ソード・オブ・ソダン
そーどおぶそだん
もともとはアメリカで1988年にAmiga専用ソフトとして発売されたビデオゲームである。
1990年にSEGAGENESISに移植され、1991年には日本でメガドライブ用ソフトとして発売された。その後、MacintoshOS7にも移植されている。
カタカナで『ソード・オブ・ソダン』、『ソードオブソダン』といえば、基本的にメガドライブ版を指す。以下は特記のない限りメガドライブ版についての内容である。
日本ではゲームファンから『ソダン』、『帝王(ソダン)』(後述)と呼ばれることが多い。
横スクロール型の2Dアクションゲーム。ゲームのカテゴリーとしては『ハックアンドスラッシュ』(=戦闘行為を目的としたプレーを基本とするゲーム)に分類されている。
敵を倒しながら様々なトラップの仕掛けられたステージをクリアし、最終的には巨大なボスを倒すというオーソドックスな作りのゲームとなっている。
プレイヤーは戦士ボルダン(Brodan)とシャルダン(Shardan)のどちらかを操作し、師匠である英雄ソダン(Sodan)から授かった剣を手に、亡き父ロダン(Lordan)の仇敵である悪の魔術師ゾラス(Zoras)を討ち倒すことが目的となる。
ストーリー
※メガドライブ版取扱説明書より
黒魔術師ゾラス…
はるか昔、悪魔と交わりし罪によって、東の彼方、暗黒の淵へと追放された狂気の魔人。そのゾラスが人々への復讐のため、悪魔とともに再び現われて、ここ、北の王国を支配するようになってから早、十数年がたつ。
黒王を始め、力のある者は壮絶な戦いの末ことごとく殺され、後に残った無力の民は、ひたすらゾラスを恐れて圧政の下に虐げられている。
しかし、今、王国の城塞都市をはるかに臨んで、勇猛な若き二人の戦士が、打倒ゾラスを誓って、悪魔との決戦に挑もうとしていた。
剣豪ボルダンとその妹シャルダン…王国の崩壊寸前、密かに城から連れ出された旧国王の子供たちの成人した姿である。彼らは西の国に住む歴戦の勇者ソダンに預けられ、幼少より戦士の訓練を受けてこの日のために備えてきた。旅立ちに際し、ソダンは二人に自らの剣を渡し、王国の再興を託したのだった。
はたして二人は亡き父の無念を晴らし、祖先の領土を取り戻すべく、魔人ゾラスを討ちはたすことができるであろうか!? 運命の輪は回り始めている…
日本ではクソゲーとして広く知られており、『BEEP!メガドライブ』誌上における読者投票で最下位23回という記録から、メガドライブ史上の頂点に立つ「伝説のクソゲー」とされる。(セガハード史上での王座は後に『デスクリムゾン』に取って代わられた)
インターネットもまだない時代、ゲーム系の同人誌即売会において「「ソード・オブ・ソダン完全クリアー」本を頒布した者や、先述の読者投票でこの作品の地位を(複雑な意味で)脅かすような作品が出ると、10点投票を行いなんとか防衛しようとする者(「ソダン親衛隊」と呼ばれた)も現れるなど、なにかと愛される存在であった。
特徴的なグラフィック表現
90年代の洋ゲーには良く見られる特徴(いわゆる『洋ゲーあるある』)ではあるが、グラフィック表現や演出が独特で、日本人プレイヤーにはあまり受け入れられなかった。具体的には、くっきりしたコントラストのドットで描き込まれた「濃い」画風のグラフィックや、死亡時のグロテスクな描写などが挙げられる。
しかし、精密な描写が難しかったメガドライブ以前のハードからの変化として、この表現が当時の日本市場では特に強い印象を与える結果となった。また描き込みの細やかさが、かえって「姿勢や動作の不自然さ」を際立たせている。
他にもBGMの代わりに鳥の囀りや敵の呻き声、断末魔を延々聴かされる、クリア後のエンディングが(当時の水準と較べて)いやにそっけないなど、なんとも言えない不穏さを感じさせる演出がされている。
凶悪な難易度
グラフィックや演出だけであれば、よくある洋ゲーとしてこれほどまでに注目されることはなかったであろうが、今作の最大のポイントは「高すぎる難易度」である。
初見殺しの致死トラップが多数設置され、最初のステージで湧くいわゆる雑魚敵からして主人公より攻撃リーチが長く、耐久力が高く、数に物を言わせて前後から挟撃してくる。
何より主人公側の操作性が異常に劣悪であることがゲームバランスの崩壊に拍車をかけている。
例えば、振り向きのためにはジャンプボタンを押しながら方向キーを入力するのだが、この判定がシビアで、後ろから来る敵にすぐ対応できず、挟み撃ちに遭い倒されることがある。
それ以外にも全体的にプレイヤーのモーションが遅く、後述のポーションシステムも、一旦ポーズして選ばないといけない、組み合わせのヒントがゲーム内で全く出されない、使っている際にもダメージ判定があるなど、プレイヤーを地味に、そして確実にイライラさせる作りとなっている。
メガドライブのスペックをプレイヤーにストレスを与える方向に最大限活用したクソゲー界の帝王の名に相応しい内容となっている。
好意的な評価
ゲーム中で入手できるポーション(4種類が存在し、混ぜて服用することで効能が変化する)のシステムは後年のゲームにも影響を与えており、その独創性は高く評価されている。この「ポーションの組合せにより各種効果が発動する要素」はMD/GENESIS版から登場したものである。
ちなみに。『超クソゲー』では「クスリでドーピングしまくりながら〜」と身も蓋もないレビューがされている。
また、アクの強い演出面も「当時の日本人プレイヤーにはあまり受け入れられなかった」というだけで、時代を考えれば決してレベルが低いわけではない。
攻撃を使い分け間合いを調整する高度な戦略と操作技術で切り抜ける『辛口のアクションゲーム』、クリアしたという事実だけで自慢話が成立する『牙城』として本作を好意的に評価する意見もあった。
いずれにせよ、メガドライブのある意味代表的なゲームとして、多くのプレイヤーに多大なるインパクトを与えた作品である。
なお、元となったAmiga版はここまでのバランス崩壊はなく、レスポンスもかなりマシになっている。また、MD/GENESIS版には無いステージやギミックも存在する。
開発元であるDiscovery Softwareは1990年に経営不振が原因で破産。なお、移植を担当したInnerprise Softwareも1992年に倒産するなど、続編やリメイクなどが望めない状況にある。
1989年のCESExpoではAppleⅡ GS移植が発表され、デモ版も公開されていた。しかし、移植担当のプログラマが揉め事を起こし解雇され、後任のプログラマが見つかるまで開発がストップしていたところで肝心の会社が破産している。
2018年には有志によりAppleⅡGS版のデータが発掘、検分され、ほぼ全てのステージをプレイ可能なデータが公開されている。ただし、ソースコードが見つかっていないため、修正が不可能な状態である。
2019年に発売されたメガドライブミニには、その知名度の高さから収録希望の声も上がっていたが、「倫理問題」により(現在のCERO-Zに相当する可能性があることから。メガドライブミニ自体のCERO区分はBである)収録されなかったことが開発者インタビューで明かされている。