概要
プラントで開発された特殊な電磁波照射システム。開発者は不明。劇中では「スタンピーダー」と呼ばれることが多く、本項でも同様の呼び方を用いる。
仕組み
自由中性子の運動を暴走させて強制的に核分裂反応を起こすための電磁波を前面広範囲に照射することにより、ニュートロンジャマー(以下、NJ)の影響下であっても有効半径内に存在する核分裂反応を用いたあらゆる物をその場で暴走させる。核分裂反応の抑制として機能するNJとは対極的な効果と言える。
このシステム自体がNJCに連なる技術を用いられた代物なので、照射対象がニュートロンジャマーキャンセラー(以下、NJC)を保有している有無に関係なく、そのNJCの機能を停止させたとしても暴走を引き起こせる。実際に核弾頭ミサイルは、マルチランチャーから射出されてない物やアガメムノン級の格納庫に積まれていた物も暴走させられて自爆している。
核分裂反応のエネルギーを利用する物であれば照射対象に縛りは無く、ガンマレーザー砲「ジェネシス」やMk5核弾頭ミサイルなどの核兵器に加えて、理論上はMSに搭載された小型の核エンジンやその発展型のハイパーデュートリオンエンジン、NJCで復旧した原子力発電所の原子炉などのあらゆる核分裂反応を暴走させることも可能である。C.E.最強と名高いストライクフリーダムも動力源のハイパーデュートリオンエンジンには超小型の核動力が組み込まれており、有効半径内に入ってしまえば有無を言わさず自爆へ追い込んで破壊できてしまう。
劇中の描写が、巨大電子レンジこと「サイクロプス」やガンマレーザー砲こと「ジェネシス」に似ているため勘違いされるが、スタンピーダーから放出された電磁波には人体への直接的な殺傷力は無く、電磁波そのもので死ぬ様子は一切無い。艦艇やMSが爆発もスタンピーダーの電磁波によって破壊された訳では無い。あくまでも、照射された電磁波で核弾頭ミサイルを強制的に暴走させることで被害を及ぼす。
逆に、理論通りならMk5核弾頭ミサイルを発射し尽くした、あるいは核弾頭ミサイルを保有しない相手には効果が無い。艦艇に用いられているレーザー核融合推進のような核融合反応は暴走しない。
この事から、「必ず相手が核兵器を使う」と言う確証が無ければ、後述の構造の都合で希少素材を損耗するリスクが非常に高く、運用には難しい部分もある。
構造
システムを構成する6対、計12枚のブレード状の電磁波放射装置「量子フレネル」は1度の使用(7秒間の照射)で殆ど蒸発してしまい、それに伴いブレーカーが作動して搭載したナスカ級高速戦闘艦も機能停止に陥るため、連続使用は不可能の実質使い捨て前提のシステムとなる。また、システムが起動することにより量子フレネルが振動を開始して照射待機状態となり、そこから任意のタイミングにて照射を開始することができる。
前述の通り、NJCに連なる技術が用いられている都合で、コア部分にはNJCにも用いる特殊なレアメタルであるベースマテリアルが必須である。1つあれば機能するNJCと比較して、稼働に必要とされるベースマテリアルの数は遥かに膨大であり、大西洋連邦と違い、ベースマテリアルの新規供給源を持たないプラントは、隠匿していた核エンジン搭載MSのザク量産試作型計47機を解体してNJCのコア部からベースマテリアルを抽出し、本システムの使用に充てている。それでも1発分しか用意することができなかった。
劇中では
『SEED DESTINY』
C.E.73年11月に地球連合軍が展開した「フォックストロット・ノベンバー」にて核攻撃部隊「クルセイダーズ」によるプラント攻撃の際に、ザフトが迎撃のために使用した。ウィンダムから発射されたMk5核弾頭ミサイルを全て誘爆させた上、クルセイダーズのウィンダムやその母艦のアガメムノン級の格納庫に積載されていた核弾頭ミサイルを軒並み誘爆させることで全滅させるという大戦果を挙げた。先述した経緯の通り、資源的にも状況的にも外すことが許されない状況下であったが限界まで引き付けることで無事最大効率にて運用された。
ただし、ザフト側は1発分しか用意できていなかったため、仮にクルセイダーズが2波以上に分けて核攻撃を行った場合は失敗していたというギリギリの状況であった。もっとも、この迎撃成功の効果は非常に大きく、以後連合は迂闊に核兵器の使用に踏み切ることができなくなったため、抑止力として十分に機能することとなった。また、秘匿性が最重要だったためか、その存在はザフトの前線部隊にも知らされておらず、プラント最高評議会とプラント国防委員会が直々に指示を出して運用した(そのため、前線司令部と評議会側で行動が若干食い違ってしまった)。
「核兵器の使用によって失われた抑止力が復活した」と言う点も本システムの効果の強さを物語っている。逆に言えば、本システムがもう作れないと発覚してしまえば元通りになると言うことも意味している。
『SEED MSV戦記』
地球連合軍からスタンピーダーの開発が妨害されないように、情報を徹底的に隠蔽したコロニー某所で開発されていたが、試験運用していたザク量産試作型総数47機が同じコロニーに集められている情報を地球連合軍の特殊部隊ファントムペインに掴まれてしまい(情報提供はおそらく同軍の特殊情報部隊)、NJC及びその素材のベースマテリアルを奪取する任務を与えられたファントムペイン所属のスウェン・カル・バヤンが駆るストライク+I.W.S.P.によってコロニーが襲撃される。
スタンピーダーのコアを死守するべくコートニー・ヒエロニムスがザク量産試作型で迎撃するものの、動力をバッテリーのみで動かしていた影響で短時間で機能を停止してあっけなく敗北、その姿からスウェンは目的のものが別の場所に移されたと誤解して撤退した。
コートニーの狙いは、背後にあったスタンピーダーのコアの存在が悟られる事の阻止であり、スタンピーダーは完成することになる。
余談
- メタ的には、核兵器が封印された世界を描くためにNJと言う設定を導入していたが、NJCと言う無効化する設定も出してしまったため、新たな核封印の手段として本システムが設定された背景がある。なお、これらの装置は揃いも揃ってプラントで開発されている。
- 逆に言えば、本システムとその技術はプラントしか保有していない事も意味し、スタンピーダーを持たない国家はこの限りではなく劇場版では…。
- プラント防衛のために宇宙でしか使われなかったが、仕組み・構造・効力そのものは理論どおりなら地球上でも適用できる。
- もっとも、1個あれば核エンジン搭載MSを運用できるNJCを解体して中身のベースマテリアルを大量にかき集めて、1発限りの使い捨てにする覚悟が必要なことも踏まえると、2基目・3基目のスタンピーダーがあらわれる事は無いだろう。
- ちなみに、NJCのベースマテリアルは技術大国のオーブ連合首長国の経済力・政治力を以てしても、辛うじて1つ手に入るかどうかの入手難度である。
- 前作『SEED』の最終話では、アスラン・ザラがジャスティスの核エンジンを暴走させて核爆発を起こしており、ニュートロンジャマーキャンセラーによる核エンジンの暴走自体は可能であった。
- スタンピーダーの最大の特徴は、この核エンジンの暴走を「外部から強制的に引き起こせる」ことにある。