曖昧さ回避
芸能界におけるバーター
テレビ番組や映画などにおいて、デビューしたての新人のようなあまり知名度の高くない芸能人を、同じ事務所に所属している人気芸能人、活動歴の長い大物と一緒に出演させるようなとき、前者の方を「バーター」と呼ぶ。
いわゆる「抱き合わせ」に近い。
英語の「barter」と少し重なるような表現だが特に関係なく、実際には「束(たば)」を逆さ読み(※いわゆる「業界用語」として、特定の単語を逆さ読みすることはよく見られる)したのが語源と言われている。
放送局や配給会社側には大物を呼べるというメリットがあり、芸能事務所側には売れていない芸能人にチャンスを与えることができるというメリットがある。
製作側の都合や芸能事務所側との取り決めで、一つの事務所である程度のキャスティングを揃えること自体は少なくない。複数のキャストが出演する作品で、クレジットに「製作協力」などとして特定の芸能事務所の名前が書かれている場合は大概そのパターンだといえる。
アニメ作品などにおける声優事務所も同様にバーターでの売り出しを行なっているが、一般芸能界と比べても特に事務所ごとでキャスティングを固める傾向が強い。
具体例としては東映動画(東映アニメーション)系列の作品において、青二プロダクションの所属者の出演が多いことが挙げられる。これは創設者が東映作品へのキャスティング・マネジメントを多く手掛け関係が深かったことに由来し、東映直属の養成所・プロダクションである東映アカデミー(現在は東映東京撮影所に統一)からのキャスティングが行われるようになるまでは、ほぼ専属に近い状態でキャスティングを手掛けていた。
現在でも『ONE PIECE』などは主要キャストからモブまで青二プロ関係者が多く、OP(もしくは廃止前のED)で「協力」としてクレジットされているのが確認できる。
当初はバーターとして売り出された人が、(時に元の芸能人よりも)人気や知名度を獲得するようなこともある。例えば松坂桃李(トップコート)は2018年に「(デビューとなったシンケンジャーを除いて)初めてドラマ出演が決まった際には、マネージャーから『バーターだからね』と言われた」と語っている。この「初出演が決まったドラマ」とはおそらく『チーム・バチスタの栄光』のことで、トップコートが渡辺プロダクションの流れを汲むことを踏まえると、ナベプロ所属の出演者のバーター扱いであったと推測される。
また、バーター側が有名になってからもさらに先輩の芸能人に付き添うようなこともあり、例えば石原プロダクションは「渡哲也のバーターに舘ひろし」のような「石原軍団」としてのキャスティングが行われることも多かった。
芸人でも行われるが、バーターでしか見ない人は馬鹿にされる風潮がある。