遊園地の怪獣ショーの中に本物のギロ星獣が紛れ込み、
遊びに来ていたトオルと仲良しになった。
ギロを倒すべくMACが立ち上がった。
しかし、何も破壊しないギロに対しゲンは迷う…
どうしたゲン!?急げレオ!!
さぁ、みんなで見よう!!
放送日
1974年6月7日
登場怪獣
宇宙星獣ギロ
STORY
ナレーション「この日ゲンは、久しぶりの休日を楽しんでいた。MAC隊員として緊張した毎日を送っている彼は、今1地球人として、この平和な雰囲気に浸っていたのである」
コーヒーカップで楽しんだ後、売店でトオルにアイスを買ってやり、残りのアイスをメリーゴーラウンドに乗った百子とカオルに渡しに行くゲン。近くの柵に寄りかかってアイスを舐めるトオルを、何やら怪しげな着ぐるみが口をさすって見詰めていた…
その後、ゴーストロンとツインテールの飾られた「怪獣軍団ショー」と書かれた門をくぐる一同。
そこには今までこの地球に現れた怪獣を模した着ぐるみでいっぱいだった。チンぺ、ドリゴン、ヘルツ、ゼットン、ベロン、タイラント…それにZATのウルフ777まで。従業員のお姉さんが怪獣達を紹介する中、トオルがある一匹の怪獣と目を合わせた瞬間、その怪獣の目が光った。
怪獣をまじまじと見つめるトオル。怪獣はトオルの手のアイスを目に、引き寄せる仕草をする。アイスが欲しいと言っていることに気づいたトオルは、快くそれを渡す。喜ぶ怪獣にトオルは尋ねる。
トオル「うまいかい?キミ何怪獣?あ、僕トオル!君の名前は?」
怪獣「ギロ!僕ギロ!アハハハハッ」
トオル「ふぅん、ギロか…君そんなにアイスクリーム好きなの」
暫くしてゲン達も追いついてくるが、アイスを頬張るギロを怪しむ百子。もしやと思い、ゲンが宇宙人としての目で見てみると…
なんと、中に人が入っていなかった。そう、ギロは本物の怪獣だったのだ!
驚いたゲンは百子と一緒にトオルにギロから離れるよう訴えるが、トオルはギロを連れて逃げてしまう。近くにあった業務員用のトラックを拝借し、後を追うゲン。何度もトオルに呼びかけるゲンだが、トオルは「こいつは良い奴だよ!」と聞かない。やがて二人を追い詰めたゲンだが、トオルは必死にギロを庇う。するとギロは頭の触覚から泡を噴き出し、トラックを攻撃。次の瞬間ギロも巨大化し、トラックを拾い上げる。
本物の怪獣の出現に大慌てで逃げ出す人々。ギロはゲンを狙って頭から泡を吹き付け、気絶したトオルを掴み、胸の鱗の中にしまう。
ゲンはすぐさまレオに変身し、ギロと格闘戦を開始。胸の辺りにいるトオルを助けようとするがギロに突き飛ばされてしまう。とは言え、格闘能力で言えばレオの方が上。ギロ相手にさして苦戦することなく、飛び掛かってくるギロをいなして攻撃。ジャンプを多用して相手を翻弄し、投げ技で攻める。しかしレオが空中からキックを繰り出そうとすると、ギロは光に包まれて消えてしまった…
その後、ダンに注意されるゲン。
ダン「はっきりとした作戦もないままに、変身することは厳重に禁止してある筈だ!」
ゲン「いやしかし、今度の事件はトオルの命が!」
ダン「その通り!トオルの命が懸かっていた…それでお前、人質を救うことができたのか?ゲン、この俺が変身を禁止したのは、こういう事態を恐れていたからだ!お前が変身すれば、怪獣の方も絶対に勝とうと思い始めるんだ。ゲン、怪獣の手でトオルが宇宙へ連れ出されたらどうなるのか、お前そこまで考えたのか?」
叱責を俯いて聞いていたゲンは、その言葉にハッとして顔を上げる…
(なぜかゲンの目がクローズアップして場面転換)
マックロディーを運転しながらパトロールを続けるゲンの下に、B地区105、昼間の遊園地と同じ場所に星獣が現れたとの通信が。
遊園地に集合した隊員達はギロに銃を構えるが、ダンの命令で引き金を引かずに待つ。やがてマックロディーに乗って駆けつけたゲンに、ダンはメリーゴーラウンドに乗って遊ぶトオルとギロを見せる。ダン曰くトオルは「ギロの世界」なるものに惹き込まれているようで、MACの面々を見ても一緒に遊びませんかと聞き始める。
ダンはゲンをトオルと話をさせに行かせ、他の隊員達を円形に散らせ、命令が出るまで攻撃しないよう告げる。
ギロは良い奴なんだと話すトオルに、ゲンは仲間に入るふりをして接近、マックガンに手をかける。
そしてトオルが別の馬車に乗り換えようと席を離れた瞬間…
ゲン「よし今だ!」
ゲンはギロ目掛け発砲!他の隊員達もこれを呼び水に次々とギロに銃撃を仕掛ける。驚いたトオルは撃つのはやめてくれと叫ぶが、攻撃は止まない。そのままトオルは遊具から転げ落ち、ギロも姿を消した。柵に項垂れて気絶したトオルを助け起こすゲン達。
彼らの呼び声も届かず、トオルは夢を見る。
ギロ「トオルクーン!ウフフフ、アハハハハ!」
泳ぐようにしてギロの下へ向かうトオル。そこは玩具やお菓子が盛りだくさんのお菓子の国だった。
その頃、現実世界では目覚めぬトオルの脳波を機械で計測しながらゲンとダンが見守っていた。眠りながら微笑むトオルにゲンが語りかける。
ゲン「トオル、質問に答えてくれ…昼間星獣と君はどこに隠れていたんだ?」
トオル「またギロが笑ってる…ギロの体って暖かいんだな…あはは、はは…」
ゲン「隊長、ギロ星獣の影響で脳がやられてしまったんじゃないでしょうか」
ダン「脳波の異常はない…脈拍その他も正常だそうだ」
その時、トオルの脳裏に銃撃音が響く。
トオル「殺しちゃダメだ、ギロを殺しちゃダメだ…僕はギロと仲良くできるんだよ、ギロはただ、アイスクリームやお菓子が好きなだけなんだ…」
その後、病室を出るゲンとダン。
ゲン「隊長、ギロ星獣は…僕が変身しなければ何もしなかったし、何か…特別な星獣では無いでしょうか」
ダン「いや、今にきっと破壊を始める。ギロ星獣も決して例外では無い…ヤツの武器は、2本の触手から出す白い液だ。その液を撥ね返すんだ、すぐ特訓に入れ」
ゲン「しかし隊長…」
ダン「星獣の犠牲者がここにいるんだ、相手は必ずまだやってくる、新しい犠牲者が出た時に、お前は指を咥えて見ているのか?この地球は、お菓子でできた夢の国ではないんだ」
去っていくダンの杖の音が、廊下に寂しく響く…
(Aパート終了)
やがて起きるトオル。しかし彼の耳にはまだギロの声が鳴っている。そして夜なのに窓が光る…
トオル(ギロの声だ、ギロが僕を呼んでいる…呼んでいるんだ…!)
「ギロ!僕だよ、ギロー!」
その頃、ゲンはスポーツセンターの体育館の別室にて、泡を噴き出すカプセルの中で特訓に励んでいた。
ダン「相手は液体だ!今のお前のスピードでは、ヤツの吐く液には勝てん。ヤツの液は一瞬に固まる…そうなったらお前は助からん!固まる前に弾き返さなければならん。回転するスピードを上げるには空気の抵抗をできるだけ少なくする事だ」
ゲン「少なくする…?そうか、身体を、出来るだけ丸くすればいいんですね」
ダン「そうだ、円盤の様に丸くする事だ…そして全身をバネにして、遠心力で弾き飛ばすんだ!いいか、星獣を倒すための時間はほんの一瞬にしかない…!その一瞬が勝負だ」
ゲン「しかし隊長、そのギロ星獣はまだ地球を破壊してません」
ダン「言葉を慎め、星獣を倒す事だけ考えればいいんだ」
ゲン「隊長…」
その時、百子が部屋のドアを開ける。病室からトオルが消えたというのだ。ダンはギロに連れ出されたと推測する。
トオル「おおとりさん、ギロは平和な怪獣です。地球の人間が攻撃しなければ、決して暴れません。いつまでも人間と仲良く出来るのです。今夜もギロが僕を呼んでいます。今日から僕はギロの仲間に入るつもりです」
ギロとトオルが遊ぶイメージが入る。
(場面転換)
MACのレーダーが星獣を確認。場所は再びB地区105の遊園地。
マッキー2号や3号、マックロディーが急行し巨大化したギロに猛攻を開始。
ギロの胸元に隠れたトオルは叫ぶ。
トオル「やめろー!ちくしょう、ギロが何をしたって言うんだー!!」
その頃ゲンも、泡対策訓練を続けていた。空中で回転しながら身体が泡に包まれる中、マックシーバーの通信音声が鳴り続ける。着地しようとするゲンだが、泡に足を滑らせ失敗。疲弊しつつも諦めないゲンは、星獣が襲いくるイメージを抱き、再び跳躍。空中での高速回転で、身体についた泡を全て吹き飛ばすことに成功!
MACの隊服に着替えたゲンは、体育館を飛び出しレオに変身する!
ゲン「レオーッ!!!」
太陽の輝く朝の中、レオとギロの戦いが始まる。トオルはレオにギロを落ち着かせるよう呼びかけるが、レオもギロに技を次々と繰り出すので、すぐさまやめてくれと叫ぶ。
しかしレオとギロは対決を続行。相変わらず戦闘においてはレオの方が上手だが、マウントをとってトオルを救出しようとするレオにギロは泡攻撃を開始。
ギロの泡に身動きがとれなくなるレオだが、マッキー3号のミサイル攻撃が走り、ギロが怯んだ隙にレオは空中回転で泡を振り払う。そしてマッキー3号に気を取られたギロを後ろから攻撃して両膝をつかせ、両腕を締め上げた上で背中を踏んで苦しめる。
ギロが無理に立ち上がったことでトオルが振り落とされてしまうが、レオはすぐにトオルを掴んで救う。地上へトオルを降ろすレオに尚も泡攻撃を続けるギロだが、無事トオルを助けたレオはギロに挑みかかる。
そしてオルゴールをbgmに戦いは続き、辺りが泡まみれになる中レオは空中バク転と共にギロの頭の2本の突起物を手刀で切断。
ギロは力無く倒れ、大量の泡を噴射して消えた…
トオル「ギロ…!」
ギロが消えた場に突っ走るトオル。そこには頭の突起を折られ、目から光が消えた等身大のギロの亡骸が。
ギロに擦り寄り涙するトオル。MACの面々の他に百子やカオル、大村もその場に現れ、トオルを見つめる。
大村「トオル、泣くのはよせ。君だって、MACの隊員の仕事の意味が分かってる筈じゃないか」
トオル「わからないよ…!隊長は、どんな怪獣だって全部敵だと思ってるじゃないか…」
百子「トオルちゃん…」
悲しみに満ちた目でダンを睨むトオル。
トオル「ギロは地球では何も悪い事はしなかった…攻撃したのはいつもMACの方が先だったじゃないか!僕はもうMACなんかいらない、レオもいらないよ!」
大村「トオル、君は確かに星獣と仲良くできた。そして広い宇宙に、平和で優しい怪獣がいる事を知った…それだけでも大発見じゃないか。俺ら大人もね、君から大事なことを教わったと思ってるんだよ」
トオル「だけど、だけどギロは死んじゃったじゃないか、やっぱり僕は、ギロと一緒に宇宙へ行けば良かったんだ」
顔を見合わせるダンとゲン。そしてダンは…
ダン「トオル君、私からのお願いだ。ギロを生き返らせたらMACを許してくれるか?」
トオル「えっ、生き返る?本当に、ギロは生き返るの?」
ダン「但し、一つだけ条件がある。例え生き返っても、怪獣を地球に置く事は許されない…ギロ星獣には宇宙へ帰ってもらうが、いいか」
ゲンは丘の上へ登り、レオに変身。そして目から出すリライブ光線をギロに照射。ギロの目は光り、角も再び生えた。
立ち上がったギロは元気いっぱいに動き回ると、トオルと握手をしてレオのもとへ駆け寄る。ギロを掬い上げたレオはビームランプから出す緑の光線で、ギロを光に包む。
トオルはギロに降りてくる様呼びかけるが、ダンに止められる。
ダン「トオル君!私は君とギロ星獣の友情に打たれた…君は怪獣を愛し、怪獣もまた君を愛する事を覚えた!トオル君、ギロにこの美しい気持ちを持って、宇宙へ帰ってもらおうじゃないか」
ギロを乗せて飛び立つレオ。大きく手を振って、トオルは叫ぶ。
トオル「ギロー!!さようなら、また来てねーっ!!!」
辺りが夕焼けに包まれても、トオルは手を振っていた…
余談
レオの変身ポーズがまた変わっている。
序盤の怪獣ショーになぜかファイヤーマン怪獣のドリゴンがいるのはご愛嬌。
等身大のギロのスーツは巨大化後に比べて角が短く、赤いエプロンを巻いている。
ダンは「怪獣を地球に置く事は許されない」と言っているが、厳密にはギロが宇宙怪獣だからと思われ、前作や前々作では倒されも宇宙に連れ出されもせず最後まで地球で生存した怪獣もいる(ウーは出自からして「生きている」と言っていいかは微妙だが…)。
ギロが本当に優しい怪獣だったのかは不明だが、後の再編集ビデオや雑誌などでは「トオルに催眠術をかけてボディーガードの様に扱った」だの「ギロ星を追放された流れ者」だの「宇宙犯罪者」だのとまるでダンの推測が正しかったかのような記述が多い。トオルも「攻撃したのはMACの方が先だった」と言ったが、最初の場面をよく見てみるとゲンはトオルが怪獣と一緒にいるので追いかけただけなのにギロの方が先に攻撃しているし、2度目の戦いでもいきなり巨大化して現れており破壊活動を働こうとしたらMACがすぐ駆けつけたように見える。そもそもダンはただの防衛チームの隊長ではなくウルトラセブンであり、彼は善良な怪獣がいる事を熟知している筈なので、悲しきかなこの話はギロは本来悪者だったと解釈した方がしっくりくる話だったりする。
尚、次作ではギロ星人が登場するが、彼らがギロ星獣と同郷かは不明。
劇中、ギロとの戦闘シーンで2回もOPテーマが流れている。
トオルの夢の中で、ギロと遊ぶシーンのバックは『ウルトラセブン』のOPバックの流用。BGMは前作『ウルトラマンタロウ』第39話で使われたものと同じくモンパルナスからの流用しており、『仮面ライダーX』でも流用されている。
トオルが「僕はもうMACなんかいらない」と言っていたが、後に第40話で本当にその通りになってしまった。
レオとギロが戦ったのは朝だったのに、何故か最後のシーンは夕焼けになっていた。