概要
J.R.R.トールキンの小説『ホビットの冒険』に登場するドワーフの一人。英語での発音はソーリンに近い。
邪竜スマウグに奪われた故郷と財宝を取り戻すため、12人のドワーフと1人の魔法使い、そして1人のホビットと共に旅をする。
祖父は「山の下の王」スロールで、ドワーフの王国『エレボール(はなれ山)』を治める、ドゥリン一族(長鬚族)の跡継ぎである。
ところが第三紀2770年、トーリンが12歳の時にエレボールがスマウグによって襲撃され、ドワーフ達は流浪の身となってしまった(原作ではこの時、エレボールを私用で離れていた)。
その後オークらと闘いや放浪の旅を続け、2802年からはエレド・ルイン(青の山脈)に身を寄せ生計をたてていた。そこで富を増やして行くも、トーリンはエレボールの栄光(とお宝)が忘れられず、一族を苦難へ追いやったスマウグへの怒りを絶やすことはなかった。
2941年にガンダルフと出会ったことで祖国エレボールの奪還の旅に出ることを決意。
トーリンに賛同したドワーフら(甥のフィーリ・キーリ。親族のバーリン・ドワーリン・オイン・グローイン。遠縁のドーリ・ノーリ・オーリ。モリアのビフール・ボフール・ボンブール)と旅だった。
ホビットのビルボ・バギンズを連れて行くことに反対をしていたが、ビルボが指輪を手に入れて忍びとして活躍するようになり、幾度も助けられていくうちに段々と信頼を寄せるようになる。
旅はトロルやゴブリンとの戦闘、エルフとの対立を経てエレボールに到着。
スマウグとの争いはエスガロス(湖の町)の人間たちとの軋轢を生み、最後はドワーフ・エルフ・人間・ゴブリン・オークが入り交じる「五軍の合戦」へと発展していくこととなり・・・。
性格
ドワーフらしく非常に頑固で誇り高く、恩義や恨みを決して忘れることはない。特にトーリンは王の末裔、それもドワーフでも主流のドゥリン一族ということもあり、尊大で高慢な態度をとることが多い。なかなか他人を信用しない典型的な「ガンコ爺さん」。
戦闘能力は高く、巨大なゴブリン王相手に勇猛果敢に立ち向かう一方で、歌と竪琴の演奏に秀でている。
エレボールにある祖先の財宝への執着は強く、なかでも至宝アーケン石への固執は尋常ではないものがある、皮肉にも、怨敵のドラゴンの宝物への執心と似ている(否定的な意見の方が判断材料が揃っているのだが、もしもアーケン石がシルマリルであったら、そうならない方が不自然ではあるのだが)。
- トーリン自身に限らず、ドゥリン一族は龍との因縁が非常に深く、王国を奪われて虐殺されるのは一族の伝統である(エレボールに来る以前、祖父の父と叔父の一人も別の大龍または龍の軍勢に国を滅ぼされて殺害された)。
実写版
2012-2014年公開の実写映画三部作では英国人俳優リチャード・アーミティッジが演じた。日本語吹き替えは東地宏樹が担当した。
小説では旅をしたドワーフの中では最年長だったが、映画では少し若くなった。原作ではエレボール奪還の時点で195歳(一般的なドワーフの寿命は250年程度で、300歳以上にも及ぶ者もいる)だが、映画では数字的な説明の少なさからか、かなり時系列が短縮されているように勘違いする観客もいた。
設定上は身長は149cm程度。アーミティッジが188cmのため、映画上ではかなり縮小されている。
またスランドゥイルとの確執が描かれ、エルフへの不信感が強いことが示された(実際の闇の森のエルフ族とドワーフの確執は、もっとずっと古く根深い問題である)。
初めは双斧や剣を武器としていたが、上のエルフの名剣「オルクリスト(かみつき丸)」を手に入れてからは(仕方なく)こちらを使っている。映画版では、なんとかの泉のエクセリオン御自身が奮った業物となっており、つまりはバルログスレイヤーの剣という事である。
力の指輪
映画の過去の物語を描いたドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』においては、彼の遠い先祖であるドゥリン4世が登場し、後の裂け谷の領主である若き日のエルロンドと友人だった様子が描かれている。
『ホビットの冒険』にて、エルロンドはエレボールのドワーフと交流があったことを語っており、どうやらトーリンの父の代までは付き合いがあったようである。
名前について
正確には「Thorin II」で、他にも1世や3世がいるが、一般的にトーリンといえばこの「トーリン2世」の事を指す。
また「トーリン・オーケンシールド」の二つ名を持つ。詳しくは該当記事参照。
大事なことなのでもう一度言うが、英語での発音は「ソーリン」である(もっとも、発音まで細かく設定があるトールキン作品では「英語での発音」というだけではさほど意味はないが)。
日本では瀬田貞二が「トーリン」と訳した版が最も有名で、映画もそれに倣っている(山本史郎訳は初版では「ソーリン」だったが改版後は「トリン」となった)。
名前の由来である古ノルド語『巫女の予言』での発音は「トーリン Þorinn」であり、古ノルド語のなごりが残る北欧ではトーリンで発音される。
ちなみに、トールキンが数々の設定の参考にしたとされる北欧神話において、トーリンの名前のスペルとスマウグとの関係に、雷神トールとヨルムンガルドへの類似性を指摘する声もある。