概要
イスラム圏諸国で多く用いられる君主の称号。由来はアラビア語で「権威」を意味する。忠実にカタカナ表記するとスルターンに近い。かつては英語読みでサルタンと呼ぶことが多かった。「国王」ないしは「皇帝」などとも訳される。
元はカリフがイスラム教を世俗で守護する指導者を公認する時に授与した称号で、1055年にセルジューク朝のトゥグリル・ベクがカリフから受けたのが始まり。アイユーブ朝のサラディンや、手中に庇護したことでスルターンを称したマムルーク朝のバイバルスなどが著名。
後には称号として一般化する一方でカリフ政権の衰退、解体もあり、君主自らの自称で用いられることが多くなった。モンゴル帝国と敵対したことで有名なアラーウッディーン・ムハンマドを生んだホラズム帝国、或いはオスマン帝国のスルタンなどがその例である。
現在ではオマーンやブルネイ、ないしはインドネシアのジョグジャカルタ特別州やマレーシアの各州にスルタンと呼ばれる指導者が存在している。
なお、オマーンのスルタンは名目上イバード派イマームを兼ねておりオスマン帝国のスルタン・カリフ制に近いものとなっていたが、ザンジバルの支配権獲得以降はスルタン位のみ公称している。(システムとしてはスルタンの権威の源泉自体は兼任するイマーム位にあるのだが、宗教が混在するザンジバル植民地の統治経営の妨げとなった為、イマーム位の公称を避ける様になったとされる。)