ジャマダハル
じゃまだはる
インドで用いられていた一種の短剣(片手剣)。14世紀から用いられたとされる。
握りが刃と垂直についているのが最大の特徴で、握り込んだ際に切っ先が拳の方向を向くようになる。この為、使用者に技量さえあれば横に切り裂く事も可能であるが、どちらかと言えば殴りつける様にして突き刺す形で用いる為の剣とも言える。虎のような突進してくる大型獣を倒すには相性が良かったとされる。
ちなみに、厳密に言うと手甲がないのをジャマダハルといい、あるのは『パタ』という別の名前で呼ばれる。
いくつかバリエーションがあり、刃が二又・三又になっている物や、刃が波打っている物、内部に一回り小さなジャマダハルを収納できる物などがある。
柄を握りこむと刃が三又に分かれる物、さらには柄の両側にマスケット銃を取り付けた物といったロマン溢れるジャマダハルもあるが、それらはあまり実戦向きとは言えず、欧州の刀剣収集家に向けたコレクターズアイテムとして作られたらしい。西洋での別名「ブンディ・ダガー」。
拳で殴るように刺突する事から、「パンチ・ダガー」という呼称も見られた。
ジャマダハルの呼び名は、しばしば『短剣』を意味するカタール(インドで用いられていた30cm程度の両刃の剣)と混同されてしまっている。
これは16世紀の歴史書においてジャマダハルとカタールの挿画が取り違えられていたことに由来し、この書物によって名称が誤解されたまま西洋にその存在が広まってしまった為である。
しかし歴史の古い誤植のため、欧米では「Katar」が既に呼称として定着してしまっており、明確に区別したい場合には「Katar Jamadhar」等という矛盾塊のような呼称が用いられる場合もある。
日本語で例えるなら「豪邸」を意味するはずの「Mansion」が「集合住宅」の「マンション」と誤った意味の和製英語でそのまま広まってしまったようなものであるのだが、この武器を使用するヴォルドがいるソウルシリーズや一部の国産RPGなどにおいて、この形状の武器をカタールと表記する作品も存在している。
ただ、「カタール(Katar)」という名称は、タミル語において「突き刺す刃物」の意味である「カッターリ(kattāri)」が語源になっているとされており、元々ジャマダハルが突き刺すのを目的に用いられる刃物である点を見ると、この呼び名も実は決して「間違い」とは言えなかったりする。
正直に超シンプルに言ってしまえば、本来の「ジャマダハル」よりも長く浸透してしまった「カタール」という名称の方が印象深く覚えやすいという者もいる模様。
色々と面倒な問題があるにせよ、この武器の名称が「ジャマダハル」か「カタール」かであるのかについては、今更訂正も難しいのだろう。