概要
アメリカ最大のマフィア組織、スクラディオ・ファミリーの首領。偽名であり、本名は別にあるらしいがそちらは不明。ガルヴァロッソという名前も神聖ローマ皇帝フリードリヒⅠ世の渾名である『バルバロッサ』と自分の本名を掛け合わせたものではないか、と噂されている。
シチリア・マフィアに連なる血筋こそ持つものの、形態の異なる数多の組織と手を結ぶ、あるいは吸収することで国境、血筋、思想のどれとも関係なく『無貌の暴徒(フェイスレス・モブ)』として組織を巨大化させてきた人物。「神聖ローマ帝国をアメリカに再現する」と嘯き、実際に皇帝と呼ばれかねないほどの財と権力を手にしたことについて、犯罪史の研究者やFBI、テレビのコメンテーターなどが様々な理由づけを行っているが、その真の理由を知る者はそう多くはいない。
偽りの聖杯戦争においては、バズディロット・コーデリオンをマスターとして派遣する。
人物
魔術師ですらない一般人。初めて惚れた、のちに妻となる女性が(魔術回路もほとんどない素人同然ながらも)魔術師であったらしく、彼自身も妻のように魔術を使ってみたい、彼女と同じ景色を見たいと、子供のように純粋な思いを抱いていた。
本編の80年前ごろ、時計塔の魔術師に妻を殺される。それでも彼の憧れは途絶えることはなく、組織の力を手にし、魔術世界とアメリカの裏社会を渡り歩いていくこととなる。
本編時点ではスクラディオ家の本邸の最奥で、呼吸器と無数の管を身体につけた状態でベッドに横たわっている。誰が見ても『命が尽きるまで、あと数年も持つまい』という状態であり、延命措置を受けながら生き続けている。
対外的に知られている年齢は109歳であるが、実際には様々な手練手管を用いて延命し続けているため実年齢はそれ以上であり、用いている手練手管はその大半が表沙汰にはできない魔術的なものである。
彼自身が魔術師ではないため肉体と精神の保存に限界が近づいており、スクラディオ・ファミリーと協力関係にある魔術師の中にも自分ではなく他人を吸血種などの『人ならざるもの』に変じさせることのできるほどの高位の者はおらず、そういう意味でも限界が近い。
玄孫が43人いる。
能力
魔術師ではなく、戦闘に関する描写はないため戦闘能力については不明。彼について特筆すべきは、組織運営の能力である。
ガルヴァロッソは自分の組織の勢力を拡大するにあたって、国内外の広い地域において多くの魔術師を庇護している。庇護された魔術師は様々な事情を抱えており、
- 他家との縄張り争いに敗れた
- 財が追いつかずに破産した
- 異端として元居た地を追われた
- 犯罪者として表の社会から派手に追いやられ、魔術世界からも煙たがられた
- 自ら門戸を叩いた
など。スクラディオ・ファミリーは彼らのパトロンとなり金銭や土地を提供し、元々の所有者である魔術師は『表の力』で排除している。
力ある魔術師にとって多少の権力や暴力はものともしないが、暗示や魅了についての知識がある暴漢たちの襲撃、狙撃や裁判所からの招集まで完全に防げる者は限られており、不意の銃弾などは魔術刻印のみで事態を打開できる一流能力者でもなければ専用の護身礼装を纏うことで防ぐしかなく、それがなければ魔術師でも呆気なく死ぬ可能性があるためこの方法は有効に機能していた。
庇護された魔術師達のほとんどはスクラディオ・ファミリーへの忠誠心を持ち合わせていないが、ガルヴァロッソが魔術師達の成果はおろか、相手が望まないならその内容の開示すら要求しなかったことで理想的な環境を手にしており、「今の環境を失えば根源への道が遠のく」という理由から、組織を守るために持てる力を惜しみなく使っている。
最終的に政府の一部とも癒着し、聖杯戦争へ介入できるほどの力を得、組織自体も魔術協会や聖堂教会でも潰せないほどに巨大化している。
彼のいる本宅はファミリーに所属する魔術師のなかでも特に選りすぐりの魔術師たちが渾身の力を込めて作った複合魔術工房であり、35層に渡る強力な結界、内部にはいくつもの防衛機構や数多の悪霊が存在し、かつてとある魔術師の工房が建築物ごと爆破されたという例に鑑み、上空からの飛来物や地下深くからの地盤破壊にも対応できるシステムが構築されている。これを超えるものとなると魔術師達の総本山である時計塔や彷徨海、あるいは根源に近づくレベルの強大な魔術師が生涯をかけて造り上げる迷宮や魔境に倣う必要が出てくるとさえされるほどで、ガルヴァロッソのいる部屋へ到達しようにも、彼の玄孫の護衛を務める、腕利きの魔術師の案内がなければそこへ向かう廊下を認識することすら叶わない。
かつて魔眼蒐集列車のオークションに参加し、魔眼を移植している。
関連人物
偽りの聖杯戦争に派遣したマスター。数少ないスクラディオ・ファミリーに、あるいはガルヴァロッソ本人に忠誠を誓う魔術師のひとり。
スクラディオ・ファミリーの勢力拡大を懸念し、ガルヴァロッソ暗殺のために自身のサーヴァントを差し向ける。
関連タグ
ファルデウス・ディオランドがガルヴァロッソの暗殺を命じたのち、彼のバックアップを行っている『真の黒幕』から連絡が入る。内容は、次期大統領選の有力候補、財界の大物から大手マスコミの司会者、大手ロビイスト団体のリーダーに至るまで、ホワイトハウスと太いパイプのある35人が事故か病気で急死しているというものだった。
検死の結果は紛れもなく事故死や病死だが、死亡時刻と場所を地図上で繋ぎ合わせるとガルヴァロッソの本拠地から近い順に繋がっている。
実はスクラディオ・ファミリーの魔術師達の一部が、ガルヴァロッソの先が長くないことを受けて有力者たちの魂を殺し、ガルヴァロッソの人格を転写することで合衆国を裏から操り、魔術師の楽土とすることを画策していた。延命を望む魔術師達はガルヴァロッソがガルヴァロッソ自身である必要はないとしていることからバズディロットなどはこの所業に反対しており、ガルヴァロッソ本人もそれを望んでいない。
前述の要人達が暗殺されたのは、ガルヴァロッソがその最期における自らの『死』への嘆願も無関係ではない。
彼に移植された魔眼はある種の未来視であり、相性が良くなかったのか、それとも良すぎた為かたった一つの出来事―――自らの死である、玄孫に狐のぬいぐるみをプレゼントした後に、『暗闇』によって目を閉ざされる光景しか移さなかった。
彼は気配すら感じられない自らの『死』にこのままでは終われない、俺を終わらせてくれと罪滅ぼしのように己が過去を語り続けた。
そして自らの死に心が折れかけた刹那、その目を優しく覆い隠した暗闇により、安らかに息を引き取る。
「怖れることはない」
「裁く理は我に非ず、汝に非ず。ただ全てを夜に委ねよ」
「微睡みの向こう側で、安らかに目覚めるがいい」
その言葉の後、暗闇は部屋から消え失せ、どこか安堵したような表情をした老人が残されるのみとなった。