かなしみのさすらい怪獣
かなしみのさすらいかいじゅう
怪獣出現にMACの攻撃が始まった!
しかしゲンはその怪獣ロンを見て驚き、攻撃ボタンを押さなかった。
ゲンは何故攻撃ボタンを押さなかったのか?
ロンの破壊は続く。どうしたゲン!?急げレオ!
さぁ、みんなで見よう!
地球に向かって進む炎の大流星。地球に着く前に追いつければいいが…と不安げなダンらMACの面々。すると白川隊員の分析によって、生物反応があることが判明。正体が怪獣であることを警戒し、一同はすぐさま出撃した。
山岳地帯に落下した流星。その地点から大きな尻尾らしきものが姿を現し、怪しく蠢く。
現場に到着したマッキー2号と3号。より近くに接近する2号だが、突如尻尾の先から火炎が放射される。やはり凱がいた。
怪獣を誘き出して心臓を撃つべく、青島の号令でマッキー2機は尻尾に集中砲火。顔を出した時を狙い、ボタンに手をかけるゲン。岩肌をぶち破り、とうとう怪獣がその姿を見せた。
怒れる怪獣は今度は口から炎を吐き、3号を襲う。振り向いたらすかさず撃つように青島に命じられ、発射ボタンを握りしめるゲンだが…
ゲン「…ハッ!?」
怪獣の顔を見た瞬間、ゲンは息を呑み、動きを止めてしまう。焦った青島によりミサイルが発射させるものの、タイミングが合わず怪獣にはあまり効かず。
ナレーション「絶好の的だった怪獣の顔を、ゲンは何故撃たなかったのか?何故これほど驚いたのか…真っ赤に燃える炎の中で、ゲンの心はあの懐かしいL77星に飛んでいた」
過去の思い出の中で、砂漠のような場所を駆けるウルトラマンレオ。そこにあった水たまりに、一匹の小さな怪獣の姿が。
レオ「ロン!ロン!なんだお前、またここにいたのか?アハハハ…お前中々泳ぎが上手いじゃないか!よーしよし、ハハハハハ…!」
ナレーション「あの可愛いロンが生きていた…懐かしさと驚きで、ゲンは呆然としたのだ。怪獣ロンは、失った故郷の星・L77星の動物で、レオとは大の仲良しのペットだったのだ」
嘗ての日々を思い出すゲンに、青島が声をかける。マッキー2号と3号はロンの火炎によって撃ち落とされ、MACは敗北を喫してしまった。
本部へ帰還する一行。ダンによると怪獣は地下の火山脈に入り込んでしまったという。次はどこに現れるかわからないと警戒する赤石だが、青島は一発で倒すチャンスを無碍にしたゲンに掴みかかり、こいつと戦うのは嫌だと言い出す。
その場はダンに諌められ、各隊員は次の出撃に備えてマッキーの整備に当たる。そして残ったゲンに、ダンが話しかける。
ダン「ゲン、L77星の生き残りは、お前だけではなかったという訳か…」
ゲン「…知ってたんですか?」
ダン「さっき分かったばかりだ」
ゲン「L77星にいる時は、大人しい生き物でした」
ダン「生き残って宇宙を放浪していたらしい…」
ゲン「可愛い奴だった…それがあんなに傷だらけになってしまって、余程苦労したんでしょう…僕には撃てません!」
ダン「甘えだ」
ゲン「"甘え"?」
ダン「お前は撃つべきだった!」
ゲン「故郷の星を失った悲しみは、誰にも分かりっこありません!」
ダン「一歩間違っていれば、お前もああなっていたという訳だ」
ゲン「あいつにはゆっくりと休める自分の場所もない、帰って行く家もない…親兄弟もないんです、そんな奴を…」
ダン「MAC隊員失格だな…!」
ダンも去り、一人残されたゲン。ヘルメットをテーブルに置き、遣る瀬無い思いを抱えてその場を後にした。
その後、どこかの自然公園で木の影に佇み、ギターを弾くゲン。嘗ての故郷を想う歌・星空のバラードを口ずさんでいた。
♪窓を開け星空を 見つめてみても
帰る故郷は もう見えない
今はもう思い出に 過ぎない事が
俺の心では まだ生きている
青い夜空に 歌うこの歌
届け届けよ 愛した人に
仇取り流離う 男の頬を
濡らす寂しい 星空のバラード
ふと目を向けると、そこには大縄跳びをする少女達がいた。そこにはカオルの姿も。楽しそうに遊ぶ彼女達だが、一緒に遊んでいたミコちゃんに母親が声を掛けるのを、嫌な目つきで見ているカオル。
沢山のお菓子を持って来てくれた母親に甘えるミコ。母親が去った後、他の友達にも笑顔でお菓子を渡すミコだが、カオルはそれを拒否し、残ったお菓子を手で払い、踏みつけてしまう。
泣き出すミコ。慌てて彼女のもとへ駆けていくゲン。
ゲン「カオルちゃん!こんな事しちゃいけないじゃないか」
カオル「いいのよ!」
ゲン「いい?」
カオル「あんな甘えてばっかりの子、大嫌い!」
何もカオルに言ってやれないゲン。
ナレーション「カオルが何故こんな事をしたのか、ゲンには痛いくらいよく分かっていた。ゲンもまた、父や母を喪くしたばかりだったからだ。幼いカオルの悲しみを前にして、ゲンは言葉も無かった」
するとどこからか百子が現れる。ミコに謝るよう言う百子だが、カオルは聞かない。ゲンが百子に話しかけるが、百子に口を出さないよう言われ、黙り込む。何度言っても謝らないカオルに対し、百子は平手打ちをかます。
今度はカオルの方が泣き出し、百子に縋りついて叩く。百子はカオルの肩に手を置き、彼女を諭す。
自分のした事を理解したカオルはミコに謝罪し、ミコも笑顔でそれを受け入れる。百子は二人の頭を撫で、箱入りのチョコレートをあげて和解させた。
喜ぶゲンだが、百子はゲンに歩み寄り…
百子「おおとりさん、何故知らん顔で見てたの?何故カオルちゃんを叱らなかったの?」
ゲン「しかし…!」
百子「寂しいからと言って、悲しいからといって、何をしてもいいなんて事無いわ…!甘えさせちゃいけないのよ!そんなのは同情にもならないわ、まして本当の愛情があったら、絶対知らん顔なんか出来ない筈よ!」
いつになく辛辣な百子の言葉が胸に突き刺さるゲン。自室へ戻ってベッドの上でギターを力無く弾くゲンの心に、あのダンの言葉もまた蘇る。
ダン「ヤツはもうお前のペットじゃない!」
ゲン「僕には撃てません」
ダン「撃つべきだ」
ゲン「撃てません…!」
思い詰めるゲン。その時、ラジオのニュース速報が響く。
ラジオ「気象庁の発表によりますと、東京周辺の火山活動が急に活発になってきて、弱い地震が続発しています。これは先日宇宙から飛んできて、地球の内側に入り込んだ怪獣ロンが、地上に出る機会を狙って動き回っているせいだと推測されます。東京周…」
ゲンはラジオを止める。直後、実際に地震が起きた。ゲンは心に秘めたやりきれない思いを拳に込め、サンドバッグを数発殴ると、部屋を出て行った…
(Aパート終了)
山の頂上から煙が上がり、地は揺れる。配備についていたMACの面々がダンの下に集まる。
山の前方3キロを移動しているであろう怪獣は、次の噴火で地上に出てくると言う。2度と逃さぬよう次で仕留めると意気込む一方で、ダンは怪獣が地底のエネルギーによって強化されている可能性を危惧する。
するとマックロディーのサイドミラーに一台のマックカーが映り込む。乗って来たのはゲンだった。
隊員達がダンの号令で散る中、ゲンはダンに進言するが、彼に不信感を抱いていた青島が口を挟む。
ゲン「隊長、僕も連れてって下さい!」
青島「おおとり、お前と一緒に戦うのは御免を被ると言った筈だ!」
ゲン「青島隊員!」
青島「個人的な感情で言うんじゃ無い、任務を果たす為だ、怪獣を倒すためなんだ!」
そのままマッキーに乗り込むべく去る青島。ゲンはダンに再度話しかける。
ゲン「隊長…!」
ダン「怪獣を攻撃できるか?」
ゲン「…できます!」
ダン「ようし、他の隊員の信用を取り戻したら、連れて行こう。まぁ今回はここで、レーダーの番でもしていてくれ」
マッキー3号が出撃し、ダンも乗り込む。ゲンは言われた通りマックロディーに乗り込む。火山が噴火し、早速レーダーに反応が。すぐさまダンに通信を飛ばすゲン。
ゲン「隊長、ヤツが出ます!」
噴火と時を同じくして、遂にロンが地上へ姿を現した。マッキー2機との激しい戦いが始まるが、ロンは口から吐く火炎と、尻尾から放つ光弾でマッキーを攻撃。
まず2号が撃墜され、3号もやられてしまう。パラシュートで脱出したダンだが、ロンの火炎でパラシュートを焼かれてしまう。やむなくパラシュートを切断し、空中回転を加えて着地を試みるが、衝撃で転げ落ちてしまう。
腹を括ったゲンはマックロディーで単身ロンに突っ込み、火炎を物ともせず火砲を撃ちまくる。ロンが覆い被さろうとした隙に地雷を散布し、すぐさま退避して爆破。そのまま再アタックを試みるが、跳躍したロンのボディプレスでマックロディーは大爆発してしまう…
ダン「ゲン…!!」
一面が煙に包まれる。しかし、その煙が晴れると、そこにはロンの前に立ち塞がるウルトラマンレオの姿があった。
嘗ての主人と思いがけぬ再会を果たし、動揺するロン。レオもロンを見つめる。その脳裏には、あの日仲良く遊んだ思い出が流れていた。
ナレーション「同じ獅子座のL77星で育ち、大の仲良しであった者が、今一方は悪人として、もう一人はその悪人と戦う使命を帯びて向かい合っていた」
レオに降参するかのようにうずくまるロン。レオはロンを指差し、その手を天に掲げる事で宇宙へ戻るよう伝える。ロンも頷き、後ろを向く。レオも話が通じたと考え、空を見上げて思い出を回想する。
しかしロンはレオが目を逸らしたのを見計らい、密かに尻尾をレオの足に巻きつけ、払う。最早昔の主人であっても騙し打ちを行う程ロンは荒み切っていたのだ。
奇襲に怯むレオを休まず追撃し、自分のペースに持ち込もうとするロン。レオの背中に打撃を加え、逆エビの体制で苦しむレオの首に更に尻尾を巻き付けて振り回し、尻尾を何度も叩きつける。トドメとばかりに目からビームを撃つが、レオに躱されてしまい失敗。
ここからレオは攻勢に転じ、尻尾を掴んでロン自身の背中に打ちつけ、キックで転ばせる。その上を二度に渡って転げる事で追撃し、スープレックスで投げ飛ばす。
ファイティングポーズを構えて戦いを続行しようとするレオ。しかし、ロンの方は今度こそ懲りたらしく、完全に戦意を喪失して怯え出す。レオはそんなロンにゆっくりと歩み寄ると、起き上がって大きく頷くロンに対し、頭を撫でてやる。そのままロンの身体を青い光に包むと、たちまちロンはあの小さな姿へ戻ってしまう。続けてビームランプから青い光線を放ち、ロンを収納する。
ナレーション「レオは、怪獣ロンを昔の様に小さくした。それは、今は無いL77星での平和な生活をまた与えてやりたいと願うレオの最後の友情であった」
空へ飛んだレオの姿が光に包まれ、消える。
(場面転換)
紙風船で遊ぶカオル達のもとに、ゲンと百子がやって来る。ゲンの腕の中には、可愛らしい子犬の姿があった。
ゲン「カオルちゃん!お友達を連れて来てあげたよ、ホラ」
カオル「ワーかわいい!」
ゲン「ロンって言うんだ、可愛がってね」
カオル「えっ!あたしにくれるの!?」
ゲン「うん!」
カオルは大喜びで友達に子犬のロンを自慢する。ゲンもその様子に微笑むが、百子は浮かない顔で尋ねる。
百子「ねぇおおとりさん、もっと他にいい名前ないの?」
ゲン「ん?」
百子「ロンってあの怪獣でしょ」
ゲン「うん…でも本当は、いい奴なんだ」
自分と同じ境遇のカオルにゲンが与えたのは、自分にはもういない「友」だった。それも、今は遥かな宇宙で暮らす、嘗ての自身の「友」の名を込めて。
川に浮かぶ紙風船と、ロンを連れて遊ぶゲン、百子、そしてカオル。そのまま彼らは夕焼けが輝くまで、幸せを噛み締めていた…
♪明け方の流れ星 見つめて想う
あれは故郷へ 届く便り
美しいあの星は 二度とは見えぬ
暗い彼方へと 消えて行った
青い夜空に 歌うこの歌
届け届けよ 愛した人に
出来るならあの頃 あの日の様に
歌いたいのさ 星空のバラード