概要
戦後の新左翼が労働運動や学生運動などで使用した独特の書体。ゲバ字、トロ字、「全学連文字」とも呼ばれる。 由来はドイツ語の「Gewalt(暴力)」+「文字」から。
大きな立看板や横断幕、旗などを手書きで製作する為に極力直線基調で、細かい部分が省略されたり(略字)、中国語の簡体字を引用したり、音が同じで画数が少ない字に入れ替えられたり、目立つように改変がなされているため独特な雰囲気を醸し出す。
発祥
発祥は、ビラを作成する際に使うガリ版で鉄筆を使って製版する際に細かい文字が潰れる事を防ぐ為であったり、ビラの製作者の筆跡を判別させ辛くして、敵対組織や官憲の捜査の手を逃れるためだったとされる。
しかしながら、看板やビラの製作は同じ組織の人間が代々受継ぐものである為、組織毎に「微妙な書体の違い」が出来上がった。
基本的なルールは、「文字の細かい部分は簡略化する」「線と線の間を広く取る」「多少意味が通り辛くても簡略化や視認性を優先する」「(印刷や看板製作の際に)潰れてもディティールが判り易いように角を強調しバランスを変える」等である。
主な改変例
※簡体字は環境によっては正しく表示されない場合がある。
該当する漢字が無い物は「漢字+漢字」「漢字+片仮名」で表記してある。
- 略字を用いる場合
一部を省略したり、シルエットが似た書き方にしてしまうもの。
「労 働」→「労 仂」 「第 一 回 大 会」→「㐧 一 回 大 会」
「職 員」→「耳云 員」
- 略字を用いる場合(2)
一般的に用いられる略字の外に、部首をそのままに一部を音読みの仮名に変えたもの。
「増 務」→「増 矛厶」 「阻 止」→「阝ソ 止」
「会 議」→「会 言ギ」 「 機 械 」→「木キ 木戎」
※異字や略字は、昭和期までは左派活動家以外でも一般的に使用されていた点は留意する必要がある。
しかしながら、明らかに普通の人は使わない略字もある。
- 簡体字を引用する場合
「ス ト 権 ス ト」→「 ス ト 权 ス ト 」
「戦 争 反 対」→「战 争 反 対」
- 音が同じで画数が少ない文字に入れ替える場合
「闘 争」→「斗 争」 「万 歳」→「万 才」
似た改変は、高い視認性が求められる高速道路の看板などにも見られた。
こちらは、看板毎に文字のデザインが調整された職人技が光る逸品だったが、現在製造されているものは市販のフォントが使われている。