概要
線路の間に2~3枚の歯形レール(ラックレール)を敷設し、車両の歯車と噛み合わせて急勾配を行く鉄道を指す「ラック式鉄道」のうち、1882年にスイスの科学者カール・ローマン・アプト(Carl Roman Abt)が開発し、特許を取得した方式。ラック式の中では世界的に最も広く採用されている。
2~3枚の歯車とラックレールは必ずどこかしらが噛み合っているため、安全に運行ができるメリットがある。
日本に導入されたラック式鉄道はいずれもこの方式。
このアプト式ラックレール走行用の機関車をアプト式機関車と呼ぶ。
JRの前身である国鉄でこれを採用していたのが、碓氷峠を擁する信越本線横川~軽井沢間(横軽)の旧線区間である。
同区間開通当初はアブト式と呼ばれており、近年の国の重要文化財登録理由書にも「アブト式」と書かれているという。
ただし、アプト式でもアブト式でも正解(発音は『アプト』だが表記は"Abt"のため)。
上述した信越本線の横軽旧線は、1963年の新線切り替えに合わせて廃止されており、以降日本国内では見られなかったが、1990年に開業した大井川鐡道井川線のアプトいちしろ~長島ダム間の新線区間に採用された。
この区間の勾配は最大で90‰もあるため、本務機のディーゼル機関車だけでは登坂が困難なためである。
2024年現在、同区間が日本国内唯一のアプト式鉄道となっている。
関連タグ
碓氷峠鉄道文化むら…アプト式鉄道の展示が行われている。