歴史
スコットランド地方の牧羊犬であるラフ・コリーやボーダー・コリーなどと同じく、約2000年前にローマ人がブリテン諸島にもたらした犬が先祖で、バイキングがスカンジナビアやアイスランドから持ち込んだスピッツ系の犬と交雑し、シェトランド諸島で長らく飼育されてきたと考えられる。
バイキングの進出以降
気候が厳しく土地が痩せたシェトランド諸島では牧草地は限られており、飼料が少ないため家畜は小型化した。羊(シェトランド・シープ)は、スコットランド産の半分の大きさとなっている。シェットランドシープドッグも苛酷な環境に適応して小型化したか、もしくは小型の家畜に対応して小型化したと考えられている。
人口が少なく家畜の動きを制限する柵も少なかったため、家畜が耕作地に入らないよう管理する熟練した牧畜犬が不可欠だった。シェットランドシープドッグの祖先犬は羊だけでなく、ポニー、牛、豚、ニワトリなど多岐にわたる家畜を管理し、冬の屋内生活ではネズミを駆除するなど重宝された。
イギリス本土での改良
19世紀末、イギリス海軍の艦隊が演習のためにシェトランド諸島に訪れるようになると、現地でトゥーニー・ドッグと呼ばれたこの犬がイギリス本土に持ち込まれた。
ブリーダーたちは小さなサイズを保ったまま外見をラフ・コリー似せようと試み、現在の姿となった。作出にはラフ・コリーの他、キング・チャールズ・スパニエルやポメラニアンなども使用された。
当初、シェットランド・コリーという名称が一般化し、1909年にケネルクラブもこの名称で公認したが、コリーのブリーダー団体からの反発があり、1914年にシェットランドシープドッグに変更された。
日本における流行
'80年代、かつてのコリー・ブームの頃、住宅事情によってラフ・コリーの飼育を断念していた家庭が、こぞってシェットランドシープドッグを迎え入れた。
このブームに便乗した乱繁殖の結果、神経質で無駄吠えが止まらない犬や関節などに遺伝病を抱える犬が増え、人気が衰退して現在に至る。
特徴
ラフ・コリーとよく似た外観を持つが、より小型。温和でやさしい表情から聡明さと警戒心の強さがうかがえる。
外貌
小柄で引き締まった体は全体に対しバランス良くつり合い、粗く長い毛に覆われている。体長が体高よりやや長く、牧羊犬に必要な敏捷性とスピード、忍耐力を兼ね備える。体つきは筋肉質で、よく張った胸と引き締まった腹部を持ち、アウトラインは均整がとれている。
サイズ
スタンダードでは小型のラフ・コリーという位置づけがあり、サイズは最も重視される要素となっている。各国の犬種団体はシェットランドシープドッグの理想サイズを定めているが、国によって開きがある。
体高:33~41cm
体重:6~7kg
頭部
上または横から見て長く、滑らかなくさび状に耳から鼻にかけて次第に細くなっている。頭蓋骨の頂は平ら。両耳の間は適度な幅で、後頭部の隆起はない。頭部に対するマズルの割合は、長さ・太さともラフ・コリーより小さい。額段(額と鼻のつなぎ目の部分のくぼみ)はわずかだが明瞭。
鼻、唇、目縁は黒色。
歯の咬み合わせは上の切歯の内側に下の切歯の外側がわずかに接するシザーズ・バイト。
目はアーモンド型で毛色がマールの場合は片方または両目がブルーで、それ以外はダーク・ブラウン。
耳は小さく、前方に向けた半立ち耳で耳先が前方に折り曲がったものが理想的とされ、故意に矯正する場合もある。
首
豊富な飾り毛に覆われた長い首は、しっかりした筋肉に支えられてゆるやかなアーチを描く。
胴体
体高よりも体長の方がわずかに長く、キ甲は高く、背は水平で、短くしっかりしている。
腰には豊かな筋肉が付き、尻はゆるやかなカーブを描いて下がる。
あばらが張っていて胸底は深く、腹は良く引き締まる。
尾
足根の辺りまである長めの尾で、先がわずかに上に向かって反る。低い位置につき、徐々に先細になり、豊富な被毛に覆われている。
脚
肩幅が広く、肩甲骨と上腕骨にかけての角度は90度が理想。
前肢は真っ直ぐで太くしっかりしていて、中手の部分が若干傾斜する。
後肢は大腿部の筋肉がよく発達して幅広で柔軟性があり、膝はほどよく曲がり、足根は低めの位置についていて力強い。
被毛
粗く長い上毛と柔らかく密生した下毛のダブルコートで、首まわりから胸にかけての飾り毛が最大の特徴となっており、メスに比べてオスの方が豊かである。
毛色はセーブル(黄金茶からマホガニーまで)、ブラック・ホワイト・アンド・タン(トライカラー)、ブルー・マール(トライカラーの黒の部分が銀灰色と黒のまだら模様になる)、ブラック・アンド・ホワイト(バイカラー)、ブラック・アンド・タンの5種。50%以上の白毛はスタンダードとして好ましくないとされている。
歩様
普段は軽快で溌剌とした足運び。走るスピードが上がると、両肢が内側へ寄り、四肢が胴体真下のセンターライン上に着地する「シングル・トラッキング」と呼ばれる足運びになる。
性格
快活で遊び好き。従順、感覚鋭敏で訓練性に優れる。警戒心が強く比較的よく吠える。小型ゆえラフ・コリーよりも神経質である。
シェットランドシープドッグの生来的な知性と理解力の高さは定評がある。ボーダー・コリーが現れるまで、服従トレーニング競技会のトップを飾るのは常にこの犬種であった。
表記ゆれ
シェットランド・シープドッグ シェトランドシープドッグ シェトランド・シープ・ドッグ
関連タグ
詳細はWikipediaの記事を参照。