概要
このリキュールはアルコール度数が高く、低いものでも40%程度、製品によっては89%を超えるものもあり、一般には70%のものが多いとされる。
その色は、薄く緑色を帯びており、このリキュールに水を加えると含まれる非水溶成分が析出して白濁する。色と白濁の度合いは製品によって大きく異なる。
歴史
元々はスイスのヴェルト・トラ・ヴェルで作られていたニガヨモギ(キク科ヨモギ属の多年草または潅木)を原料とした薬を、医師であるピエール・オーディナーレが蒸留を応用し、独自の処方を発案、彼はその製法を1797年にアンリ・ルイ・ペルノーに売却。ペルノーが商品化した。特に、19世紀フランスの芸術家たちによって愛飲され、作品の題材とされた。
安価なアルコールだったために多数の中毒者・犯罪者を出したことでも知られる。アブサン中毒で身を滅ぼしたとされる有名人としては、詩人ヴェルレーヌや画家トゥールーズ=ロートレック、ゴッホがいる。
ニガヨモギの香味主成分ツヨン(沸点201°Cの無色の液体。メントール様の香気を持ち、水に溶けにくく有機溶剤に溶ける。 マリファナの主成分テトラヒドロカンナビノール (THC) に似た化学構造を持っている。大量摂取すると、麻酔作用、嘔吐、幻覚、錯乱、痙攣などに陥らせ、習慣性もある。ただし、ニガヨモギ生草にして数kg以上摂取しなければ、上記のような症状は出ないとされる。)の摂取過多で上記のような中毒者が出たとされるが、単なるアルコール中毒の可能性も否定できない。そのため、19世紀終わりから20世紀にかけてこのアルコールの製造、流通、販売を禁止する国もあった。ただし、自家用としての製造は行われたため、意味があったかどうかは不明である。
また、このアルコールが製造販売が禁止されたため、代替として作成されるようになったのがパスティス(マルセイユ産のスターアニス(八角)と、リコリス(甘草の一種)、フェンネル(ウイキョウ)等のハーブにより風味付けされているリキュール、40度から45度の甘い酒)である。
1981年にWHOが、ツヨン残存許容量が10ppm以下(ビター系リキュールは35ppm以下)なら承認するとしたため、製造が復活。禁止国であったスイスでも2005年3月1日に正式に解禁された。
無論、残存容量が決められるまでは国により反応が異なり、スペインなどではこのリキュールは禁止されていなかった。また、日本の場合ニガヨモギ抽出物が食品添加物(既存添加物)として使用が許可されていたため、ペルノーが一般的な流通ルートで輸入されており、国産製ではサントリーがカクテル用に一般流通させていたヘルメス・リキュール・シリーズのラインナップとしてアブサンを販売していた。実は探せば禁止前のがあるのではなかろうか。
使われ方
このリキュールはそのまま飲むこともあるが、有名な飲用法としては、角砂糖にこのリキュールをたらし、水を落として飲む方法(ドリップ)がある。
また、このリキュールはその独特の風味を生かし、カクテルの基酒(ベース)として用いられることが多い。
関連項目
あぶさん:このリキュールが名前の由来