概要
『アイルランド来寇の書』『レンスターの書』等によると、キリスト教化以前のミレー族(アイルランド人の祖先)によって崇拝されていた。
その儀式には人身御供が含まれていたという。
『レンスターの書』によると、牛乳と穀物を得るために、家畜の初子が捧げられたという。
この書と『三部作パトリック伝』によると、マグ・シュレーフトという場所にこの神の像があった。
両書によると、クロム・クルアハ像は金と銀で覆われ、周囲を赤銅の12の偶像が取り囲んでいた。
『三部作パトリック伝』によるとアイルランドにキリスト教を伝えた聖人パトリキウス(パトリック)によってこの像は破壊された。
この聖人伝ではクロム・クルアハは悪霊(デーモン)としても登場し、パトリックによって地獄に叩き込まれる。さらに後世、グラスゴーのジョスリンによって書かれた聖パトリック伝では「Cenncroithi」の表記で登場し、「全ての神々のかしら」と呼ばれている。
ケルト神話の神であるが、ケルヌンノス同様、名前と「こういう信仰があった」という記録や痕跡のみが残り、神話中でどのようなエピソードを持っていたかは不明である。
姿
日本では「クロウ・クルワッハ」という表記でも知られ、しばしば羊角、羊頭の蛇もしくは竜として描写される。
これは現在たどれる古い記録には見られないが、1905年の書籍でクロム・クルアハを「ワーム」と記述した例は確認できる。
ケルト系の美術において「羊頭の蛇」のモチーフはよく出てくるが、これをクロム・クルアハと同定できる根拠は現状発見されていない。
神徳
残された記録、痕跡からこの神の性質、属性についての考察がされている。
金銀のクロム・クルアハ像の周囲の12の像は、黄道十二宮を指しており、その中心たる彼は太陽神とも考えられている。
この神に求められた恩寵と生贄は、彼が豊穣に関係する神であることを暗示しているとも。