「好きでなければパイロットはやれん」
「こ・・・これがガンダム。何て奴だ。こいつが完成したら・・・」
概要
時は宇宙世紀0079年、地球連邦とジオン公国の戦争の最中、MSを導入していたジオンに対抗するべく地球連邦軍は独自のMS開発計画V作戦を進めていた。
しかしテム・レイ技術大尉を中心に行われていた本作戦はザクを凌駕する性能を持ったMSを乗りこなせるパイロットが連邦軍にいなかったため遅れていた。実際RX-78のひな形MSに現地で最も優秀と言われる連邦軍兵士のパイロットを乗せた結果、ビームガンを一発撃っただけですぐに機体が倒れると言う酷い有様であった。
パイロットを育てた所では間に合いそうに無かった為、テムはある手段に出る。それは鹵獲したザクのパイロットに開発中のRX-78のテストパイロットをさせると言うものであった。
そこで起用されたのがアルガと言うジオン兵の捕虜だった。
RX-78に搭載する学習型コンピューターを完成させるためには熟練したパイロットである彼が必要である、とテムは敵に最高機密を教える事になると反対していたパオロ・カシアスを説得する。
アルガ自身は一介の軍人としてではなくモビルスーツが好きでパイロットをやっていただけらしく、ザビ家への忠誠心やスペースノイド独立への理想があるかどうかは不明。なお彼はテムの部屋にあったアムロの写真を見て「科学者面じゃなくてMS乗りって顔だ」と評していた。
テムはアルガに連邦軍の為でなく、科学者としてザクを超えるものを作りたいと語った。そして自分達でこの先ずっと名が残る永遠のMSとしてRX-78ガンダムを作り、育てようと誘うのだった。
そして数日間、アルガはガンダムを操縦してテストを行った。テムの思った通り、それはかなり順調に進んでいった。テムは彼をただの捕虜では無くエースパイロットと評した。
「強い・・・こいつは・・・ガンダムは・・・鬼神だー!!」
そして最終テストは無事にうまく終わった。ガンダムの完成を見届けたパオロは部下であるブラウンに、全てを知りすぎたアルガの抹殺を命じるが、アルガはテムの部屋から密かに拳銃を持ち出していた。
役目が終わったことを理解したアルガは、自分が育てたガンダムは今までにない宇宙最強のMSとなったが、その息子が自身の仲間であるジオンを倒すのを見届けたくないと拳銃で自殺してしまう。
やはりアルガは、パイロットであると同時にジオンの軍人であったのだった。
「さらばテム さらばガンダム 俺の息子よ」
アルガの名前は連邦軍の記録には残らなかったが、彼の功績は永遠に消える事は無いであろう。勇者ガンダムと共に。
この4か月後に連邦軍はRX-78-2ガンダムを完成させた。そして皮肉にもそのガンダムに乗ってジオン軍を蹴散らしていったのはテムの子供であるアムロ・レイであった。アルガの言っていた通りにアムロはMSパイロットになってしまったのである。アムロとガンダムの活躍もあって戦争は終結する。
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細井雄二……本作の著者。