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90分で3000人-喰って、喰って、喰いまくれ!


概要編集

ザ・グリード』(原題:Deep rising)は1998年に公開されたアメリカのB級モンスターパニックホラー映画。監督・脚本は、『ハムナプトラ』シリーズや『ヴァン・ヘルシング』など、CGを駆使した数々のモンスターストーリーを手がけたスティーブン・ソマーズ


製作費は当時のレートで約50億とB級映画の中ではかなりの高額。それに対し、北米での興行収入は約三分の一ほどだったという。しかしその後、日本では各テレビ局により幾度の放送をされ、次々と迫ってくる息継ぎの間もない怒涛の展開などが評価され、今ではB級ホラー映画の隠れた名作とまで認識されている。


ストーリー編集

3000人を乗せた豪華客船アルゴノーティカ号は南シナ海を航海中、船内のシステム制御室に侵入した“何者か”の手により突如航行不能に陥ってしまう。その直後、船は海中より現れた謎の巨大未確認生物に襲われ、大勢の乗客と乗組員は瞬く間に船内からその痕跡を消した。


同じ頃、密輸業者のジョン・フィネガンら一行の乗った密輸船サイパン号は、依頼主である武装した傭兵グループと、重火器などの積荷を乗せて現場付近の海域を航行していたが、不運にも暴風雨の海上を漂流していたモーターボートと衝突し、船体に大きな損傷を負ってしまう。突然のアクシデントに立ち往生したフィネガンたちは、やがて近隣の海上で偶然にもアルゴノーティカ号を発見するが、その直後にサイパン号は同乗していた傭兵たちに乗っ取られてしまう。彼らはアルゴノーティカ号のシージャックを目論んでいたのだ。やむなくフィネガンたちは傭兵たちに従い、共にアルゴノーティカ号へと乗り込む。


ところが、3000名の乗客がいるはずの船内には全く人影がなく、唯一の生存者は船長と船主、そして金庫に忍び込んだとして捕まった美女の3人のみ。そして、乗客消失の元凶である“何か”がフィネガンたちに襲い掛かる。(Wikipediaより引用)


登場人物編集

密輸業者に国際指名手配中の女スリ、傭兵崩れのテロリスト集団、保険金目的でマッチポンプを目論む卑怯者など、主要な登場人物のほとんど全員が犯罪者である。


ジョン・フィネガン(演:トリート・ウィリアムズ)

「お次は何だ?」

今作の主人公。密輸船サイパン号の船長で密輸業者。

ハノーバー率いる傭兵グループに雇われ、目的も知らぬまま指定の海域に向かうも、その途中で傭兵たちに船を乗っ取られ、豪華客船のシージャック計画に巻き込まれる。

剛毅果断でリーダーシップに富み、密輸を生業としているためか荒事にも慣れているタフな男。


トリリアン・セント・ジェームズ(演:ファムケ・ヤンセン)

「自分に乾杯。」

今作のヒロイン。アルゴノーティカ号に乗客として乗り込んでいた女スリ。窃盗、強盗、公文書偽造、殺人未遂(元カレ)の罪に問われ、逮捕6回、有罪5回の罪歴を持つ4カ国からの国際指名手配犯。

金庫室に侵入しようとするも、キャントンとアサートンにより身柄を拘束され、食料庫に閉じ込められる(結果的にこれが功をそして怪物に襲われなかった)。

その後はフィネガンらと合流。なし崩し的に行動を共にすることとなる。


ジョーイ・パントゥーチ(演:ケヴィン・J・オコナー)

サイパン号の整備士でフィネガンの相棒。ムードメーカー的ポジションに位置する。

無駄口が多くお調子者で、手癖が悪く、そのくせヘタレときているが、どこか憎めない男。

勝手に傭兵たちの積荷を物色して魚雷であることを知りボコボコにされたり、ハノーバーに怪物の囮として撃たれたりと、何かと不運な立ち回りが多い。

レイラとは両思いの仲だが作中で死別することとなり、それを知った際はさすがの彼も静かにすすり泣いていた。


レイラ(演:ウナ・デーモン)

サイパン号の女性副操縦士。韓国系の出身でパントゥーチの恋人。気の強い性格。

傭兵たちに人質に取られサイパン号で待機させられるが、傭兵のビリーに船の補修を指示していた。

最期は、修理中に船に流れ着いたアルゴーノティカ号の乗客の遺体を目撃し戦慄。その後海中から現れた怪物に背後から捕食された。


サイモン・キャントン(演:アンソニー・ヒールド)

豪華客船アルゴノーティカ号のオーナー。

詳しくはリンク先を参照。


H・W・アサートン(演:デリック・オコナー)

アルゴノーティカ号の船長。

脛に傷持つ曲者だらけの主要人物の中で、犯罪に手を染めていない唯一の人物

フィネガンらと行動を共にするが道中、怪物の襲撃を受け逃走するも片足を負傷していたためか逃げ切れず、トリリアンとフィネガンが救出に向かうが、結局捕食された。

船長としての責務を果たすべく人々を助けようとするが、ほぼ全ての乗員・乗客は怪物に食い殺され、そうでなくともどのみち傭兵グループの計画によって皆殺しにされる運命だった。しまいにはこの事態を生んだ張本人は、皮肉にも信頼していたこの人と、薄幸な人物。

自身が捕らえたおかげで犯罪者ではあるが、乗客のトリリアンが生き残ったのが唯一の救い。


傭兵グループ

フィネガンを雇いサイパン号に乗り込んだ、ハノーバー率いる各国のテロリスト

傭兵崩れのテロリスト集団ではあるが、お互いの仲間意識は高い。

ある人物との裏取引で、金庫室やカジノの大金と引き換えにアルゴノーティカ号をシージャックし、魚雷で船を爆破する計画を実行しようとする。ハノーバーが中国から仕入れた最新のアサルトライフルM1L1三銃身(トリプルパレス)突撃銃を駆使し豪華客船に乗り込むも、後に(ヴィーヴォとメイスンを除く)全員怪物に捕食された。


ハノーバー(演:ウェス・ステューディ)

傭兵グループのリーダー。無骨で冷酷な性格の典型的な軍人系の悪役。

フィネガンの船を乗っ取り、豪華客船シージャック計画を実行するが、怪物の出現で全てぶち壊しになり、生き延びるために渋々ながらフィネガンらと手を組む。

その後しばらくは一行のサブリーダー的存在として活躍するが、怪物から逃げる途中、パントゥーチの脚を撃ち抜き囮にする非情な行動に出るも逆に怪物に襲われてしまう。

そのため、運良く餌にならずに済んだパントゥーチと再会した時は、下半身を飲み込まれ、両腕で辛うじて全身が飲み込まれるのを防いでいるという衝撃的な状態だった。

どうしようもない状況の彼に情けをかけたパントゥーチからは自決用にと銃を渡されるが、彼を撃ったことで弾切れとなり、生きたまま飲み込まれた(ちなみに撃った弾は結局当たらず、情けを仇で返されたパントゥーチは罵声を浴びせて逃げ去った)。


モリガン(演:ジェイソン・フレミング)

電子機器操作担当。

小心者で、立て続けに襲い来る怪物の脅威に半ば恐慌状態となり、調理室に立て篭もることを決意して脱出を優先に考えるフィネガンやハノーバーらと対立する。

直後、ダクトを経由して調理室にも現れた怪物の触手を攻撃し、一度は撃退するものの、そのせいで油断した隙をつかれて、背後から襲われ捕食された。


メイスン(演:クリフトン・パウエル)

黒人の傭兵でサブリーダー。仕切り屋で気性が荒い。

水没した通路を泳いで移動する際、最後だったことが災いし怪物に捕捉される。

最後は呑み込まれる寸前に餌になるよりはマシとばかりに、持っていた手榴弾で自爆した。


マムーリ(演:クリフ・カーティス)

「全世界の国の女と寝る」ことを公言するスキモノ。

船内でフィネガンとパントゥーチの見張りとして高圧的に接していたが、怪物の触手に捕縛され、あちこち引き摺り回された挙句捕食された。


T-レイ・ジョーンズ(演:トレヴァー・ゴダード)

オーストラリア出身の傭兵。船酔に弱い。マムーリと共にフィネガンとパントゥーチの見張り役を担っていたが、いち早く怪物の存在に気付き、警戒していたところを襲われ、傭兵メンバーの中で最初に怪物の餌食となった。


ヴィーヴォ(演:ジャイモン・フンスー)

黒人の傭兵で爆破担当。ゲテモノ好きの守銭奴。金庫室のロックを解除したところ、怪物と間違えたキャントンに斧で頭をカチ割られ死亡。その後彼は殺したことを無かったことにされた。

グループで唯一怪物の襲撃によって死亡しなかったキャラ。


ビリー(演:クリント・カーティス)

バックアップ兼雑務担当。喫煙者で、レイラと共にボートに残っていた。

船内で怪物に捕食されるが、フィネガンが怪物を撃ち抜いた際、左頭部が欠けた消化途中の状態という酷い姿で体内から出てきた(なお、このシーンはTV版では前半の数秒だけ放送され、大半がカットされる。そのため、モリガンの「畜生、ビリーだぜ!」のセリフが、カットに伴いしゃべるシーンが繰り上がっている)。

この時も辛うじて意識はあったが、しばらく絶叫しその直後死亡した。


グリード

今作の象徴とも言える怪物。アルゴノーティカ号を襲い乗客3000名を死に追いやった巨大海洋生物で、クリーチャー名は「オクタルス」。

鋭い歯と大きな口を持つ巨大なミミズの姿をしており、キャントンの仮説から「カンブリア紀の深海に生息していた異常発達を遂げたワーム類の一種」と思われていた。


ザ・グリードのアイツ

しかし、その正体は鋭い牙と巨大な口、青い2つの眼を持つ本体から無数の触手が生えたタコのような生き物。つまり、彼らを襲った無数の巨大ミミズは一匹の怪物から生えた触手に過ぎない。

  • ちなみに本体が登場する以前でもレーダーで捕捉された際は反応が1つだけであったこと、触手の頭部が破壊された際も死亡することなく活動していたこと、尾らしき部分が確認できない、触手が撤退する時はまるで引っ張られるかのように引き下がっていたなど、随所に伏線が存在していた。

好物は海洋生物人間。触手の先端の口で獲物を捕らえ飲み込み、体液を栄養源として吸い取り、残った骨を排泄物として吐き出す。

触手自体には視覚がないため、微かな音を頼りに獲物を巧妙に手繰り寄せる。

また、ハッチを閉めてフィネガンたちを船首へ誘導させようとするなど、知性もかなり高い。


弱点は本体の目玉と熱。眼を撃たれるともがき苦しみ、触手に火がつくと逃げてしまう。

また、触手に直接攻撃することも有効で、劇中では登場人物らがアサルトライフルを連射するなどして動きを怯ませた。しかし、触手の数は非常に多く、作中でもフィネガン一行の銃撃で数十本単位で破壊されているが、本体が大きなダメージを受けている様子は見られなかった。

最終的に、サイパン号に積まれた魚雷による自爆攻撃で起きたアルゴノーティカ号の爆発に巻き込まれ、跡形もなく粉砕された。


登場する船編集

豪華客船アルゴノーティカ号

本作の舞台であり、3000人の乗客を乗せて南シナ海を処女航海中だった大型豪華客船。


オーナーであるキャントンの「世界で一番豪華で華麗な客船を造る」という夢の実現と「洋上の楽園」と掲げるだけのことあり、中央ホールで楽団による演奏やパフォーマンスが催され、カジノや豊富な食事が用意されていたりと、乗客を楽しませるための至れり尽くせりサービスが提供されていた。

  • 明確な描写は無いものの、居住空間も広々としており、一流ホテルのような快適さとサービスが約束されていたと思われる。

船長であるアサートンが「最新技術の結晶」「12メートルの波でも揺れない」と豪語するほど安定性を持ち、いくつものセキュリティが施された豪華客船だった。


しかし、それだけに4億8760万ドルもの建造費を掛けすぎた上に、維持費で莫大な費用がかさみ、運賃だけでは赤字になってしまうとんでもない金食い虫でもあった(黒幕曰く、市場調査のミス)。その負債を清算するため、乗客たちの金や高価なアクセサリーなどを報酬にして傭兵グループと手を組み、黒幕は保険金を手にするシージャック計画を目論んだのであった。

そのために船のシステム制御室のディスクを入れ替え、システムを書き換えた事で航行と通信装置の発信を不可能にしたのだが、それをきっかけに怪物の接近を許してしまった。

斧や信号弾など武器になる物はあったものの、作中の怪物の暴れぶりや客船であるために有効打になる武器が乏しく、近くの陸地まで1300kmという孤立した環境(作中に登場した島は本来地図に存在しない島だった)で、船のシステムが機能せず救難信号を送れないまま救難艇やモーターボートなどで脱出する間もなく、僅かな生存者を残して乗客やクルーがまともな抵抗ができないまま捕食されてしまう惨劇が引き起こされてしまった。

  • ちなみにトリリアンが外で怪物の唸り声らしき不気味な音を聞く描写があったことから、その時点で既に怪物に狙われており、シージャック計画がなくとも襲撃は避けられなかったと考えられる。

傭兵グループが侵入した時点では既に船内全体が無惨に荒らされており、いくつもの血痕や犠牲者の体の一部が飛び散り、下層部は怪物が襲撃時に船底に穴を開けて入った事で一部が水没し、大型船故に迷宮のように入り組んでいる機関室と船周辺の海域に無数の触手が蠢く地獄のような環境と化してした。

そして一部の区画や船首には怪物に捕食され、排泄物として吐き出され、搾りカスの骸骨となった人々の死体の山が形成されていた。

  • ちなみに感想などで「船底に穴が空いたならなぜすぐに沈まない」と突っ込まれることがあるが、アルゴノーティカ号のような大型船は船底が複数の防水区画に分けられており、一部の浸水では直ちに沈没しない構造になっている。しかし時間の経過とともに水圧の影響が増し、最終的に船体は沈む。

それでも安全な場所は残っており、僅かな生存者は密閉された金庫や食料庫で大人しくしていたり気絶していたため生き延びる事はできていたが、作中で見せた船の構造を理解していると思わせる描写と、食料庫のパイプをそれより太い触手が通っていると思われる描写、24時間経たなければ捜索活動が行われない事に加え、後半で少しずつ船が沈没していく状況を鑑みるに、どのみち危険を犯してまで脱出せざるを得ない事に変わりない。

  • 事実、気密室やトイレに立てこもろうとした人物がいたものの、ダクトや便器の排水管を経由してきた触手に捕食されてしまっていた。さらに怪物襲撃時の衝撃で転落死した人々の死体が消失していたため、大人しくしていても長く持たないであろうことがうかがえる。

密輸船サイパン号

装置が不調でオンボロながら10人以上の乗員を乗せられる中型船。自動操縦システムや娯楽用ゲーム機能を備えたPCが搭載され、船内生活に最低限の快適さが確保されていた。

作中では傭兵グループによって9本と魚雷を密かに詰め込まれており(パントゥーチ曰く、空母を簡単に沈められる)、順調に計画が進んでいればそれを使って乗客を脅したり、アルゴノーティカ号を沈める算段だった模様。


しかし、悪天候による視界不良とレーダーの不調で、アルゴノーティカ号から落下して海上を漂っていたモーターボートの発見が遅れてしまったために衝突。

船体に大穴が開いて浸水し、エンジンも大きく損傷するという凄まじいダメージを負ってしまったことから、船員であるフィネガンとパントゥーチが修理に必要な部品を得るために、傭兵グループとともにアルゴノーティカ号へ乗り込むこととなった。

  • 終盤で応急処置を行った後も、燃料切れで6分でしか航行できないと語られている

最終的に部品を落としてしまって修理が不可になったことと、島へ安全に脱出する上で魚雷を使って怪物を倒すために応急処置を行った後、自動操縦システムを使ってアルゴノーティカ号へ特攻し自爆した。


余談編集

  • 作中におけるメインウェポンで、アサルトライフルガトリングガンを合体させたような外見を持つ架空の銃である「M1L1三銃身突撃銃」も人気が高い。
  • 主人公のジョン・フィネガンの名言「お次は何だ?」は、TV版吹き替え(声:菅生隆之)を見てきた人には有名だろうが、配信ではどれもソフト版の吹き替えのため、この名言を聞ける機会はそうそうない(ソフト版は大塚芳忠氏が担当しているが、先のセリフを言う場面が一度だけある)。
  • 2025年現在、DVDは廃盤となっている上にブルーレイ化やレンタルもされていない。視聴する方法はdTVなどの一部動画配信サービスか地上波での放送(主にテレビ東京の午後のロードショー系)に限られてしまっている。本作のDVD自体もプレミア値がついている状況のため、入手も困難になっている。
  • 主人公フィネガン役には、あのハリソン・フォードにもオファーが来ていた。

関連タグ編集

パニック映画 

クトゥルフ…グリードのモチーフと思われる神話の怪物。

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