カモノハシ
かものはし
概要
レッドリストに登録されている貴重種であり、オーストラリア政府によって厳重に保護されている。
灰褐色のビロード状の毛に包まれた体を持ち、水掻きがある四肢は短め、尾はビーバーに似て長く扁平。大きさ45cmくらいで尻尾が15cm。
カモに似たくちばしが「鴨の嘴」という名前の由来。英語名「プラティパス」も「平べったい」という意味。またハドロサウルス科の草食恐竜にも「カモノハシ竜」というあだ名がついているが、由来が同じだけでこいつとは特に関係がない。
くちばしはアゴの骨で構成されているものの、それを覆う生体組織は意外に軟らかく、内部には獲物の生体電気を感知するセンサーのような器官がある。この嘴で川底を探り、主に水中の小動物(小魚、ミミズ、甲殻類、水棲昆虫など)を食べる。
※生体電気なんて電気ウナギじゃあるまいしと思った人もいるかもしれないが、元々筋肉は脳から神経を通る微弱な電気信号で動く。そのわずかな反応を頼りに獲物を識別するのはサメやエレファントノーズなどにも見られる。
子育てと就寝時以外は殆ど水中で生活する。
哺乳類としてはとても原始的なグループで、胎盤を持たないので卵を産む(元々哺乳類の祖先の単弓類やジュラ紀くらいまでの哺乳類は卵生であった。しかし哺乳類なので孵化した子は親のお腹から滲み出る乳を飲んで育つ)。また「単孔類」という名前の通り肛門と尿道・産道とが分かれていないので、ウンコもタマゴもここから出るし、交尾の際にも使う(鳥や爬虫類と同じ)。
尚、オスは後ろ足に毒を含んだ蹴爪を持っている。この毒が意外と凶悪で、犬くらいの小動物なら殺せてしまう。
人間はさすがに死にはしないが、それでも数日~数ヶ月は激痛に苦しむ。
くれぐれも万が一野生のカモノハシを見かけたら、危険なので触らずにそっとしておいていただきたい。
アボリジニ伝承では、カモノハシはガヤーダリーと呼ばれ、カモの娘と狡猾なミズネズミ(ニューギニアから比較的最近にオーストラリアに入ってきたと思われる半水生齧歯類。齧歯類としては珍しく水生動物を中心にした肉食寄りに進化している。カモノハシとは潜在的には競合することもあると思われるが、餌があまり被らないなどの形で共生している)との間に生まれた双子がその祖先であるとされる。
ヨーロッパ人にその存在が確認されたのは1798年頃のこと。発見された当時は珍妙すぎる外見と生態から、標本を見たイギリスの学者達は剥製職人による創作物だと思ったそうな。
生物的に異質な遺伝子構造をしており、哺乳類・鳥類・爬虫類の遺伝子が交じり合っている。そのためカモノハシには近縁種が存在しておらず、天然のキメラ動物とも言える。
また諸説あるが、恐竜の時代から姿を変えずに存在している生きた化石ともされている。
哺乳類としてあまりにイレギュラーなため、学校の生物の授業でもほとんど取り扱われず、学習において無視に近い扱いを受けている。そのため、動物図鑑を読む習慣の無い人の場合、理系(特に理系といえど生物学系と縁遠い事が多い工学系等)の大学を卒業した人であってもカモノハシが実在していると知らないなどということも。
カモノハシやハリモグラといった単孔目は有袋類より更に前からオーストラリアに棲息していた最古の哺乳類とされる。現生のオーストラリアの有袋類は南米のチロエオポッサムの仲間(ミクロビオテリウム目)が南米から南極を介して陸伝いにオーストラリアに移り住んだ後、大陸移動でこれらの大陸が分裂したために隔離され、数千万年間で独自の進化をとげたとされる。有袋類の到達前からオーストラリアに棲息していた単孔目は有袋類に圧されることになったが、カモノハシの場合は水陸両用生活という特殊な生態が幸いして生き残ってきたとされる(ハリモグラの場合は半地中生活と棘の装備という特殊さで生き残れたとされる)。特にカモノハシのように水に潜るとなると、有袋類では袋の中の子供が溺れてしまうため、そのように進化するのはハードルが高かったのだろう。
オブドゥロドン
1000万年くらい前に生息していた化石種で大きさ50m程。
名前の意味は「長持ちする歯」。
現生種と違って臼歯があり、それ故にくちばしの「電気センサー」はさほど発達していなかった(歯があることでスペースを使い、センサーの要となる神経をあまり発達させられなかった)。そしてくちばし自体がやや上向きでついていたため、視力で水中を漂う獲物を捕食していたと考えられている。
ちなみに現生種は歯がない代わりに角質の義歯を持ち、また摂食時に舞い上がった砂を歯の代わりにして咀嚼する。またそのおかげでセンサーが発達したので、泳ぐときに目をつぶっていても大丈夫。