概要
カナダのケベック州で用いられる言語であり、同州の事実上の公用語である。
フランス語から派生した方言であり、行政手続き上はフランス語として扱われているが、フランス本土の標準フランス語とはマレー語とインドネシア語程度の差異が存在する。
標準フランス語では失われた古風な表現の多用と、土地柄ゆえに英語からの借用語を多用することが特徴で、日本人には標準フランス語よりも習得しやすいと言われている。
ケベック州の唯一の公用語はフランス語であり、永住権の取得にもフランス語能力が必須とされるが、同州におけるこの「フランス語」とは、実態は標準フランス語ではなくこのケベック語である。行政による移住者向けの無料フランス語教育プログラムでも、ケベック語が教えられている。
名称
カナダフレンチ、フランス語カナダ方言、同ケベック方言、ケベコワなど、さまざまな呼称が存在する。定義はそれぞれやや異なるものの、実態としてこれらはいずれも同一のケベック語を意味する。
なお、単にカナダ弁、カナダ方言などと呼称した場合は一般にカナダ英語のことを指す。
フランス語との関係
フランス語は標準語に対するこだわりが強い言語として知られ、オック語やアルピタン語などの方言を「フランス語という美しい言語の操を汚すもの」として強固に迫害・矯正してきた歴史がある。この影響はベルギーやスイスなどにも少なからず影響を及ぼしており、ワロン語やスイス・フランス語などのこれらの国での仏語方言もまた話者の高齢化が進行している。
しかしながら、ケベック語はフランス本土と地理的に隔絶していることや、標準フランス語との差異がフランス国内の方言ほどには大きくなく、相互に意思疎通を行うこともなんら困難ではない事情もあり、前述のように標準フランス語のふりをして、フランス語の名を騙って堂々と公的な地位に居座り続けている稀有な方言である。