概要
J.R.R.トールキンの小説『ホビットの冒険』に登場するオークの一人。
モリアの首領として君臨する、残忍で奸智に長けたオークで、図体が大きく、大きな頭を鉄の兜ですっぽり被っていたが、動作は敏捷で力強い戦士だった。
第三紀2790年、単身モリアの東門(大門)に入り込んできたドワーフのスロール王を殺し、彼の切断した首に己の名を烙印した。そしてスロールの従者ナルに「駄賃」として小銭袋を投げつけると、モリアは自分のものだいうことを他のドワーフ達に伝えるよう要求した。
その結果、スロールの復讐のために集結したドワーフ軍により、ドワーフとオークの戦争が始まる。霧ふり山脈のオークはモリアに追い詰められたが、最後の戦いであるナンドゥヒリオンの合戦において、アゾグは温存していた主力部隊を出撃させてドワーフを迎え撃った。戦いの中、くろがね連山のナインの挑発に応えて、自身に似た姿の護衛兵達を従えて姿をあらわし、戦いで疲労していたナインの首を折って殺すも、その最中にオーク軍が敗走、ナインの部隊と戦っていた自分の護衛兵も全滅していることに気付きモリアの東門まで逃げ戻ろうとする。そこをナインの息子でトーリンの又従兄弟であるダインに追いつかれて討ち取られ、首を刎ねられた。
アゾグの首は杭の上にさらされ、口にはかつて彼がナルに投げつけた小銭袋が突っ込まれた。
その後(142年後)、アゾグの息子のボルグは霧ふり山脈のオーク軍の総大将として五軍の合戦に参戦することになる(『ホビットの冒険』)。
実写版
演:マヌー・ベネット
原作ではトーリンやビルボ・バギンズによるエレボールへの遠征が行われた時には既に死亡しているが、実写3部作では生存しメインヴィランとして登場。「穢れの王(the Defiler)」の異名を持つ。肌は鉛色をしており、白い毛並みのワーグに騎乗する (ワーグではなくて、原作に登場したホワイトウルフではないかと考える人もいる)。武器はメイス。
バーリンの回想シーンにおけるナンドゥヒリオンの合戦にてスロールを殺害し、敵討ちに来たスラインも打ち負かして指ごと7つの指輪の一つを奪い、戦後も捕虜として拷問してきた。その後トーリンと戦い、左腕を斬り落とされてモリアの中へ逃げ帰る(この時トーリンは壊された盾の代わりに樫の木を使い、二つ名のトーリン・オーケンシールドの由来となった。またダインに討ち取られたことにはなっていない)。
深手を負うも生き延びたアゾグは、鉤爪の義手をして、ドル・グルドゥアを拠点とし、ネクロマンサーとして暗躍するサウロンに仕えながらも、裏の世界でトーリンに賞金を懸けて復讐の機会を窺っていた。そしてトーリン一行がエレボール遠征に向かったことを知ると、復讐を果たすため彼らを追い回した。
『竜に奪われた王国』ではビヨルンの館まで一行を追い詰めるも、主君の召集を受けドル・グルドゥアに戻ることになり、トーリンの追跡は息子のボルグに引き継がせた。その後、ドル・グルドゥアに潜入してきたガンダルフと対峙している。
『決戦のゆくえ』では、左腕の義手を刃に付替え、ドル・グルドゥアの軍勢を引き連れてエレボールとデイル(谷間の国)を攻撃。終盤、自らを囮にしてトーリンたちをからすが丘に誘い出してフィーリを殺し、その後のトーリンとの一騎打ちで致命傷を負わせるが、直後にオルクリストで心臓を貫かれ死亡した。