概要
名前の由来は車両の前後に取り付けられている竹製のブラシであるささらで、それを束ねたものを回転させて除雪する。
札幌市電での正式名称は「ロータリーブルーム式電動除雪車」という。
その構造は開発当初からほとんど変わっておらず、一時期ササラの代わりにワイヤーブラシやナイロン製の箒を使用したこともあったそうだが、十分な除雪効果と、アスファルトを傷つけにくい観点から現在でも竹製のササラが使われている。
車内には前後に取り付けたササラを駆動する専用のモーターが積まれており、進行方向の左側に雪を掃き除ける為に回転軸がやや左に傾けられている。
確実に雪を掃く為に、車体には死重も載せられている。
ササラ電車一覧
札幌市電
札幌では、ササラ電車の準備が例年10月の中旬に行われ、11月~12月にかけて初出動しニュースにもなり冬の訪れを知らせる風物詩となっている。なお、2015年に開業したループ区間(西4丁目~狸小路~すすきの)では、歩道側に線路を敷いた関係でササラ電車を使用することができない(歩道に雪を飛ばすことになる)ため、ロードヒーティングで対応している。
・雪1形
ササラ電車を代表する形式。2軸型の電動客車を改造して誕生した車両。2024年現在は車体を鋼体化された4両のうち、最後の1両が現役。ゼブラ模様の車体が目立つ。
また、鋼体化されなかった1両が札幌市交通資料館に保存されている。
・雪10形
平成11年に上記雪1形雪4号を改造して1両が登場した新型ササラ電車。(サムネの車両)
それまでチェーン駆動だったブルームが油圧式になっており、また、凍結した路面を砕くための装置も搭載している。
・雪20形
2019年に20年ぶりに1両が新製されたササラ電車。
ブルームの駆動方式が永久磁石式モーターを使用した電動式となり、より排雪能力が強化された。本形式によって老朽化した雪1形を順次置き換えている。
・DSB1形
かつて存在した非電化区間用のササラ電車ならぬ「ササラ気動車」。「DSB」とは「ディーゼル・スノー・ブルーム」の略。
気動車であることを生かして、変電所に余裕のないラッシュ時には電化区間でも用いられた。
現在は1両が札幌市交通資料館に保存されている。
函館市電
・排形電車
札幌と同じくかつて旅客車として使用していた車両を改造した車両。全部で6両が改造されたが、2024年現在は排3号・排4号の2両が在籍。
この6両は1号、2号、3号-6号で種車が次のように異なる。
- 1号
西鉄福岡市内線の元となった福博電車(当時は九州水力電気)から譲受した29号。この車両のみ車体上部のモニター屋根の形状が特徴的だった。
- 2号
現在の千葉交通の元となった事業者のひとつである成宗電気軌道から譲受した39号。ササラ電車退役後の1992年に市民団体の提言がきっかけで観光用の箱館ハイカラ號へ再改造され、1993年より再度営業運転を行っている。
- 3号-6号
東京都電の前身にあたる、東京市電のヨヘロ形を譲受した242号-245号。
暖冬が多く積雪が少なくなった現在では、除雪トラックによって代替されるようになり、降雪量が多いときにのみ運転されていたが、最近では出番が増えている。
特に2017~2018年の冬は函館で記録的な豪雪だったため、現体制で過去最大の出動回数となったが、それでも除雪が追い付かず、運休になったこともある。
また、2003年と2007年には愛好家による貸切運転も行われている。
1997年に廃車となった1号と6号は、アメリカ・メイン州に所在するシーショア路面電車博物館へ寄贈され、部品取り車として台車や電装品がほかの電車の復元用に使用されたという。
2011年には江戸東京博物館で開催された東京都交通局の創業100周年記念の企画展のため、4号が都電6000形とともに同館で展示されたことがある。これは先述のとおり、同車が東京市電時代に使用されていた車両であるため、企画展での展示が決まったものである。
そのほか、旭川電気軌道にも存在していた。