概要
バグダッドとは、現代イラクの首都であり、中東の主要都市の一つ。その名は日本では多く「バグダッド」と表記されるが、現地アラビア語をカタカナに直すと、バグダードの方が近い。
地理
ティグリス川の中流、川の両岸に都市が形成されている。気候区分は砂漠気候。工業が盛んで絨毯や絹織物などの伝統工業に加えてセメントや石油化学などの近代工業もさかん。ムスタンスィリーヤ学院、アッバース宮殿などのアッバース朝時代からの遺跡も残る。
歴史
シュメール人の時代から集落とバグダドゥの地名があったとされるが、762年に現代に至る都市を築いたのは、アッバース朝イスラム帝国第二代カリフ、マンスール。直径が2kmを超える円形の城壁に守られ、ティグリス川、ユーフラテス川の接近する要衝を押さえるアッバース朝の都として築かれた。三重の城壁に守られた主要部分は西岸に築かれ、内部にはカリフの宮殿やモスク、周辺には官庁、親衛軍団の駐屯地などからなっていた。そして城壁外には商人や職人の居住地が広がり、最盛期である第5代カリフ、ハールーン・アッ=ラシード時代の人口は100万人を超えた、もしくは150万人を超えたともされる。当時の世界最大の都市である。アッバース朝は中央アジアのサマルカンド周辺から北アフリカのチュニス周辺に至る広大な領土を押さえ、バグダッドはシルクロード貿易で繁栄した。
しかし1258年にモンゴル帝国が侵攻したことで、アッバース朝は滅亡した。その後はチムール帝国、オスマン帝国、サファビー朝ペルシャなどの支配、争奪、略奪の地となった。中東の中心都市から転落したバグダッドはすっかり衰退した。
18世紀にはオスマン帝国のメソポタミア太守によって次第にバグダッドは復興していく。イギリス植民地時代を経て1932年にイラク王国が成立するとバグダッドはその首都となる。イラクは後に共和国となり、数々の戦争の舞台となるが、以後バグダッドはイラクの首都であり続けている。