「ネロ!わしを許すと言ってくれ!(号泣)」
概要
ヒロイン・アロアの父親で、主人公・ネロ・ダースが関わる村の大人達の一人。アニメではファーストネームは呼ばれなかったがフルネームはバース・コゼツ。
人物
ネロ達が住む村の土地の大半を所有する大地主にして事業家でもある大富豪。
貧困だった家庭に生まれながらも、苦学して財産を築き上げて現在の大富豪の事業家になった経緯を持つ。
しかし、「努力家」ではあったものの「人格者」では無く、所謂「成金」であったが為に、現在は貧しかった頃の自分について顧み無い所か、むしろかつての自分と同じく貧しい身分の人間を見下し差別意識を向ける様になっている。
あまつさえは「苦労の末に富豪となった自分の考えは常に正しく、そうで無い者は皆怠け者で駄目な奴」とまで思い上がっている節さえも見せる等、権力を振りかざす傲慢な人物に成り果てており、それに反して自身の脇は甘く、善悪の判断基準までもが鈍っている。
一方、ネロを卑下する発言に反論したノエル爺さんには頭が上がらない。
娘のアロアを溺愛する一方で、お転婆な性格を厳しく躾ける等、けじめのある教育は施していた。
しかし一方で、まだ子供である彼女に対し自分に都合の良い価値観を強要する傾向が強く、特にネロとの交友関係に関しては、自分が貧乏であった事を棚に上げ、アロアがネロと仲良くしているのを見つけては、溺愛しているが故の「幼稚心」や、自分という金持ちの娘と貧乏の息子が一緒になって世間体が傷つくのを恐れて、強引な手段をもってしても引き離そうとしている等、大人げない行動が目立っている。
ネロに対しては、まだ彼がまともに金を稼げない子供であるにも拘らず、娘のアロアとの関係もあって蛇蝎の如く嫌っており、「働かない怠け者」「絵描きなんて馬鹿げた夢を見ている」等と偏見を向けては過度にきつく当たる。
そんなネロの人柄に対しては、彼が働き者である事を知らないばかりか、むしろ知ろうともせず、都合の悪い事に関しては無視さえもする等、人間としての器の小ささが目立っていた。
ただ、ネロの絵のセンスの良さは高く買っており、アロアの肖像画を金貨20フラン(※)で買い取ろうとした事も有ったが、ネロが無料で差し上げる、と言ってしまったので、絵を描く能力は有っても職業として自営する能力が無いと見做してしまった可能性も高い。
此処でコゼツが自営する為の心得や顧客・パトロンの重要性をしっかりネロに教育出来ていれば両者の関係も悪くならなかったと思われるが、コゼツが早々に諦めてネロは職業人として大成できないとのレッテルを貼ってしまったのが明暗を分ける結果となってしまった。
その結果、息子のアンドレとアロアを将来一緒にさせようという下心を抱いていたハンスの付け入れる隙を与えてしまい、物語の後半期においては娘のアロアを出汁にする形で手綱を握られてしてしまった挙句、悪知恵に乗せられて彼の主張を後先考えず鵜呑みにしてしまう賢明愚昧な輩にまで成り下がってしまう事になった。
※19世紀の20フラン金貨は概ね、「核家族を抱えた一般的な成人男性労働者の基本月俸」ぐらいの想定で製造されている。田舎村の金持ちレベルのコゼツが好い加減な気持ちで出せる金額では無く、それだけネロの絵のセンスを高く評価したと言う事でもあるし、苦学生だったコゼツとしては『男ならこの好機を活用して奮起して見せろ』と発破をかけた心算だったとも見做せる。
最終的にネロの人柄を身をもって思い知らされて彼に謝罪と償いをしようとするも手遅れとなり、この事から、視聴者からは嫌われているキャラクターでもあるが、「コゼツを唆したハンスが一番悪い」、「コゼツは改心した」などの意見もあり、賛否両論きっぱりと分かれるキャラクターでもある。
一方、オリジナルの原作小説ではハンスのような商業使用人が登場しない上に事業家ではなく粉屋であり、風車小屋の火事も「アロアを引き離した報復」だと自分の一方的な思い込みで犯人をネロだと決めつけている。どちらにしても褒められた人間ではないが、原作の方が遥かに悪人である。
一つ確かなのは、「どれだけ苦労を重ねて富豪にまで上り詰めても『品性』を買う事までは決して出来無い」という事で、自分の価値観のみを絶対とし、他者はおろか実の娘の考えにさえ理解を示さず、権力を駆使してまで物事を自分に都合の良い方向へ捻じ曲げてしまうその「下劣な品性」こそがコゼツに取り返しのつかない過ちを犯させる事になったのだろう。
来歴
貧困だった家庭に生まれながらも、苦学して財産を築き上げて現在の大富豪の事業家になり、それを前後して商業使用人にハンスを雇い、妻・エリーナと結婚し、娘・アロアを設ける。
その後、成長したアロアが貧しい家柄の出身であるネロと仲良くなるのを快く思わず、何かと彼に対しキツい態度をぶつけては、娘によって彼が庇われる事になっている。
これに我慢がならなかったのか、後に娘を行儀見習いとしてアロアをイギリスへ留学させるのだが、まだ子供である彼女を一人だけいきなり未踏の地へと生かせるというある種の無責任な行いの結果、アロアは心を病んで戻ってきてしまう。
この頃より、娘との関係は半ば破綻したも同然となっていく。
後に風車小屋に火事が起こったのを機に、ハンスの「ネロの仕業」という言葉に乗せられた事もあって彼に対する怒りを爆発させた結果、ネロを村八分に追いやってしまう。
一番目障りな存在であったネロを追い出して清々している日々を送る中、自分のミスで事業資金として銀行から借り受けた2000フランを紛失してしまい、コゼツ家は貧乏の危機に陥っていたが、自身の留守中にアロアから2000フランを差し出しされた。
それを届けたのは、自身が辛く当たった挙句、風車小屋の犯人と決めつけて村八分に追いやったネロであったことをアロアから聞かされると、ネロの人柄および自身が今までネロにしてきた仕打ちとその罪の重さを思い知らされる。
それを前後して、風車小屋職人の老人・ノエルがコゼツ家を訪れる。ノエルはコゼツおよびハンスに対して風車小屋の火事の原因を聞かせる。それは、風車の軸に注油や掃除を怠ったためにそのまま使い続け、軸に溜まった埃が摩擦の熱で引火し、それが粉に燃え移ったというのが真実であった。
これを聞かされ、結果的に自分たちの罪をネロに擦り付けてしまったことに失意を抱き、ハンスの「ネロがやった」発言に対して、半ば八つ当たりも同然で彼に殴りかかろうとするもアロアに止められる。今までのネロへの仕打ちの贖罪として彼を養子として迎え入れ、なんでも学ばせるつもりだと決意。
そしてネロが居なくなったダース家を訪れるも、ネロのハンスに宛てた書置きに「コンテストで落選して賞金を得られなかった」「代わりに家財道具を家賃代わりに持って行ってください」という内容を読み、それを前後してコンテストの審査員でネロの理解者でもあったヘンドリック・レイが現れる。彼から「ネロはルーベンスを継げるほどの画家になる逸材」と言われ、みんなでネロを探し出し始める。
そして猛吹雪の中、ネロに対する謝罪の言葉を叫ぶも、ネロはすでに天に召されて母や祖父・ジェハンのもとに旅立っていった。
こうしてコゼツは、生涯償い切れない罪と深い深い後悔の念を背負っていく運命となった。
関連タグ
ゼーゼマン:前年の世界名作劇場であるアルプスの少女ハイジに登場した、主人公のお金持ちの親友の父親。躾が厳しいながらも娘に愛情を注いでるという点では同じだが、一方で山育ちのハイジにも偏見なく接することができ彼女がホームシックを患った原因を突き止め故郷に返してあげたり、その際に娘が山に一緒に療養することを承諾するなど温厚で思慮の行き届いた人格者であった。