概要
ヘブライ語: המוסד למודיעין ולתפקידים מיוחדים、ラテン文字: HaMossad leModiʿin uleTafkidim Meyuḥadim.
言わずと知れたイスラエルの諜報機関である。イスラエル諜報特務庁と訳される。
現在の長官はデビッド・バルネア。
主に国外を担当する組織で、軍事担当のイスラエル国防軍情報部「アマン」、国内・占領地担当のイスラエル公安庁「シャバク(シン・ベト)」と役割分担をしている。
根拠法が存在せず、ゆえに非合法活動が可能と解釈されている。
アメリカがモサドの情報を欲しがっているのはCIAだと金で情報が転ぶのが原因だからである。
そしてFSBやКГБ以上の実力を持っている事は忘れてはならない。
だが、謎の多い組織で有名であることも事実である。
とはいえ、近年は諜報機関にも最低限の情報公開が求められる時勢であり、公式Webサイトも存在する。
任務はもちろん秘密であるが、情報収集としてヒューミント(人的諜報)とシギント(盗聴・通信傍受による諜報)を行い、エジプトやヨルダンとの国交正常化の根回しなど、大っぴらに行いにくい外交活動に功績があった事は記されている。
公式X(旧Twitter)アカウントも存在するが、パロディアカウントの方が圧倒的に人気があるため、ある意味囮として働いている。
ベンヤミン・ネタニヤフ政権では、当時のヨシ・コーヘン長官が外遊に随行するなど、以前に比べて表だった外交活動が増えた。
採用方法について。
採用方法は謎が多いが志願制を採用しておらず、適任者を3~4年で身辺を調べて合格したら採用する方針を貫いている。
その為、志願制をやっているCIAやMI6とは違い、誰でもなれる訳ではない。
イスラエル国内の評価。
イスラエル国内の評価は、存外高くないという(辻田俊哉「モサド 失敗の系譜」 立山良次編著『イスラエルを知るための62章』p207-211)。これは、モサドの活動が、基本的に非合法であるからで、成功したからといって大っぴらに称賛する事は憚られる(例:要人暗殺)仕事が多いからである。
例えば、1972年のミュンヘンオリンピック事件(「黒い九月」事件)でイスラエル代表選手を殺害した実行犯らの暗殺や、近くは2024年のハマースのイスマイル・ハニーヤ政治局長の暗殺や、レバノンのヒズブッラー党員らのポケットベル・トランシーバーなどに爆弾を仕込んで少なくとも13人を殺害した事件はモサドの「成果」といわれている(ポケベルについてはイスラエル国防軍との共同作戦という)。
イスラエルにとっての敵を始末した以上、成功すれば隠然と(時には公然と)イスラエル国内では称賛されるが、それでも決定的な証拠が出て来ない限り、表向きは犯行声明を出すことはなく、一方で積極的な否定もしない。国際的には犯罪でしか無いからであるし、疑心暗鬼を生じさせて抑止力とする意味もある。いずれにしても、大っぴらな称賛には限界がある。
モサドが話題になるのは、任務が失敗して非合法活動が明るみに出た結果、マスコミや第三国などから責任追及をされる事例が多い。
例えば、1997年にヨルダンで起きたハマースのハーリド・マシャアル政治局長暗殺未遂事件。カナダ人を装った二人のモサド工作員がマシャアルに毒を盛り、逃走を図ったがヨルダン当局の御用となり、犯行が明るみに出た。その結果、ヨルダンの要求に従ってマシャアルへ解毒剤を渡し、さらに工作員釈放の交換条件として、ハマース創設者の一人で終身刑で服役中だったアフマド・ヤシンを釈放せざるを得なかった(ヤシンは2004年、イスラエル国防軍に暗殺された)。工作員がカナダの偽造旅券を使用していたことから、カナダへの釈明にも追われた。
表立って話題になるのが失敗した時であるために、イスラエル国民には失敗例ばかりが印象に残ることになる。
その他。
モサドは皆をイスラエルの地に戻す事を前提としており、モサドの殉職者を1人だけ覗いて自国に連れ帰した実績がある。
又、КГБ等のロシアの諜報機関と同様に金で転ぶことが殆どないので諜報員(スパイ)の信用度は厚い。
一方で、コーヘン前長官が、退職後にソフトバンクグループの投資ファンドに再就職したのは、諜報能力がサイバーセキュリティに役立つことを期待しての物である。