概要
日本列島には、本種の他に現在のヨウスコウワニなども生息していたが、それらの中でも最大のワニともされている。
1964年に大阪府豊中市柴原の待兼山丘陵に位置する大阪大学豊中キャンパスの理学部で新校舎建設現場から最初の化石が産出し、それらの化石の研究から現在の東南アジアに棲息するマレーガビアル(トミストマ属)に近縁と考えられ、1965年にトミストマ・マチカネンシスと命名された。しかし18年後、日本を代表するワニの研究者の青木良輔氏により新種と判明した。古事記において、子を生む時にワニに姿を変えたという伝承を持つ日本神話の女神トヨタマヒメに因み、1983年にトヨタマフィメイア・マチカネンシスに改名された。
分類上はクロコダイルに近縁だったようだが、地質年代などの調査から、ワニの中でも珍しい温帯性だった。全長は7メートルに達し、魚などの水生動物の他、オオツノジカなどの哺乳類を捕食していたと考えられている。また最初に見つかった化石は、生前同種との戦いで負ったと思われる怪我がいくつも確認されており、下顎の先端部は失われていた。とは言え暫くは生きていたことから、現在のワニと同様高い生命力の持ち主だったらしい。
発見された大阪では大阪大学の公式マスコットキャラクター「ワニ博士」などとして親しまれており、2014年には国の文化審議会において、国の登録記念物として登録されることが認められた。
また、本種の研究に携わった青木氏は、中国の幻獣「龍」の正体はこのマチカネワニではないかとも推測している(後に「ハンユスクス」と命名されるマチカネワニに近縁の古代ワニが中世あたりまでは中国南部に生息していたが、開発や狩猟などの人為的な影響で絶滅したらしいことが判明している)。なお、このワニの学名のもととなったトヨタマヒメは、古事記ではワニに姿を変えたとされるが、日本書紀では龍に姿を変えたと記述されている。