イチキシマヒメ(刀使ノ巫女)
いちきしまひめ
「高すぎる理想など、誰も欲さぬ……」
CV:喜多村英梨
衛藤可奈美らの戦いで逃げ出した大荒魂タギツヒメから分裂した三女神の一柱。「自身の存在意義を見出すこと」を原動力とし、天下五剣の一振りである数珠丸を持つ。
口元を人間の手のような覆い(フェイスハガーのようにも見える)で隠しており、両腕を衣の下に収めて座る姿はハンニバル・レクター博士を思わせるが、別に拘束衣というわけではなく腕は普通に伸ばせる。前髪中央部に房を作って織り合わせた独特の髪型をしている。
初登場は第17話『女神たちの狂騒』。面倒な闘いを好まない気質の持ち主であり、三柱に分裂して早々に折神紫と刀剣類管理局に自身の保護を求めていた。荒魂を探知できないように処理された潜水艦で衛藤可奈美と十条姫和、此花寿々花と獅童真希らと対面。大荒魂と三女神、そして自身の由来を語った。
「復讐」のタギツヒメ、「支配」のタキリヒメという明確な目的意識を持つ二柱に対し、イチキシマヒメは知性ある荒魂たる自身の存在意義を見出そうとする部分の具現である。「荒魂はこの世界に不要な存在なのか?」と自らに問い、「人間と荒魂を一つに融合させた新たな人類、新たな種への進化」にその答えを見定める。その手段として真希ら折神親衛隊や糸見沙耶香にも投与されていたノロをアンプル化する理論・技術を紫とその派閥にもたらした。非業の死を遂げた燕結芽の名を聞いても動じず、最終的には全人類を荒魂と融合させたいと語るが、当然このような理想は人類側から見れば狂的かつ恐るべきものである。
潜水艦での対面の際、姫和の事を無言で眺めている場面があり、姫和がイチキシマヒメのような神と融合できる資質を備えた血筋である事には気づいていた模様。
その後、潜水艦がタギツヒメに組する高津雪那配下に見つかり、紫と共に銚子で脱出。鹿島神宮へ向かう。潜伏中の紫や恩田累との交流から人間に対する見方が変化しつつあり、「自身を必要としてくれる紫を助けたい」という想いを抱くように。タギツヒメに捕捉され窮地に落ちた紫を救うため、自身の「個」を捨てて姫和と同化。圧倒的な強さでタギツヒメを退けた。
とにかく後ろ向きな面倒くさがり屋で、紫曰く「慎重で臆病で自己否定的」。三女神間の争いに敗れ、誰からも必要とされずに消滅する末路を前提とした言動が多い。この性格から放送当時、ファンから「ネガティブヒメ」と呼ばれていた。
剣術の腕前は同時に分裂したタギツヒメやタキリヒメには及ばないというのが自己評価の様で、可奈美に強いのかと問われた際の返答は「そこそこ強い」。一方でタギツヒメの言動によると、本来なら三柱の間に力の差は無いらしい。基礎技量は同等でも、精神的な迷いの有無が実戦での結果を大きく左右するということだろう。
累とは気が合ったと語られており、潜水艦での潜伏中もある種の友人的関係が築けていたのかもしれない。これらからもわかるように大荒魂を構成していた三柱中、実は最も人間臭い思考・精神性の持ち主でもある。イチキシマヒメのこの性質は、大荒魂と融合した紫にとっては大きな支えとなり、二十年に渡って「折神紫」という人格が発狂も崩壊もせずに済んだのはイチキシマヒメが在ったからこそであった。紫自身からそのような経緯を告白された事が、上述の姫和との融合を決断させることになる。なお、この際の姫和との会話では口元の覆いを外しており、今際に眼帯の外れたタキリヒメ同様、人間への理解の表れを思わせる演出・所作であった。