、「痣を発現した者は齢二十五までに死ぬ」とされているのだが、彼は齢八十を超えても生き続けており、これがどういった要因による物なのかは不明である(そもそも痣を抜きにしても、戦国時代で八十まで生きたというのは相当な長生きである)。

あくまで仮説としてであるが、縁壱の類稀な才覚で発現できる力を他者が発現した結果、「短命」という代償を払う形になっているという可能性もある。

縁壱は常に痣を出していたため、痣・常中になっていた可能性がある(常に痣が出ていたのは他には黒死牟、炭治郎、無一郎のみで、他の柱は戦闘中にしか発現しなかった)。

透き通る世界

詳しくは当該項目を参照。

縁壱は物心ついた時点で既にこの領域に達していた

鬼殺隊は戦闘時にしか使わないが、縁壱の場合は戦闘とは関係なく、常にこの形態を維持していた模様。

縁壱は透き通る世界・常中を会得していた可能性があるが、真偽は不明。

日輪刀の色は黒。炭吉の妻・すやこ曰く黒曜石のような漆黒』。刀身の元の所には縁壱の言う美しい世界に存在する鬼を全て滅するという思いを象徴する『滅』の一文字だけが刻まれており、刃紋は互の目となっている。

拵は黒地に金色の縁取り(鋤残し耳)が成された四ツ木瓜型の鐔、同じく金色の鎺と目貫の無い出鮫式柄の他、無地の縁頭に黒塗りの鞘といった質素ながらも何処か華やかさも感じさせる仕様となっている。

戦闘時には赫灼の刃である赫刀へと変化する。

赫刀の発現には万力の如き高い圧力を必要とするとのことだが、柱達でも力を籠める溜めを必要とするし、そもそも殆どの柱は万力をかけただけで体力切れしてしまい戦闘にならなくなるため、他の方法で発動している(他に正規の方法で発動したのは無一郎伊黒、炭治郎の3人のみ、さらに無一郎や伊黒でも維持するのは困難なようである)。一応、一度発動すれば圧力をかけずとも一定時間は自動的に維持されるが、解除されてしまう(威力も万全かは怪しい)。

しかし縁壱はただ握って力むだけで赫刀を発動しており、戦闘中は常に赫刀を維持し続けている(縁壱のことなので常に万力の如き高い圧力をかけていて、それゆえに常に万全の状態で使うことができ、威力が目茶苦茶高くなっている可能性が高い)。縁壱は赫刀・常中を会得していた可能性があるが、真偽は不明。

さらに縁壱の赫刀は威力も他者の使うそれとは次元が違う。

炭治郎や柱達の赫刀は既に弱体化している無惨に対して多少再生を遅める程度の効果しかなかったのに対し、縁壱の赫刀は万全の無惨の再生を全く再生させないばかりか、数百年もの間癒えない傷としてその身体を灼き続けた。

しかし確実に無惨より再生力が劣る黒死牟にこのような描写がないことから、晩年の縁壱は少なくとも赫刀の扱いにおいては衰えていたと思われる。

因みに炭治郎が刀鍛冶の里にて縁壱零式の中から手に入れた戦国時代の日輪刀が、縁壱の使用していた物ではないかとファンの間でまことしやかに言われているが、真偽は不明。

刀身の色が黒である事や、元の部分に刻まれた『滅』の文字等、共通する点はあるものの、刃文や見つかったばかりの頃の当初の拵が縁壱の物とは異なる等、相違点もあり、劇中ではこの日輪刀は「漆黒の深さが全然違う」「前の持ち主が」とほのめかされてはいるものの、『戦国時代の刀』としか言われておらず、明確な言及は成されていない。

もしもこの説が事実としてもその場合、寿命が尽きた後黒死牟に両断されるという末路を辿った彼の死後、その刀が刀鍛冶の里にどのような経緯を辿って届けられたのかは分からない。

竈門家との関係

縁壱視点の回想は全て炭治郎が炭吉の記憶から垣間見ている物であり、作中では記憶の遺伝と呼ばれている。

上述の通り、縁壱は炭治郎の先祖である竈門炭吉、その妻のすやことは縁があった。炭吉とすやこは縁壱を命の恩人として竈門家に招いており、一時滞在している。

その後は無惨を討ち逃し、兄が鬼となり、鬼殺隊を追われた縁壱は再び竈門家を訪ね、自らの喪失感を打ち明け、その哀しみを和らげた。

日々を過ごす中で、すやこにせがまれて日の呼吸を竈門一家に見せる事となり、それを炭吉は一挙一動全て見逃さず、つぶさに記憶に焼き付けている。

縁壱が竈門家を発つ時、炭吉は縁壱に日の呼吸と耳飾りを竈門一族に継承していく事を約束した

炭吉が日の呼吸をヒノカミ神楽として伝承していたおかげで、炭治郎は日の呼吸を修得し、夜通しヒノカミ神楽を舞うというしきたりから、無惨を倒す為の十三番目の型の手がかりを得ることができた。

原作のキメツ学園にはおらず、設定もない。

スピンオフ作品『キメツ学園!』では、26話にて炭吉の経営する「すみよし骨董品店」のアルバイトとして登場。

鬼滅本編と同じく驚異的な身体能力のようで、床掃除をするためにタンスを片手で軽々持ち上げる怪力、飛ぶハチを指2本で簡単に捕まえる動体視力(そして捕まえたハチは殺さずに店の外へ逃がす優しさも)を見せている。

彼を見た謝花梅はどうして欲しい高額なアンティークオルゴールのカツアゲを断念してバイトに臨むこととなった。

こちらでも炭吉・すやこ夫婦とは非常に親しい間柄のようで、28話では炭吉とすやこに代わってまだ赤ん坊のすみれとその弟をあやしている様子が描かれていた。

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