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概要編集

2022年12月2日発売。原作:三条陸(当作品の監修)、漫画:稲田浩司、小説:山本カズヨシによるダイの大冒険の小説。

アバンの使徒ことダイポップマァムヒュンケルレオナそれぞれの知られざる物語が描かれる。

なお、表紙と口絵はあるが挿絵はなし。作画担当は稲田浩司なので“今の作画”でのアバンの使徒たちが描かれている。


あらすじ編集

結末まで描かれているためネタバレ注意。また、ダイの大冒険本編後の話ではなく、魔界編の繋ぎではないので期待していた読者は要注意。

魔王軍の雑魚モンスターや大魔王バーンの言う「最低な人間達」(下衆の金字塔でもあるザボエラ並に汚い)が敵として多く登場するのが、この作品の特徴でもある。












第1章 ダイの弟子

ダイを主人公とした物語。

第一話では主人公として登場。氷炎魔団からパプニカを取り戻し、マァムと別れた後の物語となる。


剣技は身に付いたが魔法力が上がっていないことからマトリフに師事を希望するが、命じられたのは瞑想のみだった(魔法はポップが勝手に覚えてくれると言われたが、ダイは納得していなかった)。

そんなダイの前に、同じ年頃の少年が弟子入りを志願して来る。少年の名はトランと言った。

初めは先生役なんて無理だと断るダイだが、一週間だけで構わないと食い下がられ、その熱意にかつての自分を見たことで引き受けてしまう。


勇者と言ってもダイ自身は12歳の子供。子供に子供を鍛えるなんてできるわけがなく。

あろうことかダイはただの一般市民の少年にスペシャルハードコースを再現するという無茶ぶりをしてしまうのであった。

当然こんなやり方で強くなれるはずがなく、自分のやり方が間違っているのではと思い始める。ポップに相談しても「ダイみたいなのがゴロゴロ居たら魔王軍にとっくに勝ててる」「気が済むまで付き合ってやれば満足する」と気のない返事が返って来るのみ。

それも一つの方法だと思いながらもダイは、トランの熱意を考えると誠実さに欠けるとして気が進まないのだった。


ある日、ダイは「俺を鍛えるのはアバン先生じゃないとダメだった。でも俺は、トランのアバン先生にはなれない」と修行の取りやめを宣言してしまう。

動揺したトランは「一週間以内に強くならないといけない」と口走り、詳細について訊くとなぜか逃げ出してしまった。


話を聞いたポップは「難病のせいで一週間しか生きられなくて、強くなった姿を親に見せたかったのかもしれない」と極端な推理をし、真に受けたダイはエイミの協力でトランの住所を調べ始める。

トランはパプニカの街にある食堂の一人息子であった。早速話を聞くとグーンという中年がチンピラを連れて借金(15000G)の督促にやって来ているのだという。借金は亡き父リタンスが残したものだった。


魔王軍に襲われる前のパプニカにて、グーンは向かいの食堂の経営者兼シェフだった。商売敵であるトランの食堂を排他するために酷い噂を流して閉店に追い込もうとしたが、激怒したリタンスにぶん殴られて謝罪させられる。

結果、悪評が広まったことで逆にグーンの店が潰れてしまった。


ところがある日、グーンはリタンスに金を貸していたとして証文を錦の御旗に現れ、トランの母ミーヤに暴言や暴力を浴びせ始めた。トランは母親を救うために、そして父親が残した食堂を守るためにグーンをやっつける力が欲しかったのだ(父親は街が魔物に襲われた際にトランを庇って死亡している。今わの際の言葉が「店を守ってほしい」だった)。


トランは証文は偽物だと決め付けていたが、ダイもトランも字が読めないため判別できなかった。そこでポップに読んでもらったところ、間違いなく借金の証文だという。

それでもトランはバダックに師事して修行を続け、グーンを追い払うための力を付けようとする。ダイやポップにも手出しは無用と意地を張るが相手はチンピラ集団。下手すれば殺されるかもしれないとして見過ごすわけには行かなかった。


そして期日の時がやって来た。ダイ、ポップ、ゴメちゃん、バダックが見守る中、トランはグーンに挑む。

バダックの元でレベルアップしたトランはグーンを防戦一方に追い込む。だがしかし、それはグーンが子供と侮っていただけのこと。形勢は瞬く間に逆転し、トランは一方的に打ちのめされる。

見ていられなかったダイはグーンを殴り倒すもその間隙を突かれ、チンピラのナイフに喉元を貫かれそうになる。だが間一髪のところでバダックがチンピラを気絶させ事なきを得た。


その後、ダイたちによってグーン一味は制圧された。

ポップは正当防衛を主張してパプニカの王宮に突き出そうとするが、ダイの正体に気づいたグーンは「オレたちを一方的にぶん殴って借金をチャラにしようなんて、いくら勇者サマだからってあんまりだぜぇ」とわざとらしく泣き出す。

そう言われては返す言葉も無くなるダイだが、そこへマトリフとエイミが現れる。


マトリフは「本物の証文はパプニカ製の魔法の紙を使っている。だから燃えない」と言い、グーンの証文をメラで燃やしてしまった。

綺麗に燃えた証文の代わりに、エイミは本物の証文をマトリフに渡す。それは「リタンスこそがグーンに15000Gを貸した」という内容のものだった(正式な手続きを踏んで作られた証文なのであるべき場所に保管されていたのをエイミの権限で持ってきた)。

かくしてインチキを暴かれたグーンは戦意喪失。商売仇にすら情けを掛けた男の気持ちを踏みにじった悪党は、文書偽造の罪で衛兵たちに連行されていったのだった。


子供たちではズル賢い大人の不正を暴くことはできなかった。しかしそんなダイたちを助けたのもまた大人たちであった。

この一件でダイは自分にできないことは誰かに頼ってもいいと考えることができるようになり、マトリフが言わんとしたことを少なからず理解するのだった。


後日。剣を握ったトランはどういうわけか闘気の片鱗を見せてダイを驚かせる。パプニカ王国から新たな勇者が誕生する日は遠くないのかもしれない。


第2章 海賊船あらわる

ポップを主人公とした物語。

獣王クロコダインを打ち倒した後、ロモスから船に乗ってパプニカに向かう際の物語。ダイ大としては意外にもホラー仕立てに仕上がっている。


はるかに格上の敵だったクロコダインに立ち向かったことから少なからず自信を付け始めていたポップ。頼れる兄貴分としていいところを見せようとするが、舟に乗るなり飛び出して来た魔物に恐れをなしてマァムの後ろに隠れるという有様だった。

次はあんな醜態は晒さないと気合を入れていたところ、濃霧と共に難破船が現れる。嫌な予感に駆られながらもダイ、マァムと一緒に調査に向かう。


船内は難破船というより幽霊船そのものだった。

人の気配は感じないはずなのに甲板から梯子が降りて来たり、部屋には食事が用意されていたり、まるでポップたちを歓迎しているかのようであった。あるいは罠に誘おうとしているのか。

ポップはスープを調べようと顔を近づけるが、途端に酷い眩暈に襲われる。やはり罠だったと周囲を警戒するが、既に次の異変が起こっていた。


ダイとマァムは獣、あるいはゾンビのように凶暴化して唸り声を響かせる。その瞳は人外のモノであるかのように真紅に染まっていた。

更にはポップの偽物まで現れ、どういうわけかポップ以上に魔法を使いこなして襲い掛かって来たのだ。


分が悪いとして逃げ出したところでダイと遭遇。お互いに本物かどうか探り合った末に、ポップは間違いなくダイだと確信する。

意外にもダイは幽霊船が怖いとのことでポップの後ろに隠れてしまう。

マァムとも合流するが、そこへ偽者(凶暴化)のダイとマァムが現れポップに向かって走って来る。

ダイが交戦する中、マァムはいきなりポップを担ぎ上げると逃げ出してしまうのであった。


二人きりになるとマァムは積極的にポップに身体を寄せて来た。その振る舞いは淑やかそのもの。

不慮の事故でマァムの柔らかい部分を触ってしまっても彼女は怒らず、むしろ頬を染めて恥ずかしそうにしていた。

ダイには頼られ、マァムには異性として意識される――それは紛れもなくポップが描いた理想の立場だった。

薄々おかしいと感じていたポップだが、舞い上がって調子に乗り結論を先延ばしにする。


そしてまたもや偽者のダイ、マァム、ポップが現れる。もう先延ばしにはできないと一つの結論を見出したポップは、照明を消して暗闇を作り出す。

明かりが戻ると『ポップ』は勇敢な振る舞いでダイとマァムに声をかける。その背後に回っていたポップは、容赦なくメラゾーマで『ポップ』を燃やしてしまった。


そう、ポップは幻を見せられていたのだ。仕掛けられたのはスープを調べようとした時(メダパニかマヌーサとのこと)。

凶暴化していたように見えたダイとマァムこそが本物であり、今まで行動していたダイとマァムこそが偽物であった。むしろ凶暴化のダイとマァムはポップを助けようとしていただけであり、偽物たちがその邪魔をしていたのだ(『ポップ』も暗闇を利用してダイとマァムに近づこうとしたが、それを読んでいた本物のポップが逆襲に出たというわけである。どうやら同士討ちを狙ったとのこと)。


我に返ったポップの前で偽物たちは合体して正体を現す。それは巨大な悪霊だった。

化かした末に一行の命を奪うつもりだったがバレてしまっては仕方ないと襲い掛かって来る。

悪霊故に物理的な攻撃は無効化されてしまったが、ポップはアバンの授業で得た知識から魔法が弱点と気づいて2人に指示。3人掛かりで魔法の嵐を見舞い、見事悪霊を消滅させた。


船から出られたのはポップのおかげだと仲間たちから賞賛を受け、ポップは静かに涙する。それは嬉し涙か、それとも悔し涙か。

改めてポップは、本当に二人に頼ってもらえる男になると決意を固めるのだった。


なお、悪霊たちの正体については不明なままだったが、ダイたちの命を狙ったこと、実体を持たないゴーストタイプということから魔影軍団の刺客と思われる。

ちなみに原作では、ポップが怪物に驚かされる→軍団長たちにクロコダイン敗北が通達され招集が掛かる→ダイたちがパプニカに到着するという流れになっている。

軍団長たちが一堂に会する前にバーンから指示を受けたヒュンケルがパプニカに向かっていたので、ミストバーンにも指示がなされていたのだろう。


第3章 マホイミを習得せよ

マァムを主人公とした物語。

ロモスの山奥に住むブロキーナ老師に弟子入りしてから数日後を描いている。


本来なら数年掛かるという課題を終わらせたマァムは、早くも奥義『閃華裂光拳』の会得に取り掛かっていた。

修行には兄弟子チウが協力してくれ、その人柄を妹弟子として尊敬するようになっていた。


回復呪文のエネルギーを拳に乗せることはできるのだが、いざ拳を突き出すと不発に終わってしまう(ただの拳打になる)。このため閃華裂光拳の会得は遅々として進んでいなかった。

老師からは「おまえの優しい心を見込んで奥義を授けるが、まだ心の鎖が解き放てていない」と指摘されてしまう。


理由についてはマァムもよく理解していた。拳を構えた時、マァムはある人物たちの姿を幻視するのだ。

ヒュンケルに裏切られた末に討ち取られたハドラー。栄光に狂った末にミストバーンに利用されて消滅したフレイザード。

彼らは紛れもなく敵だし悪だが、その結末には同情を禁じ得ず、どうしても憎みきることができなかったのだ。


ある日、疲労が溜まっていたのかチウが高熱を出してしまった。これでは修行に差し支えるとして老師から休日を言い渡される。

当てもなく森の中を散歩するマァムは、4人の男たちを目にする。彼らは赤い鎧の戦士、青い鎧の戦士、武闘家、魔法使いというパーティーであった。

あろうことか彼らは無抵抗の魔物たちを一方的に襲って殺戮を行っていた。見咎めたはマァムは止めに入るが、魔物に味方するなら敵だと刃を向けられてしまう。

難なく叩きのめしたマァムは事情を聞くことに。


彼らもまた魔王軍によって故郷を襲われた被害者であり、百獣魔団の残党を狩っているのだと言った。

マァムは「魔物たちは獣王が倒れたことで戦意を失っている。だから魔物たちはもう危害を加えて来ない」と告げる。この時、彼らは納得したような態度で引き下がったのだが……。


マァムが危惧した通り、舌の根も乾かぬ内に彼らは再び殺戮を始めていた。

それもただの復讐ではなく魔物たちの体の一部を切り取り、売りつけることで金銭を得るという目的もあった。

復讐と金欲に駆られた彼らは好き勝手に暴れた後、マァムを無視して立ち去ろうとする。彼女が敵意さえ向けなければ手出しをしてこないお人好しだと見抜いての行動だった。


だがしかし、いつだって血塗られた復讐は新たな復讐者を生み出してしまうもの。

致命傷を受けた(心臓を槍で貫かれた)ごうけつぐまが怒り狂い、凄まじい力で彼らを蹂躙し始めたのだ。

マァムには死に行く命を救う手立てはない。できるのは、苦しみを与えず一瞬で楽にさせることのみ。

覚悟を決めたマァムは、ごうけつぐまに閃華裂光拳を見舞い、刹那の苦しみも与えることなく昇天させたのであった。

その戦いぶりを見た男たちは、すっかりマァムに恐れをなして逃げ出してしまった。


老師の前で閃華裂光拳を放った後、免許皆伝を言い渡される。

老師から今後はどうするのかと問われ、マァムは腕試しも兼ねてロモスの武術大会に参加する旨を伝える。するとチウも外の世界に出した方がいいとして連れて行って欲しいと頼まれる。

快諾したマァムは兄弟子と二人で老師の元を巣立つのであった。


第4章 鬼岩城へ

ヒュンケルを主人公とした物語。

クロコダインと共に、ギルドメイン山脈に秘匿された鬼岩城を偵察に向かう際の物語。

クロコダインは魔物のため普通の人間に見られると面倒なことになるということでローブをかぶっている。またクロコダインが偵察にガルーダを使わなかった理由に関しては「派手に動いて魔王軍に気づかれる」恐れを感じたから。


ヒュンケルたちは山林を歩いていると10代半ばの少女が倒れているのを発見・保護する。少女の名はティカと言った。

彼女は魔物に襲われた際に崖から落ちてしまい瞼を怪我していた。そこでヒュンケルは、薬草と一緒に包帯を巻いて手当てを行う。


このままティカを放っておくわけにもいかず、森の中にある村まで送り届けることに。

この際、ティカから名前を聞かれたがクロコダインの助言(自分たちの名前が世間にどう伝わっているかわからない)に従い「名のるほどもない旅の戦士」ということにした。


ティカは村では医者のようなことをしており、薬草を集めるために山に来たという。しかしその割には、何日も山に滞在できるような食料を持っていた。それも魔物が出るような森の中を1人で。


一行の前に魔物たちが立ちふさがるが、元軍団長の敵ではなく一蹴。すると二人が実力者だと気づいたティカは、猛毒を塗り込んだナイフをヒュンケルに突き付け脅しをかける。

その内容は、二人の内どちらかを魔物に攫わせ、尾行してアジトを突き止めるというものだった。

怒ったヒュンケルはナイフをはたき落とすとティカを置き去りにして立ち去ろうとする。だがしかし、クロコダインに諫められたため非情にはなり切れず、引き続き保護することとなった。


そこへ二人の男——壮年ソレルと少年エルダーが一行に駆け寄って来る。彼らはティカの村の者たちであり、勝手に村を抜け出した彼女を連れ戻しに来たという(ティカとの関係は不明だが、エルダーの方は兄もしくは兄貴分的な立場のようである)。

二人からお礼をしたいから是非村に来て欲しいと言われ、ティカの様子が気になっていたヒュンケルは歓待を受けることにした。


森の中の村は、魔王軍から逃げ延びた者たちが築いた集落であった。それもできたばかりのため名前すらなかった。

その日の糊口を凌ぐにも事欠く有様であり、まだ無事な国に移住しようという意見もあったが、子供や老人には厳しい道中ということで見送られていた。


これらを知ったヒュンケルは、顔を殴られたような衝撃を受ける。そして思い知る。不死騎団長として破壊と殺戮を繰り返して来たことの結果がこの村だったのだと。

ヒュンケル自身は無抵抗な者・逃げる者に対して刃を向けなかったが、侵略という行為をした以上は言い訳にもならない。


しかも村の若者たちは、スカルナイト率いる新生不死騎団の魔物たちに拉致され、奴隷としてコキ使われていた。

責任を感じたヒュンケルは、クロコダインを伴い新生不死騎団を叩き潰しに向かう。根城はわからなかったが、暗い洞窟を好むことから大体の見当は付けられていた。


そこへティカとエルダーが追い掛けて来て同行を申し出る。

ヒュンケルは「不死騎団の魔物は死霊だ。仮にその刃(毒)が触れたところで、効果はない」と伝えるが、ティカは「あるさ。だって不死騎団の団長は、人間なんだろ?」と言い放つ。

ここに至ってヒュンケルはようやく気付く。ティカがなぜ村を抜け出したのか、誰に復讐をしようとしているのか。

ティカの復讐相手の名は「ヒュンケル」。両親を殺した不死騎団の親玉であった。


ヒュンケルはすぐに自分がその仇だと明かそうとしたがクロコダインに制される。

「話してどうなる。それよりも新しい不死騎団とやらを潰し、みんなが安心して暮らせる森を取り戻してやることだ」と。


新生不死騎団は再興の第一歩として若者たちを使い、アジトの建設を行っていた。

その根城に乗り込むと大物ぶった態度でスカルナイトが現れ軍団長を名乗るが、ヒュンケルを見ると揉み手しながら「本物のヒュンケル様」と擦り寄って来た。


が、これは演技であり、ヒュンケルが人間たちの解放を命じると本性を現し「この裏切者が! 人間のくせに偉そうにしやがって。前から気に入らなかったんだ!」と襲い掛かって来る。

手始めに手下たちをけしかけようとするがクロコダインの斧の一振りで蹴散らされ、スカルナイトもまたヒュンケルの一閃であっけなく真っ二つにされたのだった。


こうして新生不死騎団は壊滅となった。が、まだ解決していない問題もあった。

ついにヒュンケルの正体を知ってしまったティカは、ナイフを構えて「殺す」と呟いたのだ。

クロコダインが庇ってくれたが、それをよしとしなかったヒュンケルは心臓を貫くように告げる。

しかし……だがしかし、ティカにはできなかった。自分を助け、守ってくれた男を殺すことなどできなかったのだ。

彼女にできたのは、その場に泣き崩れて「ちくしょう……」と嗚咽を漏らすことのみだった。


ヒュンケルは自分のようにはならなかった少女に対し「大魔王が倒れた後……もし生きていたら、また来る」と言い残し、その場を去って行った。

闘志の使徒には足踏みも後退も不要。寄り道を終えたヒュンケルは前を向き、ただひたすらに歩みを進めるのだった。


なお、ティカが見せた「男勝りで生意気で腹黒いところのある少女」「自分を心配してくれる兄(のような)存在がいる」「復讐心に囚われている」という部分は、ドラクエに登場するこのキャラとよく似ていたりする。

付け加えるとスカルナイトの「人間であるヒュンケルが気に入らない」という部分はフレイザードと似通っており、ドラクエに登場する彼女もフレイザードとの類似点があったりする(こちらは自分を虐げた者たちを黄金のガイコツ兵に変えて洗脳し、復讐のためコキ使っていた)。


森が舞台で偽の軍団長が登場するというのも劇場版がモチーフと思われる。


第5章(最終章) レオナの休日

レオナを主人公とした物語。

竜魔人バラン撃退後、世界会議のためベンガーナにやって来た時の物語。他のストーリーがシリアスなのに対し、この物語だけ全編に渡ってコメディとなっている。


馬車に乗り、気球に乗り、各国を周っていたレオナは疲労が溜まっていた。

ベンガーナ王に会いに来て客間に通されるが、王は不在のため長時間待たされてしまう。

そこへ3賢者が現れ「我々は今から用事を思い出して立ち去ります」と言われ、意図を汲んだレオナは気晴らしに抜けだし、ベンガーナの街へと繰り出す。


ぱーっと買い物でもしてストレス発散としゃれこもうとしたが、不運にもデパートはお休みだった。

街を歩いていると劇団のテントに迷い込んでしまい、ヒロイン役の女性が大怪我をして出演できないことを知る。

その美貌を見込まれたレオナはモルホン団長にスカウトされ、「オレナ」と名乗り、ヒロインとして劇に参加することに。


劇の内容は、城を抜け出した王女が同じく身分を隠した王子と恋仲になるというものであった。

レオナは生粋の王女なので、普段通りにするだけで団員たちは「素晴らしい演技だ!」と称賛の嵐。早くも実力を認められたレオナは、団長のみならず団員たちの心も掴んでいた。


しかし、そんなレオナを面白く思わない者たちもいた。その筆頭が王子役を務めるラルタンである。

ラルタンはレオナの前任者をライバルと認めていただけに、ぽっと出のレオナを認めることができなかった。自分に比肩する実力者を認めることができなかったのだ。

それどころか劇を台無しにしてでも無能の烙印を押させ、劇団から追い出してやろうと画策していた。


一方、レオナ姫がいなくなったことがベンガーナ大臣の耳に入り、城の中はちょっとした騒ぎになっていた。アキームに至っては戦車隊の名誉にかけてでもレオナ姫を探すと息巻いている有様。

そこでアポロが「ベンガーナの街は素晴らしい。レオナ姫が抜け出してしまうのも仕方ない」と上手く持ち上げ、大臣もいい気分になったことで騒動は収まった。


だが、その様子を盗み見ている者がいた。妖魔士団の一人メドーサボールである。実は妖魔士団は、ベンガーナ侵攻のために国内に潜伏していたのだ。

メドーサボールから「レオナ姫が単独で行動している」と聞いたあくましんかんは、レオナ姫を暗殺するべく一隊を率いて街へと繰り出すのであった。


一方、そんなことは露知らぬレオナは、舞台の上でしっかりとヒロインを演じていた。

ラルタンはわざと鼻毛を出すことでレオナを抱腹絶倒させ、劇を台無しにさせようとした。しかしそこは王女。吹き出すのを堪えて劇に徹するレオナだった。

以後もラルタンのくだらない嫌がらせは続いたが、逆境に燃えるレオナは上手いことやり過ごしていた。


そして劇も大詰めになった頃、団員に化けたあくましんかんたちは、劇の内容を無視してレオナに襲い掛かる(本物の団員たちを気絶させてすり替わった。騒ぎになるのはまずいとして無用な殺しはしていない)。

あくましんかんたちは、レオナ1人くらいなら容易く始末できると踏んでいたが二つの誤算があった。


一つは、レオナは護られるだけのお姫様ではないということ。もう一つは、剣の心得があるラルタンがレオナに加勢したこと。

レオナはギラで次々と妖魔士団を倒し、ラルタンも剣技を披露して次々と斬り伏せて行った。

もしもレオナだけならあくましんかんの作戦は上手く行っていただろう。レオナはギラの連射で魔法力が持たず、多勢に無勢だったのだから。

策を弄しても予定通りにはいかない。ザボエラの部下ならある意味当然と言えた。


魔物たちの死体が出たことでちょっとした騒ぎになったが、劇自体は二人の立ち回りで盛り上がったまま幕引きとなった。

だが問題はまだ残っていた。今度は劇団員たちの間で「ラルタンが魔物と手を組んでオレナを殺そうとした」という話になってしまったのだ。

ラルタンは「魔物を倒してオレナを守ったじゃないか」と弁明するが「口封じをしただけ」と相手にされず、レオナが弁護しても信じようとしない有様だった(ラルタンには3人の取り巻きがいるが、はっきり言ってそれ以外の団員から人望は皆無である。その取り巻きも心酔こそしているものの彼の小者臭い部分には首を傾げている)。


そこへアポロたちがやって来る。ベンガーナ王の帰国が早まったので迎えに来たのだ。これにより「オレナ」の正体がパプニカの王女であるとみんなにバレてしまう。

すると団長は必至でラルタンの命乞いをするが、レオナには彼をどうするつもりはなかった。


レオナはわずかな間だが普通の女の子として過ごせたことに満足しており、自分を仲間として扱ってくれた劇団に感謝をしていた。レオナはラルタンに今回の劇が楽しかったことを告げる。するとラルタンも、そっぽ向きながらだが「楽しかった」と呟いた。


こうして劇と共に「オレナ」の休日も幕を閉じ、「レオナ」は世界会議のために奔走する日々に戻るのであった。




余談編集

表紙イラストは原作者によって新規に書き下ろされており、レオナ姫のお尻とパンチラ白パンツ)に目が行くデザインとなっている。

実はレオナ姫の下着が色付きで登場するのは、旧コミックス版32巻くらいだったりする。それも色がグレー寄りで、そういう色なのか影が掛かっている表現なのか判別が難しかった。


関連タグ編集

ダイの大冒険

勇者アバンと獄炎の魔王:アバンが主役のスピンオフ作品。

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