概要
『魔王城でおやすみ』に登場するあくましゅうどうしとスヤリス姫のカップリングの略称。
魔王に攫われた姫と魔王の腹心の幹部の組み合わせ。
あくましゅうどうしはスヤリス姫のことを「姫」、スヤリス姫はあくましゅうどうしのことを「レオくん」と呼ぶ。呼び方に関してのエピソードも本編で描写されている。
なお、あくましゅうどうしは100年前のことを1,2年前と言ったり、鳥獣戯画が描かれた時代から生きていたことが仄めかされたりと既にかなりの高齢である。
馴染みの深い魔物も沢山いるが、彼のことを名前で呼ぶのは親友の睡魔と姫のみである。
190cmと150cmのなんと40cm差。
そして悪魔×人間という、体格差・身長差・寿命差・年齢差・異種族・身分違い・敵同士…と属性てんこ盛りな組み合わせである。
本編ではあくましゅうどうしは自由奔放なスヤリス姫によく振り回される苦労人の1人。
一見おじいちゃんと孫のようで、大変微笑ましい関係性である…
……と思われていたのだが、原作6巻71夜頃からあくましゅうどうしがだんだんと暴走し始め、スヤリス姫に惹かれていく。
なお、かつて発売された公式ファンブックの単行本発売当時にあくスヤ要素が盛り込まれた店舗特典ペーパーなどのイラストが収録されていた。
また、作者へのインタビューも収録されておりあくましゅうどうしの感情について言及している一節がある。
本編における関係性の変遷
巻を重ねるごとに関係性がどんどんと変化していて、目が離せないカップリングである。
ここで取り上げる話以外にもこの2人の描写が小さなコマに紛れていたりする。
※以降単行本のネタバレを含みます。閲覧は自己責任でお願い致します※
1巻3夜「死という甘い眠り」
騒音のない安らかな寝床を求めて魔王城内を散策する姫は、不慮の事故で命を落としてしまう。
彼女が目覚めた先は悪魔教会。
そこであくましゅうどうしに蘇生された姫は、自分に使われた棺桶の質へ真っ先に目を向け棺桶のリメイクを行う。あくましゅうどうしの角をヤスリ代わりに使って。
解説
「あくスヤ」のルーツにして後にカップリングに発展するとは思えない2人が初めて出会う話。
初対面から非常にインパクトが強すぎる出会い方である。
この話はアニメ1夜にも収録されている。
3巻39夜「隠すなんてよくないよ」
テレビで放送されていた温泉リゾート番組を見て理想を抱いたあくましゅうどうしと姫が、互いに異なる理想を実現するために行動するが…。
解説
この回はあくましゅうどうしの「姫に対しての認識」が変わったターニングポイント。
以前から姫のトンデモ発言に振り回されたり、蘇生ミスの弱味を逆に利用されたり、姫が服を盗んで着たりなど災難続きのあくましゅうどうしだが、手のかかる孫と祖父といった態度で接していた。
これまで「手のかかる孫と祖父」といった2人であったが、この回で起きたラッキースケベにより「姫は異性である」という意識が彼に生まれる事になっ(てしまっ)たようだ。なお姫は全く気に留めていない様子。巻末のおまけページは必見。
5巻55夜「姫のすてきなまくらやさん♡」
「善行は安眠を促すのでは?」と考えた姫がとった行動、それは「枕営業」であった。
…と言っても変な意味ではなく文字通り魔物たちに「枕を配る」という事である。
しかし彼女の日頃の行いが災いし素直に枕を受け取る魔物は皆無。
最終的に枕の送り主を伏せた事で魔王からのプレゼントだと勘違いした魔物は次々と枕を手に取り、善行はできたものの少し肩を落とす姫だったが…
「これ…姫が作った枕だろう?」
「今日の姫はいいこだね。」
感謝の矛先を自分に向けられなくていささか肩を落とす姫の元に、あくましゅうどうしが駆け寄り感謝と称賛の言葉を送る。
すると、姫はすぐに逃げてしまい善行が大成功したにもかかわらずいつもより少し寝付きが悪くなってしまった。
その後、姫は「善行は不眠症も引き起こす」と判断し引き続き凶行も混ぜていこうと決意した。
解説
ファンの間では「姫があくましゅうどうしに対する恋愛感情を覚えた」という考察がされている。
あくスヤ回はあくましゅうどうし視点が多いのだが、今回は珍しく姫視点のあくスヤ回として取り扱われている。
巻末のおまけページも必見(この時点で既にあくましゅうどうしに何らかの欲があるらしい)。
5巻57話「だあれもわるくないよ♡」
勇者に敗北を喫したかえんどくりゅう曰く「敗因はほぼ何故か持ち物に入ってた爆弾のせい」だが…
「勇者は恐らく姫の婚約者…かえんどくりゅうに倒せるか…?わからない…が…
別にかえんどくりゅうごと爆殺すればいいか!エグめの入れよう。」
6巻70夜「よるのよこうれんしゅう(健全)」
ハーピィからパジャマパーティーに誘われた姫。だがパジャマパーティーが何たるかを知らない姫は、魔王タソガレの部屋へと乗り込んだ。そのままなし崩し的に魔王と二人でパジャマパーティーの予行練習を行うが、それをあくましゅうどうしが目撃してしまい…
「『人間』と『魔物』って、恋愛とかしても良いの…?」
二人きりでベッドの上にいる姿を目にして(姫が魔王のベッドに乗り込むのは二回目)上司である魔王に憤るあくましゅうどうし。
幼き日から育て上げた世話係としての「叱責」にも見えるが、これ以降の展開を考えると間違いなくその感情だけではないだろう。
解説
姫が上記のセリフを発するページは、たった2コマで構成されている。
基本的にコマ割りが細かい傾向の当作品では珍しい大ゴマであり、あくましゅうどうしの受けた衝撃がよく伝わる。
なお、このエピソードはアニメ化されている(11夜収録)が、結末が原作と異なる。
アニメでは姫が予行練習で満足してしまったため、パジャマパーティーは中止となった。だが原作ではパーティーは決行されている。
6巻71夜「胸中パーティーナイト」
パジャマパーティー本番。
なんと前話の予行練習を見たあくましゅうどうしがパーティーに乗り込んできた。
女子会の中に男が一人交じって恋バナをするとんでもない光景だが、あくましゅうどうしは姫に「異性の寝室に軽々しく入ってはいけない」という旨の説教をするために来た様子。それを見て、「パーティーに混ざろうという煩悩などではない」とアルラウネは好意的に捉える。
しかし、説教などどこ吹く風の姫が「みんな好きだから行く」「だって君の寝室はいい匂いするし、何しても全然起きないからすごくいいんだよ?」と発言した途端、あくましゅうどうしは完全にうろたえていた(アルラウネ曰く「ナマグサ若作りジジイ」「なまぐさしゅうどうし」)。
なお、あくましゅうどうしは途中から、参加している他の女性陣のことを忘れて暴走してしまっている。
解説
この回からあくましゅうどうしの暴走が顕著になってくる。
更にこの話では姫が既にあくましゅうどうしの寝室にも(本人の知らない間に)侵入済みであることが判明し、あまりの衝撃にあくましゅうどうしは気絶した。
7巻79夜「教会でRINNE」
魔王城で「マンドラゴラ掘り会」というイベントが開催されるが、あくましゅうどうしは参加せずに悪魔教会に戻る。
近頃、あくましゅうどうしは姫に関わると挙動不審になる自分に気付いた姫を避けていた。
しかしその日はなぜか姫がやたらと死んで悪魔教会に運ばれてくる。
明らかに異常な死亡ペース、その理由は不明だが、自身があくましゅうどうしに避けられているのは気付いており、それを気にしていると判明。
あくましゅうどうしは動揺するも、気のせいだと言い張った。
その流れで過去に自分と魔王が服装を変えただけで見分けが付かなくなったことを引き合いに出し、当て擦りのような発言をしてしまう。
だが姫はそれに対し「目さえ隠れてなければ分かる(要約)」と返答し満足そうに去っていった。
「死ぬ……!!」
解説
この話はあくましゅうどうしが完全に姫へオチたであろうと思われる回である。
この回のアオリ文は「■あくましゅうどうし、萌(キュン)死。」
7巻89夜「コタツじゃなくて墓穴掘っちゃいましたね」
食堂のホリ=ゴ・ターツで会話中、のろいのおんがくかに姫の話題に過剰反応する事を指摘されるあくましゅうどうし。
彼はそれをきっかけに自分が姫を気になっていることを全力否定する。
その内容は…
- 姫のことを考えないようにしているのに、どこにいても姫が現れる
- おかしいのは自分でもわかっているが、姫は無茶をするので目が離せない
- 気付いたら姫の前で年甲斐の無いことをしてしまう自分が嫌だ
- どんどん自分が無様になっていく気がして悩んでいる
という、聞く人が聞けば自白同然のもの。
心の機微に疎い姫には(仮に聞こえていても)理解できなかったであろうし、パニック状態のあくましゅうどうしは全力で吐露し続けた。
最近自分が姫の事になるとおかしくなる事への苦悩を半狂乱になりながらブチ撒け、最後には「私は姫のこと、好きなんかじゃないんだ!」と口走ってしまう。
当の姫は、その言葉を聞いていたのか聞いていなかったのか分からない反応をするが…。
解説
この時点でのあくましゅうどうしの心情が、本人の口から明かされる。
これ以降、あくましゅうどうしの気持ちは徐々に周知の事実となっていく。
この話が収録されている7巻巻末のおまけマンガでは、魔王もかなり正確にあくましゅうどうしの心情を見抜いていた。
パジャマパーティー予行練習の時点でブチ切れられたこともあり、痛いほど思い知らされた結果だろう。
本誌掲載時の担当編集による柱コメントは『あくましゅうどうしさん、誤魔化すのヘタすぎかよ…』。
8巻96夜「人が名乗ったら名乗る!」
これは「本名を知られずどう姫を乗り越えるか」というあくましゅうどうしの奮闘話。
数年に一度更新される魔王城人員雇用名簿の時期がやってきた。あくましゅうどうしは「レオナール(日頃は陰鬱ながら夜な夜な魔女たちと淫らな宴を催すという伝承を持つ「サバトの雄山羊」を意味する)」という本名を嫌っているのだが、よりによって名簿の回収は姫が手伝っていた。
どうにかして本名を知られまいとする彼だが…
「『姫のこと好きなんかじゃない』から言わないんでしょ。」
旧友・睡魔の登場によって場が収まるかと思ったが、なんと上記89夜での発言は聞こえていた上に覚えていると発覚。
その後なんとか睡魔の活躍(?)により、名前を勘違いさせることに成功して場は収まった。しかし、名前をしつこく聞いたことで人の心を傷つけてしまったと感じた姫は、寝心地が悪くなってしまったという…。
なお、その後姫は酔った睡魔のせいであくましゅうどうしの本名は「レオたード」だと勘違いしてしまうのだが、彼的には本名を知られるよりそっちの方がよほどマシだった様子。
8巻99夜「ジゴ=クサツよいとこ二度三度おいで」
新人研修旅行で姫が各幹部と自由時間を過ごす中、姫の言い方のせいで変な勘違いをしてしまうあくましゅうどうしだが連れてこられた所は砂風呂であった。
9巻111夜「悪魔にしては頑張っている方」
「数日前から誰かにつけられている気がする」とあくましゅうどうしに相談する姫。
あくましゅうどうしはストーカーを探すべく行動するが、犯人は姫のことが好きな新入り魔物「はぐれかまいたち」と巻き込まれて彼を見守る役になってしまった魔王だった。
あくましゅうどうしは二人に説教をするが、特定の曜日の姫の行き先や行動など妙に姫に詳しいそぶりを見せ妙に姫の事に詳しい事を魔王に指摘され…
「私が1番のストーカーだ━━!!」
なんと、あくましゅうどうし自身も姫のストーカーだった(しかも無自覚)。
結局今回の件は、3人全員が犯人であったため隠蔽することに…。
姫に嘘をついてしまった罪悪感と自分の気持ち悪さに打ちひしがれて、十歩ごとに倒れ込むあくましゅうどうしであった。
解説
この回では、食い気味に他者の提案を却下するあくましゅうどうしのガチ嫉妬顔が見られる。
相手は魔王城の新入りで、幹部ともあろう者(しかも相当な年長者)が実に大人げない。
9巻112夜「がんばれ!でびあくましゅうどうし」
無自覚ストーキングのショックで自己嫌悪しながら蘇生を行っていたあくましゅうどうしは、蘇生ミスによりでびあくまと入れ替わってしまう。
時間経過で元に戻るまで隠蔽しようと試みるが、そこに姫が通りがかる。
でびあくまのフリをする彼に、姫はあくましゅうどうしの話を始める。
「いつも助けてもらってる。だから呼び方くらいちゃんとする。」
解説
他人のふりをしていたら、意中の相手が自分に関する話をしているのを意図せず聞いてしまう…というラブコメ王道ネタ回。
「姫が普段あくましゅうどうしのことをどう思っているか」が本人の口から語られた。
あくスヤ的には、姫からあくましゅうどうしへの呼び方が変化するターニングポイントでもある。
ラストシーン、新しい呼び名に赤面するあくましゅうどうしは一見の価値あり。
9巻116話「WAになって燃やそう」
姫があくましゅうどうしの事を初めて「レオくん」と呼ぶ回。
9巻の単行本オマケにも少しこのくだりの続きがある。
11巻143夜「けんこうミルクに相談だ」
毎朝部屋まで配達される「けんこうミルク」を待ち侘びていたあくましゅうどうし。
しかしその日訪れたのは、牛乳屋さん(ミノタウロス)に雇われた姫だった。
なぜか姫はタンス預金の場所や冷蔵庫の中身など、妙に彼の部屋事情に詳しい様子を見せる。
そこで疑問に思ったあくましゅうどうしが、姫を派遣したミノタウロスに連絡をすると…。
「姫、毎日遊びに行ってるみたいなんでついでに頼んだんですけど…」
なんと、姫はあくましゅうどうしの部屋に毎日遊びに行っていることが発覚する。
しかもあくましゅうどうしが寝ている間に。
さすがのあくましゅうどうしもパジャマパーティーの件を持ち出して「異性の寝室に入ってはいけない」と叱るのだが、姫は聞く耳を持たないどころか斜め上の返答をする始末。
説教にも反省の色を見せない姫にあくましゅうどうしは、「今後軽々しくこのドアをくぐるな」と命じて部屋から追い出す。
しかし姫はあくましゅうどうしの部屋の壁に穴を開けており、そこから悠々と出入りするのだった…。
解説
パジャマパーティー回で少し触れられていたが、姫はあくましゅうどうしが寝ている間彼の部屋に毎日遊びに行っていることが発覚する回。
これまでの話で独占欲やストーカー行為など、あくましゅうどうしの大人げない醜態が明かされてきたが、実は姫の方も結構なことをやっていると判明した。
この話の冒頭で、姫の部屋(牢)とあくましゅうどうしの自室はかなり離れていることがわかるのだが、なぜ毎晩その距離をわざわざ来ているのか、部屋で何をしているのかは不明。
後に16巻の質問コーナーで「寝ているあくましゅうどうしの枕元に立つ、姫のパジャマの裾」という描写があり、これが現時点で唯一の情報である。
本誌掲載時の担当編集による柱コメントは『姫が安眠を求める限り、彼の煩悩は尽きない…!?』。
11巻145話「物件探しって楽しいよね☆」
姫の侵入による自身の暴走を危険視したあくましゅうどうしが新たな部屋を探す回。
…しかし物件探しにその肝心の姫がついてくるのであった。不動産屋にも同棲していると勘違いされる。
13巻164夜~168夜
姫が好きすぎるあまり想いを抑えられない自身の醜さに耐えかねたあくましゅうどうしが、辞表を置いて失踪してしまった。置き手紙には「姫への想いゆえに暴走してしまう自分への嫌悪」「姫に近付く他の男への嫉妬(始めは勇者に対してだけだったが、その矛先は魔王など他の男性陣にも向けられ、しまいにはでびあくまの性別までも気にするようになってしまった)」「それが魔王の目指す世界の足枷になることを危惧した懺悔」が記されていた。
それを知った姫は辞表をビリビリに破き、「迎えに行く」「どうせ実家で待ってる」と宣言。
魔王、ポセイドン、改と共に彼の地元・悪魔の里まで追いかけるのだった。
その後、悪魔の里(デビルズ・ブリッジ・シティ)では他の男への嫉妬心による自己嫌悪感を募らせていたあくましゅうどうしが実家の塔の上で引きこもっていた(また、激情により髪が伸びている)。
手紙を姫に読まれたことを知ったあくましゅうどうしは逃げ惑うが、いきり立った姫に追い詰められてしまう。
だが、気持ちにとどめを刺されると怯えるあくましゅうどうしに対し、姫が怒っていたのは「急にいなくなったため蘇生業務が滞っていること」「自分への手紙がなかったこと」(いずれも要約)であった。手紙の内容に怒っているのではないのか、と問いかけるあくましゅうどうしに、姫は「近くに居ていい言い訳(要約)」を話す。
姫の寛大さに感涙したあくましゅうどうしは、魔王城に帰ることを決めたのだった。
解説
おそらく、今まで出されてきたあくスヤ回の中でも最もキーとなる話である。
また、魔王とあくましゅうどうし、ポセイドンとあくましゅうどうしなど他のキャラクターとの絆が再確認される話でもある。
この一連のエピソードでは、あくましゅうどうしの心情が詳細に描かれている。
特に手紙には「今まであくましゅうどうしが魔王城に対してどう思っていたか」「姫へどういった行動をしていたのか」「姫を想いすぎて何をしていたか」などの文章が書かれており、あくましゅうどうしの内心を細かく知ることができる。
なお、この手紙の内容は姫も聞いていたため知っているが、恋愛感情など心の機微に疎い姫がそこからあくましゅうどうしへの心情をどの程度まで読み取れているかは不明。
17巻209夜「呪われていて引き離せない!」
軽い呪いにかかったあくましゅうどうしを心の底から心配し過保護になる姫の話。
だがこの時の慎重さは全く身にならず、姫は相変わらず週一で死にあくましゅうどうしに蘇生されるのであった。
17巻212夜「絶対観てくれよな」
「魔王城でおやすみ」アニメ化の際の話。劇中でも魔王城を題材にしたアニメが作られることになり魔物達のテンションが全体的におかしくなる。
あくましゅうどうしも例に漏れずどこぞのグルメドラマごっこをしていたのだが…
「ひとくちくれ~」
「ひ、姫!あっこらそのお箸は私が…あ~~~」
…これは紛れもなく間接キスではないか?
17巻221夜「すべてが姫になる」
度重なる仕事や心を乱してくる姫に、疲労を重ねていたあくましゅうどうし。
旧友・睡魔が提供した「目の前に癒やしの空間が広がります」という薬を飲んだあくましゅうどうしの視界に映る全ての魔物が姫に見えてしまう。
彼は薬が効いていることを隠そうとするが、その結果普段に輪をかけて挙動不審になってしまった。
食堂にいる魔物全てが姫に見えてしまい目の毒な上に、誰が誰だかわからない。
あくましゅうどうしは薬が効いていることを隠そうとするが、その結果普段に輪をかけて挙動不審になってしまった。
本誌掲載時のアオリ文は「あくましゅうどうしの癒やしは姫、という事実は揺らぎませんけどね。」
13巻の実家逃亡エピソード以来久々のあくましゅうどうしの暴走である。
18巻234夜「がんばれ!にせものしゅうどうし」
好きなバンドのライブに行くため、あくましゅうどうしは従弟のカモシュに仕事代理を頼む。
魔王城に来たカモシュは”あくましゅうどうし”に変装して過ごすのだが、部屋ではいつものように不法侵入中の姫が我が物顔でくつろいでいた。
カモシュは姫とやりとりをしていく中で、従兄が姫のことを好きであることを悟る。
しかし同時に"自分があくましゅうどうしではないことに姫が気づかない"ため、姫からの脈は無いと判断し、いたたまれなさからどぎまぎしたカモシュが取り繕うと…
「でも君はレオくんじゃないからだめ。」
彼は「姫はあくましゅうどうしが偽物であると気付いていた」「思っていたよりも脈なしだと思っていたが、実は大いに脈アリだった」という衝撃の事実に思わず赤面し逃走。
ライブから帰ってきたあくましゅうどうしに詳細を報告せず、胸の内に留めるのだった。
解説
この回では以下のようにカモシュのみならず読者やファンの面々にも初耳の情報が続出し、更に姫の意外な反応も数多く描写された。
- あくましゅうどうしは老眼鏡を使っており、それを姫は知っている(その老眼鏡は姫と一緒に買いに行ったものである)
- 老眼鏡を買いに出かけた際、あくましゅうどうしはかなり本気のおしゃれをしていた
- 今も他の男への嫉妬心を抑えられず、呪詛を続けている
- あくましゅうどうしは姫の髪をよく梳かしている
- 髪が乱れることを承知で穴を通り、クシを持参しているのに自分で髪を梳かさない(18巻でこの話の直前に収録されている質問コーナーにて、姫は身だしなみの中でも特に髪の毛に気を遣っていると明かされている)
- 姫は「あくましゅうどうし」以外の男には髪を触らせない
- 服を着替えただけでも他者の区別がつかなくなる姫が、今回カモシュの変装を見抜いた
ちなみに本誌掲載時の担当編集による柱コメントは『女心に敏感なカモシュ君でした‼』。
姫はまだ自分の気持ちに無自覚かもしれないが、彼女の内情をあまり詳しく知らないとはいえ(後に両者は26巻337夜にて共演)「女心に敏感なカモシュ」が「マジか……」と「潜在的に姫もあくましゅうどうしの事が好き」という事実を確信していた。
カモシュが普段から『姫は誰に対してもある程度こんな感じ』と想定しているならば納得がいくかもしれないが、何はともあれあくましゅうどうしは姫に大いに脈アリなのは間違いない。
ちなみにこのエピソードで出てきた「姫とあくましゅうどうしが一緒に老眼鏡を買いに行った」話について後に19巻の質問ページで
「あくましゅうどうしと姫が老眼鏡買いに行った時の服を 実際着てる姿が見たいし姫が何着てたかも見たいし どこに買いに行ったのか知りたいし いつの間に行ったのか知りたいし どっちから誘ったのかも知りたい」
という読者の願いを受け、熊之股先生が絵と共に回答している。
19巻244夜「これであなたも魔王様とおやすみ」
次回予告文に「次号、ASさんが気持ち悪いです。」とまで言わしめた回。
21巻263夜「小さくても厄介」
魔術で小さくなった姫とあくましゅうどうしの話。
魔物達はあくましゅうどうしの姫への想いに時々ドン引きしながらも生温かい目で見守っているのだが、この回でまた彼の評判は下がったししばらく腫れ物扱いされる羽目になった。
22巻281夜「会いに来るアイドル」
アイドル活動への助言を求め、あくましゅうどうしの元にやって来た姫。
あくましゅうどうしは自身の気持ちが「応援」「推し」と捉えられていることに戸惑うものの、これを機に姫を「推す」立場に落ち着いてしまえば諸々の悩みから解放されると気付いた。が…
「ウソの顔ぉ。」
いざファンの立場から褒めようとすると、本心からの言葉ではないと姫に見抜かれ動揺する。
本当に推しているのかと問われ、あくましゅうどうしは慌てて取り繕おうとするが、姫が手紙の内容を今も憶えていると知り、その場に倒れるあくましゅうどうし。
そして、姫をただの「推し」として見ることなどやっぱり無理だと内心で観念するのだった。
解説
164夜での手紙の内容を姫が覚えていること、それを姫がどう認識しているのかが明かされた。
これまで姫は、好意や愛に種類があることをいまいち理解しておらず、民からの敬愛も両親からの家族愛も同じように受け入れている。
魔王に片想いするゼツランへの少しズレた対応でもわかるが、特に恋愛感情についてはめっぽう疎い(70夜を踏まえると、一応「恋愛」「恋バナ」というものの存在ぐらいは知っている模様)。
例の置き手紙は、読めば誰でもあくましゅうどうしの心情が丸わかりになるような内容であった。
しかし案の定というべきか、姫は正確にわかっていなかったことが判明。
だが、この回で少なくともファンが推しに向ける感情とは何か違うと理解したらしい。
本誌掲載時の担当編集による柱コメントは『ライフ・イズ・ビューティフル』。
23巻289夜「お前と同じと思うな」
睡魔を訪ね旧魔王城に赴いたあくましゅうどうしは、睡魔が姫を抱き寄せる瞬間を目撃する。どうやら彼は姫の身を守っただけのようだが、あくましゅうどうしは目を離せなくなってしまい二人の様子を観察しながら密かに後を追った。
その後も危なっかしい姫を助ける度妙に距離が近い上、いつになく頼もしさを見せる睡魔。
その姿を見たあくましゅうどうしの脳裏に「睡魔は姫を好きなのでは」という疑念が浮かび、
「自分では睡魔に敵わないのではないのか」とという可能性に直面し、黙り込むが…
(睡魔にだけは!! 退きたくない!!!)
やがて睡魔への嫉妬と対抗心・姫への独占欲が募り、あくましゅうどうしは敵愾心を燃やして姫と睡魔にいきり立つ。
睡魔はその気迫に一度驚くが、フラッとその場を立ち去った。
あくましゅうどうしは一瞬勝ち誇るものの、戸惑う姫の様子を見て我に返る。
しかし、姫は意気揚々と食堂へ向かうのだった。
解説
あくましゅうどうしが姫を誘う(?)ことに初めて成功したお話。
今回であくましゅうどうしの方から姫を誘ったことは一度もなかったと判明した。
また、あくましゅうどうしが自己嫌悪感や他の男への嫉妬心が爆発して髪が伸びるのは今回で2度目である(3度目は第25巻323夜でザスタルにある事件がきっかけで尋問する時に)。
なお、あくましゅうどうしと睡魔には「かつてあくましゅうどうしがヤンチャしていた頃、彼に寝起きドッキリを仕掛けた結果普段睡魔が夢の中で処理している呪い等が自身に降りかかるという自業自得の末路となり、そこから「強そうにみせかけても何にもならない」と悟り更生した」という因縁がある(21巻265夜より)。
睡魔への疑念は次話ですぐに晴れるものの、その結果あくましゅうどうしは自らの誤解を激しく後悔し多大な自己嫌悪に苛まれてしまう…。
本誌掲載時のアオリ文は『睡魔(ライバル)の存在がレオ君を漢にした…!?』。
23巻298夜「帰ってきた名探偵すやすや」
冥界での騒動で見えないモノが見えるようになった姫が再び探偵業を始めることに。
冥界で起きた事件で責任を感じているあくましゅうどうしは姫の助手に立候補するが、姫の能力により彼の前日にやらかした数々の醜態が明らかになってしまう。
24巻310夜「まず誘えよ」
以前姫に老眼鏡を選んでもらったお礼として、次は自分から姫を城下町に誘おうと考えたあくましゅうどうし。
だが、その下見のために一人で城下町へ足を運ぶと、選んだ店ではことごとく姫が「一般魔物の生活を知るため」という理由でバイト中だった。
鉢合わせた姫から城下町にいる理由を問われ、あくましゅうどうしは「地元から訪ねてくる知り合いを案内するための下見」と誤魔化す。
しかし、事前に調べていた他の店もことごとく姫のバイト先と重なっており、ボツにせざるを得ない(単に両者は以外と趣味が合うのかもしれないが…)。
自らの悪運を嘆くあくましゅうどうしは、姫に下見の成果を聞かれると「出かけるの自体なしかも」と答える。
「それにほら、城下町はいいところだけどそんなに広いわけじゃないし…」
と言い訳を続け、どこに行っても姫がいるためロクに下見ができず一時は誘うこと自体諦めかけるが…
「じゃあ私と広いとこ行く!?」
「人間界だったらさ、私下見いらないよ。レオくんの好きそうなところ結構知ってる!」
思いがけない姫からの提案に唖然するあくましゅうどうし。
ふと我に返ると「また人間界にいきなり行くつもりだね!?」と姫を詰問しただけで、それ以上は話題も広がることなく終了した。
しかしその夜、ベッドに入った姫は不眠になってしまったという…。
解説
嫉妬や独占欲について特に理解できておらず恋愛感情に疎い姫だが、この回では姫の珍しいリアクションが見られる。
中盤、姫が「悪魔の里から来た女性を案内するための下見」と誤魔化すあくましゅうどうしに対し「その人女の人?」と微妙な顔で尋ねる場面がある。
直後に女性に人気のメニューを薦めており単純に注文を確認するためかと思われたのだが、これは遠回しに言えば「姫は自分以外の他の女性に嫉妬している」との意味合いが強い。
あくましゅうどうしが姫の提案に乗り、相手が女性であることを否定しなかった次のコマでは、姫の意味深な無表情だけがセリフも無く描写された。
その後、両者の沈黙・身長差・逆光と合わせて「あくましゅうどうしのためを思っているのではなく、予定がダメになったことを喜ぶような姫のエゴ・本心」が表現された「みんなで仲良し」を是とする姫の姫らしからぬ提案など、姫の「あくましゅうどうしへの恋愛感情」が大きく誇示された演出が描写された。
最後には人間界に行く約束をした夜、日中の労働で適度に疲れ目的も達成したことで心置きなく安眠できるはずだった姫が寝付けなかったという明確な異変がある。
姫には心配事を抱えていたり粗悪な睡眠環境などの外的要因で寝付けないことはこれまでにもあったが、それらが解消されているのに眠くならないのはあくましゅうどうしへの恋心が募ったからに違いないだろう。
本誌掲載時の担当編集による柱コメントは『眠れない理由は「すれ違い?」「思い違い?」…今までの悩みとは「段違い」!』。
第27巻350夜~351夜
あくましゅうどうしは疲労困憊により再び蘇生ミスで姫と互いに入れ替わってしまう。
「いつかやるとおもっていた」とやつれた顔をしつつ、そうなったときのシミュレーション通りに動くあくましゅうどうし。
精神力で知覚をオフにし、自身の体に入った姫に手紙を残し、指定の場所へ行き睡眠薬を服用して就寝。
元に戻るまで寝ていればいい…そう思っていた矢先、姫はあくましゅうどうしの振りをしようとしていたが腰痛が腰に響き「レオ君はおじいちゃん……ごめんね。お体、大事にするね」と労わりつつ泣いていた。
一方姫は関係各所で明らかに中身がバレバレな言動をしつつ彼の仕事を遂行するのであった。
魔王が仕事を依頼した際、寝具がいるとあちこちから寝具をかき集める。
「姫だよな、ま、いっか」と魔王が想定する中で姫は無事に仕事を終えた。
仕事を終えた姫は安全な場所はここだろうとあくましゅうどうしの部屋へ行く。
体は姫のあくましゅうどうしはソファーで寝ていた。
寝ている自分の表情を見た姫は
「…かなわないなぁ。レオ君っていっつも、私のこと大事にしてくれるんだから……」
と満面の笑みで呟く。
姫は「あくましゅうどうしが自分を大切にしている」ときちんと認識していたのだ。
その時あくましゅうどうしは覚醒し、あまりの気恥ずかしさに姫の体で絶叫した…。
解説
本誌掲載時の担当編集による柱コメントは『体は入れ替わっても、心の耐性(メンタル)には変化のない二人』(350夜)『姫の身体での経験が、脳にこびりついて消せない。AS、至上の地獄に撃沈。』(351夜)。
次話でも二人の入れ替わり状態は継続しており、ヒュプノスとの会談に姫の身体で講じるあくましゅうどうしはさらなる災難に遭ってしまうのはまた別のお話。
第28巻363夜「絶対いい場所♪カルコルガ」
ザスタルの故郷・カルコルガに向かったあくましゅうどうし。
だが当然のように着いてきた姫共々生贄にされそうになり…
この話がきっかけであくましゅうどうしの容姿の一部が変化する。
376夜「恐怖!旧魔王城徘徊爺」
棺桶でできたベビーカーを用いて魔王城を徘徊する姫とあくましゅうどうしは…。
小ネタ
姫の瞳の星はたまに2つになる時がある。これが一体何なのかは不明。(55夜・79夜・112夜・120夜)
しかし現時点ではあくましゅうどうし絡みの時のみ起こっている。
なお姫の恋愛観については「情緒があまり成長していないため恋愛と他の親愛の区別がまだついていない」ほか「王族なのでドキドキとかキュンとしたりはしない、自分が『選ぶ』立場であるという自覚がある」とのこと(ファンブックより)。
アニメ
アニメの方向性からか、あくましゅうどうしと姫の絡みは大幅にカットされている。強いていうなら8夜・11夜からあくましゅうどうし→姫への感情が読み取れる程度。
そのため、あくましゅうどうしは「爽やかで穏やかでたまに腹黒いおじいちゃん」というきれいなあくましゅうどうしになった。
…が、アニメ公式グッズとして「嫉妬のあくましゅうどうしTシャツ」なるものを販売していたり、2022年2月に開催された【魔王城でおあそび】では、嫉妬のあくましゅうどうしや赤面のあくましゅうどうしといった、姫への気持ちがあること前提のグッズが取り上げられたりもしている。