概要
米国の半導体メーカー・フェアチャイルド社が1976年に「Video Entertainment System(VES)」の名称で発売した世界初のソフト交換型家庭用ゲーム機。
翌1977年にAtariがVCS(後にAtari2600へ改名)を発売したため、Channel Fに改名した。さまざまな点で画期的なゲーム機であり、コンピュータゲームの歴史において初の第二世代ゲーム機と位置付けられているが、同世代の覇権を確立するところまではいかず、Atari2600が第二世代ゲーム機の王者となった。
特徴
プログラミング可能なROMカセットを採用した初のゲーム機。また一人プレイができる初のゲーム機でもあり、対戦相手のプレーヤーがいなくても対CPU戦が楽しめた。一時停止(ポーズ)機能を搭載した最初のゲーム機でもある。ただしポーズボタンはコントローラーではなく本体側に付いている。
チャンネルF以前のゲーム機は全てゲームソフトを本体にあらかじめ内蔵しており、入れ替えはできなかった。つまり、遊び飽きて他のゲームが遊びたくなったら、他のゲーム機を買うしか方法がない。世界初のゲーム機であるOdysseyにもゲームを切り換えるカードが付属したが、これはゲーム機本体の配線を切り換える回路が入っているだけでソフトウェアは搭載されていない。チャンネルFのライバルは内蔵するゲームの数を増やして対抗した(GI社のAY-3-8500チップを内蔵するなど)が、当時のROMの容量は非常に少なかったので、各々のゲームプログラムも単純化してしまった。
日本では1977年に丸紅住宅機器販売によって128,000円で輸入販売された。Atari2600も同年に東洋物産により94,800円で輸入販売されている。
スペック
世界初のマイクロプロセッサ搭載ゲーム機でもあるが、個人向けのコンピュータ自体が黎明期であったこともあり、今の目から見ると奇妙な仕様が多い。
F8はワンチップマイクロプロセッサではなく、演算ユニット(CPU)の3850と制御ユニット(PSU)の3851が別のチップに分かれていた(1977年に出た派生チップのMK3870ではこれらが一つのCPUになっている)。またCPUとPSUの双方がI/Oポートを持っているが外部アドレスバスを持たないためCPUが外部ROMのデータやプログラムコードを直接指定してアクセスすることができない。さらにメインメモリすら搭載しておらず、64バイトはCPU内蔵のスクラッチパッドメモリの容量である。ちなみに1KBのROMはPSUの方に内蔵していた。
チャンネルFの解像度は128×64ドットとか、102×58ドットなど様々に表記され一定しないが、ドットクロックは色副搬送波3.58MHzの8/7倍の周波数から生成されており、計算上NTSCの画像信号52.66μs内に入るドットは107.7ドット。これが理論上の最大として、一方実機からのキャプチャ動画を見ると104ドットほど見えるものがあり、真値はこの間にあるだろう。縦は実機動画で60ドット見え、240/4と切りもよいためこの値に確定だろう。なお、(アナログTV出力のPS2/Wii時代までのゲーム機全てに言えることだが)実際のTV画面内に収まる範囲はTVによって異なり出力される画像信号のうち80~90%程度。例えばかなり広めの95%で計算すれば約102×57となる。
その他特徴的な仕様
カートリッジを入れなくても本体内蔵のホッケーとテニスの2つのゲームが楽しめた。
音声はいくつかのビープ音を発生させることができた。ゲーム機本体の内蔵スピーカーから流れる方式で、後のゲーム機のようにテレビから流れる仕組みにはなっていない。
コントローラは水道栓のようなノブの形をしており、前後左右とノブを回す3軸の入力と、ノブを押す・引くの入力に対応した。