叔父夫婦をケットル星人に殺された一郎の心は重く沈んでいた。
星人を倒すためゲンは立ち上がった。
だが、一郎の心に光を蘇らせることができるであろうか?
がんばれゲン!急げレオ!
さぁ、みんなで見よう!!
放送日
1974年6月21日
登場怪獣
怪異宇宙人ケットル星人
STORY
ある日、城南スポーツセンターでは大村の指導のもと、子供達が懸垂に挑戦していた。
しかし、皆4回もいかないうちに落ちてしまう中、ただ一人の少年だけが懸垂を続けていた。
大村は大声で誉めるが、うるさくて集中できないと急にやめてしまう少年。
百子に彼のことを尋ねるゲン。少年の名は松本一郎と言い、両親がアメリカで働いているため叔父の家に下宿しているのだという。更に猛が言うには、彼の叔父はボクシングのヘビー級チャンピオンらしく、ゲンもマイティ松本の名で思い出す。
一郎は頑張り屋が好きな叔父のため、誕生日までに懸垂を30回できるようになりたいのだと語る。
(場面転換)
工業地帯の土管の山から宇宙人が現れ、MACと睨み合っていた。青島を投げ倒し、赤石の鉄パイプを腕力で捻じ曲げるほどの怪力を見せた宇宙人・ケットル星人は、高く跳躍して土管の山の上に立ち、登って来た赤石を蹴り付けて撃破。残った平山もパンチで倒そうとするが、避けられて土管を貫通。しかし最終的には土管の山から落として平山をも破り、高く勝ち誇るのだった。
直後現場に到着したゲンはケットル星人を追い、小道に差し掛かった所で向かい側から走って来た男に「そいつを捕まえてくれ!」と叫ぶ。男は連続パンチで星人と渡り合うが、隙をつかれて首を絞められてしまう。助けに入ったゲンも蹴り倒され、男性は壁に叩きつけられてしまった。
持ち直した平山ら3人が駆けつけて星人は逃げたが、男性を介抱する中で赤石はこの男性がマイティ松本であることに気がつく。マイティ松本は病院に運び込まれるが、治療の甲斐なく妻や甥の眼前で息を引き取った。
涙に伏す一郎と叔母。一郎は悲しみのあまり川辺で石を投げ続ける。すると偶然川の中に落ちていたマイティ松本について書かれた新聞を見つけ、木の棒で拾おうとするが破けてしまう。やり場のない怒りをぶつけるように木の棒で新聞を叩く一郎にゲンは「叔父さんの仇は必ず取る」と声をかけるが、「叔父さんはチャンピオンだったんだ、勝てる訳がない」「何を言ったって叔父さんは帰ってこない」と言われてしまう。
その日の夜、基地で思い悩むゲンのもとに、扉を擦り抜けてダンが現れ、叱責される。
ゲン「隊長…」
ダン「一体お前がついていながら何たる様だ…!」
ゲン「すみませんでした…」
ダン「私に謝ったところで何の解決にもなりはせん、謝る前にお前はケットル星人を倒さねばならん…それがお前の役目だ」
ゲン「わかってます、しかし…悲しみに暮れる一郎君を、このまま放っとく訳にはいきません」
その言葉に目を見開き、杖でゲンを一撃するダン。怯み倒れるゲンにダンは語る。
ダン「星人を倒すのもお前の役目なら、悲しみに暮れる人間を救うのもお前の役目ではないのか…自分の蒔いた種を自分の手で刈るのは宇宙人も人間も同じことだ、他人の力を頼りにするな…!」
ゲン「隊長…」
(場面転換)
翌朝、城南スポーツセンターにタクシーに乗って来たトオル、カオル、そして明少年。車の中の父に懸垂が10回出来たら自転車を買ってくれるよう約束を交わす明少年。しかしそれを見ていた一郎は彼の父親を突如「最低だ」と侮辱し、喧嘩になってしまう。
トオルの制止も払い退けて明を叩き続ける一郎。ゲンら職員の仲裁を受け、ゲンは一郎を「人のことなんかどうだっていいじゃないか、30回に挑戦する方が価値があるんじゃないか?」と諭すが、一郎はMACに協力したにもかかわらず死んでしまった叔父の事を言って泣き出し、その場を走り去ってしまう。
その日の夕暮れ、夕陽に向かって叔父を呼ぶ一郎を見つめ、ゲンもまた星を見つめ、拳を握り締める…
ナレーション「ゲンには、一郎の気持ちが痛いほどわかっていた。一郎の叔父さんを殺したケットル星人は自分が倒す、そう心に決め空手の練習に励んでいた」
必死の訓練の中、突然マックシーバーに連絡が入る。東京684地区に星人が現れたとの事だった。今度こそ倒すと決意するゲン…
(Aパート終了)
赤石らのマックガン攻撃を躱し、瞬く間に全員返り討ちにしてしまうケットル星人。駆けつけたゲンに追われ、再び逃げる星人の先には、墓参りをする一郎と叔母の姿があった。星人は一郎の叔母に容赦なく拳の一撃を喰らわせて倒し、逃亡。赤石らに彼女を任せてゲンは後を追い、竹林にて星人と格闘戦で渡り合うものの、後ろから首を絞められ苦しむ。
しかしなんとか星人を投げ飛ばすと、同時に一本の杖が星人に投げ込まれ、着地しようとした星人はバランスを崩してしまう。そのままマックガンの攻撃を受けた星人は逃げ去った。そう、ダンが助けに来てくれたのである。
ゲン「隊長…!」
ダン「命を無駄にするな、失くしたら元も子もない…少年は残された叔母さんも喪った。少年の心は閉ざされ、誰の心も言葉も信じないだろう」
一郎の叔母も死んでしまった。その事実に項垂れるゲンを、強く揺さぶるダン。
ダン「立て、立つんだ!少年の心に、光を蘇らせることのできるのは、お前しかいない!」
一人残されつつも、林の中の木の間に鉄棒をつけて懸垂の練習をする一郎。涙を流して心が折れそうな彼に、ゲンは再度声をかける。
ゲン「がんばれ!君はスポーツクラブで一番懸垂が得意な筈じゃないか…さぁ、30回に挑戦するんだ!」
一郎「…嫌だ!」
懸垂をやめてしまう一郎。ゲンが訳を聞くと…
ゲン「一郎君?」
一郎「僕ばかし頑張ることなんかないさ、おおとりさんもMACも頑張ってなんかいないじゃないか!皆頑張っていれば、叔父さんも叔母さんも死ななかったんだ…!僕は一人ぼっちになっちゃったんだ!!」
ゲン「一郎君、わかるよ…!」
一郎「ウソだ、おおとりさんにわかるもんか!」
ゲン「君にはお父さんもお母さんもいる、だが…僕は父も母も兄弟も、みんな星人に殺された…!」
一郎「えっ…」
ゲン「でもいつまでも、悲しんだりはしていなかった…みんなを殺した星人を、倒さなければならなかったんだ」
一郎「星人を?」
ゲン「うん、星人は力も強く、頭もいい…かなり手強い相手だ。だが、倒さねばならない…!そうしなければ、僕の命はない!」
一郎「おおとりさん…!」
ゲン「今度星人が現れたら必ず僕が倒す…君はそれまでに30回に挑戦するんだ」
一郎「うん!」
ゲン「ほら、約束しよう…さあ!」
ゲンと指切りし、力強く懸垂を再開する一郎。落ちても諦めず、再び鉄棒を掴むその姿を見つめ、ゲンは思う。
ゲン(頑張れ一郎君!君は男の子だ、男はいつも一人で戦うんだ、自分と戦うんだ…がんばれ!僕も星人を倒すために…!)
すると、バランスを崩した一郎が落下。咄嗟にそれを庇ったゲンは、先程の光景を思い出す。投げ飛ばされた瞬間、杖の命中によりバランスを崩し倒れたケットル星人の姿を…
ゲン「わかったぞ、落ちるんだ!星人も落ちるんだ…!」
落下する瞬間の無防備な敵を狙うべく、ゲンはサンドバックを放り投げ、落ちるサンドバッグを攻撃する訓練を始める。
それぞれ異なる場所で、憎き星人への怒りをバネに練習に励む一郎とゲン。最初は上手くいかなくても、努力を続ければ結果は必ず実るもの。それは二人も同じだった…一郎は30回を達成し、ゲンは落下するサンドバッグにバックドロップを繰り出すことに成功する。
一郎「やった!」
ゲン「できた…!」
するとマックシーバーに通信が。一度目の出現と同じ場所に、今度は剣を携えてケットル星人が現れた。
マックナイフやマックガンを手にかかってくる隊員達を軽くあしらう星人に、怒りに燃えるゲンが立ち向かう。
剣撃を避けて一本背負いを繰り出し、空中で無防備になった星人にバックドロップを食らわすゲン。怯んだ星人だったが、身体を光らせて跳躍し…
巨大化して暴れ出すケットル星人。剣も巨大なアトミックランスへと変形し、柄尻からロケット弾を放ってゲンを狙う。
炎の海と化す工業地帯。ゲンもレオへと変身する!
ゲン「レオーッ!」
現場に着いた一郎の見守る中、両者の対決が始まった。ここでレオはアトミックランスに対抗すべく、まさかの策に出る。
何と煙突を引っこ抜き、念力でヌンチャクにしてしまった!
レオヌンチャクを振り回し、ケットル星人と相対するレオ。しかしアトミックランスの威力は凄まじいもので、やがてヌンチャクは砕かれてしまう。
マウントを取られ、槍の攻撃を避けるレオ。一郎はレオに向かって大声で叫ぶ。
一郎「レオ、がんばれー!俺だって懸垂30回に挑戦して勝ったんだぞー!!」
その言葉に勇気をもらったレオは、ケットル星人を蹴り飛ばして反撃を開始!
ケットル星人も負けじとアトミックランスから放つロケット弾攻撃に転じるが、バク転で悉く躱すレオ。今度は投擲を行うケットル星人だが、レオはジャンプでこれを避け、アトミックランスは工業地帯のビルに突き刺さる。ビルは爆発し、アトミックランスも炎の中に消えた。
槍を失い格闘戦へ移行する星人。互いに一歩も引かぬ一進一退の攻防を繰り広げる両者だったが、次第にレオが優勢となり、投げ技の多用でグロッキー状態に追い込むが、ここでカラータイマーが点灯。
ケットル星人のジャンプに合わせてレオも1テンポ遅れて飛び上がり、着地したケットル星人にレオキックを炸裂させる!
ケットル星人は身体中を駆け巡るエネルギーに苦しみながら、バッタリ倒れて爆死し果てた。
(場面転換)
その後、一郎は両親のいるアメリカへ引っ越すこととなった。トオルやカオルに笑顔で言葉をかけられ、明も笑顔で見守る中、ゲンと握手を交わす一郎。
一郎「アメリカに着いたら、おおとりさんのこと一番にお父さんに話します!」
ゲン「今度帰って来る時には、懸垂50回!出来る様になってるんだぜ」
一郎「いいえ!」
一同「えっ?」
一郎「100回に挑戦します!」
ゲン「ハハ、欲バリめ!ハハハハ…!」
大村「さささ、早く乗った早く乗った!飛行機に乗り遅れちゃうぞ」
タクシーに乗り込み、笑顔で手を振る一郎。ゲンらスポーツクラブの面々も、笑顔で手を振り返すのだった。
余談
レオヌンチャクが登場した唯一の回である。
本話の特訓は初めてダンが関与しないものとなっている。
本話にてゲンが一郎に心の中で語った言葉は、後の『ウルトラマンメビウス』第34話にてヒビノ・ミライにも授けられている。
ゲンは2話後の第13話でも同じように一般人を死亡させてしまうというミスを犯してしまっている。
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