概要
ROMカセットとは、主にソフト交換式のゲーム機で使用される、ROM(Read Only Memory)を内蔵したプラスチック製のカートリッジである。
1976年にアメリカで発売されたゲーム機「フェアチャイルド・チャンネルF」で初採用され、翌年に発売された「Atari VCS(Atari2600)」でポピュラーな物となった。
かつては記録メディアが「媒体は安くても読み取り機器が高い」「読み込んだデータを保存するRAMが高い」という事情もあり、コンピュータゲームのソフトウェア媒体として広く使われていた。
光ディスクにその座を明け渡したものの、小型化・高集積化を経て現在においても現役で使われ続けている。
2000年代以前における比較
以下は2000年代以前における状況である。現在では半導体技術の向上でこの限りでないほか、ダウンロードが主流となってメディアの利用頻度が減っている。
長所
- 耐久性がある
ロムカセットは駆動部品(ドライブ、モーター、磁気ヘッド等)を持たないため、経年劣化に比較的強く耐衝撃性にも優れる。ディスクと違い動作音も無く、稼働中も静かである。
- 読み込みが早い
ディスクの場合はデータを読み込む際にシークが必要となるが、ロムカセットはそれが不要であり、すぐにデータを読み込むことができる。
無論ソフト側の容量が大きくなれば本体側のメモリ容量次第ではロムカセットでもローディング画面が発生することはあるが、それでもディスクに比べれば読み込み速度は段違いである。
- 単体でデータのセーブができる
カートリッジ内部にSRAMやフラッシュメモリを内蔵することで、カセット単体でセーブができる。CD-ROMでは媒体に情報を記録することができないため、メモリーカード等の外部記録媒体が必要になる。
- ゲーム機の性能アップができる
ゲーム機側の作りによるが、特殊な半導体をカセット内に搭載することで、同時発音数を増やしたり、グラフィックを強化したりなど、ゲーム機の性能を底上げすることができる(コナミVRC6、スーパーFXチップなど)。
- 携帯ゲーム機ならではのソフトを作れる
専用のセンサーをカセット内に搭載することで主人公になりきり没入感の高い作品となる(コロコロカービィ、ボクらの太陽など)
- 雑に扱える
使用しないときにフロッピーディスクのようにジャケットに入れたり、CDのようにケースに入れたりする必要がなく、裸の状態で保管できる。
短所
- コストが高い
ロムカセットを構成するのは半導体メモリで、ディスクメディアに比べると容量に対しコストが高い。スーパーファミコン全盛期の頃には、32Mbit(4MB程度)以上の容量で10,000円を越えるソフトもあった。CD-ROMは500MB以上の容量で6,000円を超えないものが多かった。
- 場所を取る
ディスクに比べて分厚いため、外箱(パッケージ)も大きくなりがちであり場所を取る。比較的頑丈なので箱に戻す必要性は低いが、それによって外箱や説明書の紛失を招くことも多い。
もっとも、現代ではカードサイズのロムカセットでも充分な大容量を実現できており、近年のゲームカード(ROMカセット)のケースはディスクケースと大差無い薄さ(サイズ)になっている。
- 耐水性が低い
回路基板を内蔵しているため、水濡れや結露には弱い。
対する光ディスクは海水に長期間浸した後でも洗浄・乾燥させれば問題無くデータを再生できる。
- 接触不良を起こす
本体とロムカセットが金属の端子で接続されるため、劣化により接触不良を起こしたり、振動で接触不良が起きてゲームがフリーズする場合もある。
ロムカセットを使用した主なゲーム機
純粋なカセット形状のもの
- スーパーカセットビジョン
- ゲームボーイシリーズ
- ファミリーコンピュータ
- スーパーファミコン
- NINTENDO64
- マスターシステム - 後述のカード状(セガ・マイカード)のソフト用スロットも搭載
- メガドライブ
- NEOGEO
カード状のロムカセットを使用するもの
- PCエンジン - HuCARDと呼ばれていた
- ニンテンドーDSシリーズ
- ニンテンドースイッチ
- プレイステーション・ヴィータ
厳密にはロムカセットとは言えないもの
その他
同様にロムカセットでソフトウェアの提供が行われたホビーパソコン。
メインのメディアは光ディスクだが、サブメディアとして専用のロムカセットを併用するタイトルがわずかながら存在する。
光ディスクとROMカセットのデメリットが災いしたのかこのシステムは失敗に終わり、同様の機能と汎用性を持つ「拡張RAMカートリッジ方式」へ移行することとなった。