コケカキイキイ
こけかきいきい
昭和初期辺りの紙芝居で、堅い、当たる、と呼ばれた伝説の鉄板ネタ。
但し、「タイトルが「コケカキイキイ」」「怪奇もの」であると言われるのみで、実際にどういう作品かは1940年代の段階ですでに不明となっていたようである。そのために、おびただしい「コケカキイキイ」というタイトルの怪奇もの紙芝居があったともいう。
はっきりと存在が確認できる作品としては『悲劇コケカキイキイ』があげられる。
これは関西地方で流通していた紙芝居で、怪童が活躍するというその内容は、1933年から1935年頃に人気を博した伊藤正美の紙芝居、『墓場奇太郎(ハカバキタロー)』にヒントを得たものとされている。
長らく現物がほとんど確認できない幻の作品となっていたが、2008年に京都国際マンガミュージアムで開催された「紙芝居百年展」に一部が出展された。
紙芝居作家出身の水木しげるは、1970年に「週刊漫画サンデー」で、妖怪とも神ともつかない存在が活躍する「コケカキイキイ」を発表した。
あらすじ
福祉制度も受けられず死期の迫った老婆、捨てられた赤子、公害で弱り、飼い主に捨てられた老猫、その猫に取り付いていたが、まもなく宿主とともに死ぬ運命のシラミ。これら四生物がある村の廃屋で同時に死を迎えるとき、彼らの「死にたくない、生きていたい」という思いから「コケカキイキイ」と鳴く怪物が誕生した。
コケカキイキイは東京へ向かうと、警察や自衛隊をものともせず、まるで彼を生み出したものたちの怨念を晴らすかのような活躍を見せる。
コケカキイキイは、自分ひとりが贅沢な暮らしをする金持ちや、生命の尊さを省みることなく快楽にふける男女を容赦なく襲う。その一方で富を分配し、孤児や病人に住居や施設を開放し、最後には公害で汚れた東京に豊かな緑を取り戻して、自分の生まれた廃屋へと帰っていった。
コケカキイキイは「私は庶民の不満を食べる新生物です」と自らを語り、いずれ再び庶民の不満が高まるとき、また動き出すことを予言している。
その言葉通り、その後コケカキイキイは6本の外伝でも、庶民のためにその不思議な能力を発揮して見せた。
……と述べるとなんだか非常に高潔な正義の味方のようだが、そこはやっぱり水木御大。
外伝1の「黒神出現」では、金のないマジメな青年のために赤線を復活させろと仰せになったりするコケカ様であった。