事故概要
発生日時 | 1999年10月25日 |
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発生場所 | アメリカ サウスダコタ州 |
機材 | リアジェット35 |
乗員 | 2名 |
乗客 | 4名 |
犠牲者 | 6名(すなわち全滅) |
暴走し始めたチャーター機
4か月前に全米オープンを制したプロゴルファーのペイン・スチュアートは、ダラスでおこなわれるPGAツアー選手権に参加するためにフロリダ州オーランドからサンジェット航空の飛行機であるリアジェット35をチャーターしスタッフとともに乗り込んだ。彼らを乗せたリアジェット35は程なくして9時19分に離陸する。
離陸直後は順調に飛行していたが、当機は9時半過ぎになされた管制引継ぎの為の周波数の打ち合わせに対しての応答がなく、さらにはフライトプランの39000フィートを超えてもさらに高度を上げていく。そして管制官や他機の呼びかけにも反応はなく、本来の航路で進路変更する予定だったクロスシティでも直進を続ける。ここに至り、機内で何らかの異常事態が発生したと推定された。
トラブル発覚から墜落まで
管制官から緊急事態発生を伝達された空軍は、当該機を監視するために交代態勢でF-16を派遣。トラブルと墜落への対処を行う。またNTSBも原因究明のために動き出す。
リアジェットはフゴイド運動を繰り返しながらアメリカ東部の上空を真直ぐ飛行し続ける。腕の許す限りに接近したパイロットの報告は、「機体の損傷は見られないが、コクピット部分をはじめとした窓は白く曇っていて中が見えない。動く気配も感じられない。」というものだった。一部のパイロットは、リアジェットの操縦士が生きているかを確認するために乱気流を発生させて当機を揺らしてみたが、自動操縦装置で制御された飛行機はただ直進するだけで、内部からの応答は一切返ってこなかった。
やがて燃料を使い果たした当機は13時10分にバランスを崩し、最後に追跡を担当した空軍パイロットの目の前で右に傾きながら降下を始める。そして、サウスダコタ州エドマンズ群の牧草地に墜落した。墜落現場には長さ42フィート(13メートル)、幅21フィート(6.4メートル)、深さ8フィート(2.4メートル)のクレーターが残り、機体は搭乗者ごと粉々になってしまった。
墜落地点が都会や住宅地ではなく人のいない場所であったのがせめてもの慰めであった。だが、全米ゴルフ界の名ベテランの訃報に、ゴルフ関係者だけでなくファンも嘆き悲しんだ。
原因と対策
上空10000メートル以上から急角度で音速を超えて落下したことから、かなりの量の証拠が粉々になってしまっていた。
なんとか回収できたコクピットボイスレコーダーを解析すると、高度警報などの機械音はともかく、人の声が全く録音されていなかった。このことから、当機の与圧を制御する装置が機能せずに減圧に見舞われたこと、それにより、搭乗者全員が酸素欠乏症になり意識を奪われ、そのまま命を落としたことが判明する。だが、あまりに証拠が少なすぎた為、減圧の原因は特定できなかった。
しかし、たとえ減圧が起きても、飛行機に備え付けられた酸素マスクを使用すれば酸欠に対応でき、そうすればトラブルに対処できるはずである。こう思いながら調査官がチェックリストに目を通すと、そこには目を疑うようなことが記されていた。なんと「減圧原因を一通り分析してから酸素マスクを着けろ」と記されており、酸素の確保を後回しにして原因を調べろという本末転倒な代物だったのだ。
このリストに従い酸素マスクを着けずにトラブルに対処していると、あっと言う間に酸素欠乏症に陥り、思考力の低下を招き意識を失って最後には死に至る。
それを知った調査官や酸欠の専門家は呆れ憤ってしまった。
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