各国語での表記
サタン
英語:Satan
ヘブライ語:שטן
アラビア語:شيطان
概要
名前は「敵対者」「反対する事」を意味するヘブライ語のsatan(またはアラム語のsatana)に由来する。アラビア圏ではシャイターンと呼ばれる。しかしアラビア語のシャイターンは悪魔一般の呼び名であり固有名ではない。西洋の悪魔学でも高位の悪魔の名称とされることがあるが、ユダヤ教とキリスト教におけるサタンは基本的には固有名詞として使われる。アメリカ合衆国のフェミニスト著作家バーバラ・ウォーカーはエジプト神話の神セトより、「セトの犬(セト=アン)」が変化したとの説を唱えており、一部メディアではセトとサタンを同一視、或いは非常に関わりの深い存在とする向きもある。
(ただし彼女は本職の宗教・言語の研究者ではなく、独特な神話伝説解釈も多い)
聖書においては神に仕える一天使でしかなかったが次第に「敵対者」の名が強調されるようになり、悪魔としての役割を務めるようになった。例を挙げれば、ソロモンを唆して人口調査を行わせることで神の怒りを買わせて結果的に七万に及ぶイスラエルの人民を死なせる(歴代誌)、ヨブに災いをもたらし続けて信仰心を揺らがせようとした(ヨブ記)。
被造物である以上サタンには限定的な力しか与えられていないこと、また、神よりも登場場面が圧倒的に少ないこと、神がよく人を殺すことから、聖書で人を殺した人数は実はYHVHより遥かに少ない。
姿についての描写は旧約聖書にはないが、『創世記』でアダムとイブを誘惑した蛇と同一視はされている。新約聖書の『ヨハネの黙示録』で「赤い竜」と呼ばれている。
12章3節以下によると冠をかぶった七つの頭と十本の角を持ち、「年経た蛇」と呼ばれる。
しかし西洋絵画などでサタンが描かれる時は常に七頭十角の赤竜や蛇として描かれるわけではなく、
人型で描かれることも多い。蝙蝠の羽を持つ禍々しい姿や、堕天前の輝かしさの名残を残す威厳や美を備えた姿でも描かれる。
キリスト教の大部分では、堕天使ルシファーと同一視されている。また、ユダヤ教ではサマエル、イスラム教ではイブリースと同一視され、シャイターンに定冠詞アルをつけてアル=シャイターンとすると彼を指す。他にもサタナエル、メタトロン、ベルゼブブなど様々な天使・堕天使・悪魔と同一視される。外典『バルトロマイの福音書』やボゴミル派に関連する文献『聖ヨハネの書(秘密の書)』にはサタナエルがエルの称号を失ってサタンになった、という説がある。これが「ルシフェルがエルの称号を失ってルシファーになった」という俗説の発生・流布に影響を与えたのかもしれない。
地獄(魔界)の支配者であり全悪魔を統べる王とされる事が多い(コラン・ド・プランシーの「地獄の辞典」では地獄に措ける2大政党の内野党の最高責任者で、与党の最高責任者たるベルゼブブと対になる存在)。
ユダヤ教、キリスト教では神の敵対者、イスラム教では人間の敵対者とされる。また、ヘブライの伝承では唯一神による「試練」の具現化でもあった。
七つの大罪の内「憤怒」を司るともされる。
日本でサタンと言う語が、悪魔の中でも上位の存在を指す総称として用いられることがあり(例えばオウガバトルのサタンはデビルの上位クラスである)、しばしばサタンの語に著名な悪魔(ベルゼブブ、メフィストフェレス、アバドンなど)を含む。
また、最大の悪魔と言う事から悪魔的強さを持つキャラクターや、物語のラスボス的ポジションにあるキャラクターに「サタン」の名が用いられる事も多い。
「サタン」の名で呼ばれるキャラクター達
- 『ドラゴンボール』の登場キャラクター、ミスターサタン。
- コンパイルのゲーム『魔導物語』、『ぷよぷよ』の登場キャラクター。後ろに「様」(サタン様)が付いたら大体この人。→「サタン様」
- 『キン肉マン』の登場キャラクター。
- 『デビルマン』『バイオレンスジャック』などの永井豪作品に登場する魔王。→大魔神サタン
- 『女神転生』シリーズに登場する悪魔。→サタン(女神転生)
- 『サンタじゃないぞ・・・』
- 『デモンブライド』に登場するぺこ丸のブライド。
- 漫画『青の祓魔師』に登場する悪魔。漢字表記では「青焔魔」となっている。
- ハリウッド映画『コンスタンティン』に登場する悪魔。
- ライトノベル『はたらく魔王さま!』の主人公、真奥貞夫の本名。→サタン・ジャコブ
- ゲーム『うみねこのなく頃に』の登場人物。 →煉獄の七姉妹