概要
富野由悠季氏が執筆したSF小説。1995年5月から1996年2月にかけて、ソノラマ文庫より全3巻の単行本が刊行された。ジャンルとしてはリアルロボットもの、ジュブナイルSFの枠に入る。
執筆されたのは『機動戦士Vガンダム』と『ブレンパワード』の間、富野氏が鬱病によってアニメ監督を休業していた時期であり、作風はいわゆる「黒富野」と「白富野」の過渡期にあると評されることもある。
表紙・挿絵は幡池裕行氏が手がけ、メカニックデザインは富野氏によるラフデザインを基に石垣純哉氏が担当している。
舞台となるのは、小天体群の飛来に対抗すべく国際連合が開始した「スターバスター・プロジェクト」によって宇宙開発が促進され、その過程で人型マシン「テンダーギア」が開発された21世紀の近未来。
「アベニール」なる人物ないし存在の意思によるメッセージを発しながら、宇宙から東京上空へ降下してきた謎の高性能テンダーギア「アラフマーン」。これを目撃した高校生・日向オノレと、テンダーギアで迎撃に出動したサージェイ(自衛隊の後身)のパイロット・笛吹慧中尉は、アラフマーンが生み出された背景にある陰謀と「アベニール」の正体を追って、やがて宇宙へと向かうことになる。
本作の知名度は、「宇宙世紀ガンダムシリーズの前史」と見なされる形で得られている分が強い。
作中において「ミノフスキー粒子」が軍事目的で広く使用されていることをはじめ、「フォン・ブラウン・ヴィレッジ」や「アナハイム」といった、宇宙世紀の事物の前身ととれる要素が各所に登場することが、この認識の基となっている。
ただし、現在のガンダムシリーズの公式設定ではミノフスキー粒子は宇宙世紀に入ってから実用化されていることや、登場するテンダーギアの性能に宇宙世紀におけるモビルスーツ(MS)のそれを上回る部分があるなど、そのまま宇宙世紀に繋がると想定した場合、矛盾点となる描写も多い。
宇宙世紀という時代こそ描かれないが、いわゆる「正史」の宇宙世紀とはパラレルなアナザー宇宙世紀の1つ、と言えるかもしれない。
ニュータイプの感応に近い現象も登場するが、新素粒子「インティパ」によってもたらされるそれは、発現する者にニュータイプとオールドタイプのような区分けが存在しないなど、こちらも色々と性質が異なる。
ただし、後に雑誌企画『月刊モビルマシーン』にて、コロニー公社の前身として本作由来の「スターバスター・プロジェクト」が設定に組み込まれており、宇宙世紀の「正史」においても、過去に本作と近い出来事が生じている可能性が生まれている。
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ガイア・ギア:本作に同じく、富野由悠季による宇宙世紀関連のSF小説。