概要
個性と表情豊かな人形を使用した「サンダーバード」や、「キャプテン・スカーレット」といったイギリスの特撮人形劇作品の製作者として知られる。
「スーパーマリオネーション」と呼ばれる独特の個性が光る人形特撮作品の数々は、日本の実写・アニメ等の映像関係者に多大な影響を与えている。特にオリジナルメカの発進シークエンスに関しては、円谷プロのウルトラシリーズ等の特撮ヒーロー番組に大きな影響を残している。
経歴
徴兵時空軍で記録映画の撮影を担当していた事から退役後に友人レジナルド(レッジ)・ヒルとともに映画会社を立ち上げるが仕事が無く一時倒産、後にアーサー・プロビスも参加しAPFを立ち上げる。ようやく得た仕事が児童向けの人形劇であり、いつかは普通の映画を撮りたいという気持ちと、人形劇でも普通の映画に近づけたいという気持ちを持って作品遍歴を重ねる。
1957年、絵本作家のロバータ・レイの作品「The Adventure of Twizzle」を、1960年「Torchy the Battery Boy」を製作、後者では初のSFメカが登場している。この時、ロバータ・レイの作曲した主題歌を編曲したバリー・グレイと出会う。プロビスはここでジェリーと別れロバータ・レイと人形劇を続けて製作し、日本でも放送された「Space Patrol」等を製作している。
1960年、グラナダTV製作で「Four Feathers Falls」を制作し、声優が予め録音した音声に合わせて口を電気で動かす「リップ・シンクロイド・システム」が初めて使用される。本作は人気作となったがグラナダTVは後続シリーズを依頼せず、ジェリーはアソシエイテッドTVの親会社であるITCのルー・グレイドにSF人形劇「Supercar」の製作を持ち掛ける。
グレイドは巨額の見積りに驚きながら製作を実現させ、アンダーソンは作品と並行してタブロイド紙やスーパーカーの会員証を発売し、メディアミックスで作品を成功させた。この時、アシスタントに応募したシルヴィア・タムが参加し、後半は黒人の少女ジジの声優となる。
本作で、先述のレッジ・ヒル、バリー・グレイはじめ、個性的な人形を創出したジョン・ブルンダール、クリスティン・グランヴィル、監督のアラン・パディロ、デスモンド・サンダーズらのメンバーが固まり、作品も単なる人形劇を超えた「SUPERMARIONATION」と銘打ったシリーズが始まった。
本年、イギリスの自国映画製作保護のための悪法により、APFにも実写映画製作の依頼があり、初の実写作品「Crossroad to crime」を製作したが、関係者は一様に凡作との評価を下している。反面、APFスタジオのあるイプスィッチ周辺の情景やAPF社屋内を眺める事が出来る、ある意味貴重な一作である。
「Supercar」の成功を受け、1962年には「Fireball XL-5」が製作され、本作はアメリカ3大ネットのNBCで放送され、アメリカでも大ヒットし、今でも主題歌「I wish I was a spaceman」というフレーズは宇宙少年の合言葉となっている・・と思う。確か。なお、本作が結局三大ネットに乗った唯一の作品となった。本作開始の前にジェリーはシルヴィアと結婚している。
以後、後述の世界的な人気SF人形劇を製作していく。また、1970年には俳優を使用した実写特撮作品も製作した。
スペース1999終了後に、長く不仲であったシルヴィアと離婚、慰謝料に莫大な出費を要し、「Thunderbirds」の権利をも失う。
以降は最大の後ろ盾であったITCの凋落、イギリス社会そのものの斜陽の中で60年代の様なヒット作を送りだすには至らなかった。
なおも1980年代以降も製作を続け、後述の作品群を送り出している。
主な作品
海底大戦争スティングレイ/STINGRYA
1964年製作。
WorldAquanautsSecurityPorice=WASPの誇る原子力潜水艦スティングレイMk3と、謎の海底人たちとの戦いを描く。
サンダーバード/THUNDERBIRDS
1965年製作。
ジェフ・トレーシーとその家族による国際救助隊IRの活躍を描いた人形特撮TV番組で、ジュリーとシルヴィアによるアンダーソン作品の代名詞的存在。
ちなみに、日本のアニメ「科学救助隊テクノボイジャー」は、英語版のタイトルは「THUNDERBIRDS2086」だが、ジェリー・アンダーソンは直接関わっておらず、イギリスの版権所有会社の担当者がアニメ企画に関わっていたという。
映画版サンダーバード/THUNDERBIRDS ARE GO
1966年製作。ユナイテッド・アーティスト社配給
国連・アメリカ共同開発の有人火星探査船ZERO-Xを主役に据え、当時人気のアーティスト、クリフ・リチャードとザ・シャドウズを(本人たちの歌と演奏を、ソックリな人形が演奏するという趣向で)招いた豪華劇場版。しかし、製作陣は、TVで大人気だからと言って劇場に人形劇を見に来る人なんかいないという現実を把握できていなかった。
サンダーバード6号/THUNDERBIRD6
1968年製作。ユナイテッド・アーティスト社配給
新世界航空社が国際救助隊の協力で開発した原子力飛行船スカイシップ1、その処女航海に国際救助隊メンバーを招くが、既にスカイシップ1は国際救助隊の秘密を狙うスパイ団に乗っ取られていた。
前作の興行的失敗の原因を、製作陣が「なんで失敗したのか」と無謀にもリトライしてしまった一作。
キャプテン・スカーレット/Captain Scarlet and the Mysterons
1967年製作。
火星人ミステロンと、不死身のキャプテン・スカーレット率いる地球防衛機構スペクトラムの戦いを描いた人形特撮TV番組。
スーパーマリオネーションの究極のリアルさを求め、リップ・シンクロイド・システムの駆動装置を頭部から胴体に移し、頭身を5頭身から7頭身に改良し、更に人形の義眼には光彩の写真が埋め込まれている。
スーパー少年ジョー90/JOE90
1968年製作。
脳波を記録し他人に転送する頭脳変換機Brain Impulse Galvanoscope Record And Transfer
=BIGRATを使用し、発明者イワン・マクレイン博士と、その9歳の養子ジョー・マクレインが共産圏、アジア・中南米の独裁政権との新兵器争奪戦に活躍する、ミリタリー・スパイ作品。
やけにマニアックでリアルっぽい兵器群が地味に魅力。
決死圏SOS宇宙船/Doppelgänger
1969年製作。ユニバーサル配給
「Crossroad TO crime」を除けばジェリー初の俳優を使った作品。アポロ計画を、特撮で再現するという意気込みによる太陽調査船打ち上げシーンは白眉。
ロンドン指令X/The Secret Service
1969年製作。
イギリス聖職者作戦司令部British Intelligence Service Headquarters, Operation Priest=BISHOPのスタンレー・アンウィン神父が助手マシュウを物質を拡大縮小させる装置ミニマイザーを使い、共産圏、アジア・中南米の独裁政権との新兵器争奪戦に活躍する、ミリタリー・スパイ作品。スタンレー・アンウィンは当時人気のコメディアンで、早口で人を撒く芸風であった。ジェリーはこれを気に入って、時に本人を交え、実写と人形劇を融合させて製作したが、ルーはこれに激しく拒絶したため13話で製作を中止した。
本作でクリスティンはじめ人形劇スタッフは解散した。
謎の円盤UFO/UFO
1970年製作。
エド・ストレイカー率いる地球防衛組織SHADOと、UFOに乗って地球にやってくる宇宙人との戦いを描いた特撮作品。「oppelgänger」に続く実写作品。
年少者だけでなく高年齢層をターゲットにし、月面基地の女性陣は紫色のボブカットのウィッグにボディラインにフィットした銀色のスーツを纏うなど、性的なアピールを全面に出したりしている。
イタリアで好評を博し、公営放送RAIの協力で続編が企画されたが、形を変えて次作「space:1999」となる。
プロテクター電光石火/The Protectors
1972年製作。
国際探偵組織プロテクターのハリー・ルール(ロバート・ボーン)らがヨーロッパ各地で活躍する。
SF作品ではない。主題歌がイカス。
スペース1999/SPACE:1999
1975年製作。
月面の核廃棄物が爆発し、月面基地ムーンベースアルファと隊員を乗せた月は太陽系を飛び出し未知の宇宙を彷徨う事となる。主人公にスパイ大作戦のマーチン・ランドーとバーバラ・ベイン夫婦を招く「世界で最も製作費が高額なドラマ」と呼ばれた。
地球防衛軍テラホークス/TERRAHAWKS
1983年製作。
日本の東北新社の依頼で企画された「TUNDERHAWKS」を下敷きにして製作された人形特撮TV番組で、タイガー・ナインスタイン博士率いるテラホークスと、ゼルダ一家の戦いを描いている。
本作では釣り人形ではなく、下から操作する人形を使用している。人形の顔もラバーで製作され、当初は口元を歪めるなどの表現が期待されたが思う程の効果が得られなかった。
製作費は低予算(それでも額面は「THUNDERBIRDS」と同じ)であった。
人気番組となったため、次回作「SPACE PORICE」のパイロット版が製作されたが、出資会社が倒産したため企画は実現しなかった。
スペースプリシンクト/Space Precinct
1994年製作
企画に終わった「SPACE PORICE」を、10年越しに実現させた作品。俳優による実写作品で、異形の宇宙人との共同社会での犯罪と、惑星アルターのデメテル市を守る警察官パトリック・ブローガンの戦いを描く。
FIRESTORM
日本のTVアニメ作品で、ジェリーは原案を担当している。
新キャプテン・スカーレット/Gerry Anderson's New Captain Scarlet
2005年製作
キャプテン・スカーレットのCGリメイク作。
余談
村上克司が彼の元に行った際、『電子戦隊デンジマン』のデンジタイガーの玩具を向こうが所有しており、デザインした当人とは知らずに「これは素晴らしい。こういうのを作りたいんだよ」と話し、「それ、ウチで作ったやつだよ」と返されて驚いたという。