概要
おもに魔術師が持つ独立した魔術回路であり、一工程(シングルアクション、魔力を通すだけ)の魔術行使。
本来、外界からの情報を得る受動機能である眼球を、自身から外界に働きかける能動機能に変えたもの。視界内の人間に問答無用で魔術をかける代物で、標的にされた対象が魔眼を見てしまえば、効力は飛躍的に増大する。要するに見てはいけないモノ、見られるだけで相手の術中に嵌まるという恐ろしい魔術特性。その秘匿性と能力から、魔術師の間で魔眼は一流の証とされる。
通常の魔眼であれば、一部の一流の造形師が人工的に造ることも可能。もっとも、人工的な魔眼では魅惑や暗示程度の力しか持ち得ない。
強力な魔眼保持者は、決まって“生まれつき持っていたもの”に限られる。モノの死を視る志貴の魔眼、視ただけで相手を石化させる魔眼、などは魔術でも再現できない“超能力”である。
ちなみに遠野秋葉の“略奪”は魔眼の性質と酷似しているが、あれは魔眼ではなく呪詛の類。遠野志貴の眼も“直死の魔眼”と称しているが、厳密には超能力、上人が持つとされる浄眼である。
魔術回路としての機能
魔眼は独立した魔術回路であるため単体で魔力を生成可能。ただし魔眼が生み出す魔力と術式が必ずしも釣り合うとは限らず、最悪の場合は術式を勝手に発動し、宿主の魔術回路からも強制的にオドを絞り出すため制御しきれない場合は非常に危険。
逆に魔力の扱いに長けていれば、魔眼の魔術回路を宿主のそれに上乗せできる。一代限りのサブとはいえ魔術回路を上乗せできるため、美味しいものと考える魔術師も少なくない。
魔眼の色
通常の魔眼は赤や緑色に光るもの。強力なものは黄金に輝き、神域の魔眼は宝石や虹の如く多彩に偏光するとか。
ノウブルカラー
本来は魔術において先天的に持つ特殊な資質の事を指す言葉だが、主に通常よりも強力な魔眼を指すことが多い。
「束縛」「強制」「契約」「炎焼」「幻覚」「凶運」などに代表される、他者の運命そのものに介入する特権行為。レーマン家による加工魔眼は、限定的とはいえこのランクを再現している。
以下のランクが存在している。
紅玉、蒼玉
『月姫 -A piece of blue glass moon-』にて魔眼の解説をする際に登場したランク。
詳細は不明だが、恐らく「通常のノウブルカラー」とはこのランクを指すものと思われる。
黄金
通常のノウブルカラーのさらに上位であり、現代では失われた大魔術が蔵されていることも稀ではない。そのためか、一つ間違えれば封印指定ものとされる。
アルクェイド・ブリュンスタッドやネロ・カオスの持つ「魅了の魔眼」もこのランク。
宝石
実在を疑われるレベルの希少性。一派を率いる君主(ロード)ならば密やかに持ち合わせているかもしれないともされる。
第五次聖杯戦争のライダー、カラボー・フランプトン、オフェリア・ファムルソローネらの魔眼はこの位階である。
また、サーヴァントと化したアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァが使役する精霊「ヴィイ」の魔眼はバロールの系譜にあるとされ、「相手の”弱点”を視る『透視』の魔眼」となっており、最大出力では「因果律を捻じ曲げ相手に弱点を創出する」という効果で、「死」を視る直死の魔眼との類似性が有る。
ノウブルカラーとしての位階は不明だが、「宝石」の位階にあるゴルゴーンの魔眼キュベレイがA+ランクなのに対し、こちらはEXランクであるため、最低でも宝石、ともすれば虹の位階と思われる。
虹
月世界の王の証であり、所持していると明言されたのは朱い月のブリュンスタッドのみ。
直死の魔眼を虹と称するのは「視るだけで殺す」ものを意識した発言であり、空の境界で蒼崎橙子が「睨むだけで生命を死に至らしめる魔眼(ケルト神話の魔神バロールの魔眼)と大差はない」と発言したのは、絶えず位置を変える死線を確実に視てしまえることを指してのものであるが、同作には直死の魔眼のランクに関する言及はない。
これらの事から逆説的にバロールの魔眼のランクは虹にあたるのではないかとファンの間でも語られることは多いが、現時点ではバロールの魔眼のランクは明言されておらず、憶測の域を出ない状況となっている。
魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)
ありとあらゆる魔眼を蒐集してヨーロッパの森を走り続ける列車。招待状を送り、魔眼を商品とするオークションを行っている。
詳細は該当項目を参照。
対魔眼戦
魔眼は最古の魔術であるため神秘としては強大であるが、同時にいくつもの対抗策が世界中で練られている。一例としてTYPE-MOON作品内で度々登場する魔眼の効果を遮断するメガネ、「魔眼殺し」がある。
それとは別に、「視られる力」による魔眼の無効化を行う方法も存在する。これは万物には視られる力があるからこそ人はモノを見ることができるという思想であり、視る側の力が強くなればなるほど無意識のうちに誘導され、抗いがたいものとなる。魔眼殺しと比べた場合、単純な防御効果では劣るが本来意図しない情報を意識しないうちに叩きつけられるため、応用性に優れる。
トルコに実在する邪視よけのお守り「ナザール・ボンジュウ」は設定上これにあたる。
また『魔法使いの夜』にて、対魔眼戦の基本となる戦術が明らかとなった。
魔眼といえど、その根底にあるのは暗示であり、正面からの不意を突いたマインドジャックこそが最も効果的であり、抵抗されにくい。逆にいえば魔眼の範囲に入っていようと、正面にさえいなければ効果は半減する。また、
- はじめから相手の視界に入らない(気付かれる前に倒す)
- 魔眼を受ける対象が視界に収まりきらないサイズである
という上記2つが魔眼に対する対応策となる。前者が最善手であり、後者は魔眼が視界、焦点に収めた対象に呪いを行う魔術であるがゆえの「策というよりどうしようもない現実」である。
実際、久遠寺有珠は蒼崎橙子の魔眼を、プロイキッシャー「橋の巨人(テムズトロル)」によって突破している。
余談
魔眼と称されてはいるが、厳密には魔眼ではないもの、魔眼なのかも疑わしいものも少なからず存在する。
臨死体験によって浄眼が変質したものであり、脳が"死"を理解し捉えて初めて機能するものなので、定義上魔眼には当てはまらない。
- 浅上藤乃の「歪曲」
『Fate/Grand Order』では「歪曲の魔眼」表記だが、『空の境界』本編中では一貫して「歪曲」表記であり、扱いも超能力である。
右目と左目でそれぞれ別の回転軸を有しており、直死の魔眼で視ると赤と緑の螺旋に見える。
透視と千里眼も併発しているため、遮蔽物も無意味、視点を引いて遠景から全体を捉えて巨大な構造物すら一撃で歪曲して見せる。
空間そのものを捻るため対象の物理的強度も完全に無視する強力な能力。
単純な”力比べ”なら空の境界の作中で最強と明言されており、後にFGOでサーヴァント化してからも元気に橋ごと相手を捩じ切っている。
『未来福音』の中では蒼崎橙子によって「安全の名のもとに消え去った“人間が本来持ち得た機能”の一つ」と説明され、脳の機能であるとされる。
一方、『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』では「魔術的な見方だと眼球がある種の魔術回路として働いて」記憶、演算を行うとされており、術式投射を行うか否かで感受型の未来視や過去視は除く場合もあると記述されている。
類似例でいうと、アトラス院の錬金術師は人体を演算装置として運用することに特化しているため、分割思考による高速処理で擬似的に未来の予測を行うことが可能。
- 「本物の未来視」
『未来福音』に登場する占い師、「観布子の母」が持つ、予測(認識している範囲の情報を高速処理して「起こり得る可能性を予測」する、ごく小規模のラプラスの悪魔)でも測定(起こした行動から起きうる未来を測定して事象を望む方向に誘導していく)でもなく、予言(必ず起こること)として未来を視る能力。
聖人レベルの異能であり、人の身に余る能力であるが、彼女は『人の役に立てる以外に使い道なんてない』と割り切っているためか、同じく強大すぎる魔眼に振り回され続けたカラボーやオフェリアほどの事態には陥っていない。
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