※この記事は重大なネタバレを含みます
CV:???(ネタバレ注意!)
概要
十二鬼月の上弦の壱「黒死牟」が鬼と化す前、人間であった頃の名前である。
実は鬼殺隊の核となった始まりの呼吸の剣士達の一人であり、炭治郎の夢の中に現れた継国縁壱の双子の実兄。
戦国時代に存在した武家である継国家の長男として跡を継ぐはずだった。
系譜上では鬼殺隊の現霞柱である時透無一郎と、その兄の有一郎の遠い先祖に当たる人物であり、本人曰く「自分が継国の家に置いてきた子供の末裔」だという。
上述した自身と無一郎の関係については自ら語っており、童磨と同様に人間だった頃の記憶を明確に残している。また本人の口から戦国時代から無惨に仕えている事も語られている。
過去
戦国時代に双子の兄として誕生。
弟の縁壱の方は生まれつき額に痣があり、それを不吉とみなした父は継国家のために縁壱を忌み子として殺そうとした。
しかし穏やかな性格の持ち主で知られる母・朱乃が烈火の如く怒って真っ向から反発。周囲の反対を押し切って縁壱を守る強い姿勢を見せ、さすがの父も根負けしたのか、10歳になったら寺に行くという条件で不問とした。
一方の兄の巌勝は弟の縁壱に対し、三畳の部屋に閉じ置かれていたほど冷遇されていた事や、親離れ出来ないためか常日頃から母にしがみついていた姿を見てきたことから憐れみを覚えた。
緑壱と遊んだことで父に殴られてもその翌日には縁壱の元へ訪れ、
「助けがほしいと思ったら吹け。すぐに兄さんが助けにくる」
と、腫れた顔で笑いながら手作りの笛を渡した。
しかし、それまでずっと口を閉ざしてきた縁壱が突然言葉を口にした日を境に彼の運命は狂いだす。
生まれてから刀を握ったことのない弟がずば抜けた剣技を発揮し、自分がどれだけ努力しても勝てなかった指南役を失神させる事件が発生。巌勝は剣を極める事を望み才覚を認められていたが、自分の努力など弟と比べれば亀の歩みでしかない事を知る。
縁壱の剣才が周囲に知られ、継国家の跡継ぎは弟に、寺に行くのは長男である巌勝になるのではと考える程であったが、母の死後縁壱は一人出奔する。
遺された母親の日記によって縁壱が母にしがみついていたわけではなく、病魔に蝕まれて身体が不自由な母を支えていた事を知り、憐れんでいた弟が実際は自分より優れていた事を知って嫉妬と憎悪を覚える。
忽然と縁壱が姿を消したことで跡継ぎ問題は解決し、十数年ほど緩やかな時間が流れる中で妻を娶り、子供を儲けている。
そんな折、鬼狩りとして活躍していた縁壱によって鬼から救われる形で二人は再会することになった。十数年の時を経て優れた剣技と人格を持つ人物となって兄の巌勝の前に現れた弟の縁壱に対し、巌勝の胸にはかつての嫉妬と憎悪の炎が燃え上がる。その強さと剣技を手に入れようと、今まで持ち得た平穏な生活の全てを捨て去り、巌勝は縁壱と同じく鬼狩りの道へと足を踏み入れる。尚、表向きは殺された部下達の仇討ちという名目で鬼殺隊に入った模様。
全集中の呼吸を学び痣を発現するまでに至るものの、それでも日の呼吸には遠く及ばず、そればかりか痣を発現させた者は二十五歳になる頃には死亡するという副作用までも見つかってしまう。最早縁壱を越えるどころか、その為の鍛錬の時間すら残されていないということを知る。
「ならば鬼になればよいではないか」
鬼狩りの剣士が使う全集中の呼吸に興味を持っていた鬼舞辻無惨と出会い、勧誘される。無限の時の中で修練を積めば、いずれは縁壱を超えられる。全てのしがらみから解放されると考えた巌勝は、鬼狩りの頭である当時の産屋敷家当主を殺害して仲間の鬼狩り達を裏切り、縁壱とも袂を完全に分かち、無惨の血によって鬼となり、鬼狩りの剣士から新たな無惨の部下「黒死牟」へと生まれ変わった。
それから60年後、縁壱は黒死牟の目の前に現れる。
痣者でありながらも、八十を超え年老いた姿となって現れた弟は涙を流しながら言う。
「お労しや兄上」
自分より遥かに老いた姿の弟にそう言われた黒死牟は動揺を覚えたが、あと一撃で死ぬというところまで追いつめられる。しかし、その前に縁壱は寿命を迎えてしまい、討ち込みの構えを取り黒死牟と相対した姿のまま死んでいた。これまでより強い憎しみを込め逝った弟の骸を斬り捨てたが、その死体から転がり落ちたのは幼い頃に縁壱にあげた笛であり、その事を知った黒死牟は涙を流した。
その後は、無惨と共に「日の呼吸狩り」を行い、日の呼吸を知る者を次々と殺害して弱体化していた当時の鬼殺隊を壊滅寸前まで追い込んだ。
「私は一体何の為に生まれて来たのだ 教えてくれ 縁壱」
家も、妻子も、仲間も、人間や侍である事さえも捨て去り、それでも尚も強さを求め続けた鬼は、結局は何一つ手に入れる事はできなかった。
柱達に倒された黒死牟は塵となって消えていきながらも、その懐にはかつて縁壱に渡した笛を持っていた。
余談
二人の父親は縁壱の出奔後に妻の遺言を叶えるために方々手を尽くして縁壱を探したが見つからず、落胆からみるみる衰えていき、巌勝が妻子を得た事で安堵し世を去った。
巌勝という名前は「強く、いつも勝ち続けるように」と願いを込めて父が名付けた。
巌勝の巌は、巌(いわお)であり、厳(きびしい)ではないので注意。
彼の習得した全集中の呼吸は「月の呼吸」。
水の呼吸や炎の呼吸などの基本の呼吸法と同じく日の呼吸から派生した呼吸法だが、彼の他に習得者はおらず、継承もされずに一代限りで途絶えてしまっている。
鬼となってからは血鬼術を組み込んで用いているため、月の呼吸本来の純粋な剣術としての詳細は原作では描かれなかった。
人間時代には痣を発現させていたことは明らかになっている。透き通る世界については、当時から習得できていたのか、鬼になってから開眼したのかはわかっていない。赫刀は日の呼吸の剣士だけのものと認識していたようなので習得できていない。