ハマス
はます
1987年12月24日、第1次インティファーダ(民族蜂起)期に設立、パレスチナ解放機構の影響下にない土地奪還機関としてシャイク・アフマド・ヤシンにて設立、イスラーム抵抗運動のアラビア語による頭文字をとったHamasとし、同言語にて「情熱」、「勇敢」などの意味。読みとしては「ハマース」表記が近いが、日本では長母音を省略した「ハマス」表記が一般的である。
世論ではパレスチナが擁護される事が多いが、ハマスはイスラエルからはもちろん、米国・欧州連合・日本の公安調査庁などからテロ組織として認定されている。とはいえ、2006年のパレスチナ議会選で第1党となるなど、パレスチナ世論の相当部分を反映している組織でもある(ただし、総選挙は2010年の任期満了後も実施できていない)。
イスラエルからはISILと並べて非難される一方、ISILからは「イスラム法に背き議会政治を受け入れている」などこれまた別の意味で非難されている。
しばしばテロリストが病院を運営しているのはおかしい、あり得ないなどと評されることもあるが、歴史で述べるようにハマスが病院を経営するのはむしろ当然である。同じく2007年以降は実質的にガザ政府としても機能している。すなわちニュースでよく出てくる「ガザ保険省」はハマスの組織である。同省の情報は国連などの第三者組織※にも引用されるなどそれなりに信憑性が認められる一方で、民間人と戦闘員の死者数の混同、被害の元となった攻撃がハマスなのかイスラエルなのかを精査せずイスラエルの攻撃と見做している、などの問題や批判もある。
※国連などはガザ地区を巡る騒乱における第三者組織という立ち位置に一応なっている。
が、世界各国(代表的なのはアメリカだがEUなどでもユダヤ系デモなどは頻発している)の金融や政財界にパイプを持つユダヤ人達の一種のアイデンティティとなっているイスラエル国と、石油関連で世界のエネルギー市場に強い影響力を持つアラブ系の武力面での先鋒とかしているハマスが絡む問題である以上、真の意味での中立な第三者組織など存在しないというのは念頭に入れておかなくてはならない。
前身は、エジプトで結成されて中東各地に広がっていたムスリム同胞団という宗教団体のパレスチナ支部である。ムスリム同胞団は1970年代以降には武装闘争を停止して穏健派に転じ、パレスチナ支部でも学校の建設、医療、救貧などの活動を行っていた。パレスチナ解放機構(PLO)などの他政治勢力において内政への関心が薄い中、ムスリム同胞団はこのような活動によってパレスチナ全土において広く支持されるようになっていった。そして1987年、ハマスとしての組織が成立する。PLOがオスロ合意に応じて中東和平への協力を開始すると、和平反対派がハマスに合流するようになる。
ハマスは政党「イスラーム抵抗運動(通称ハマース)」、社会奉仕団体「ダアワ」、武装組織「イッズッディーン・アル=カッサーム旅団」の三部門に分かれ、ある程度独立して行動しているとされる。一般的には、全体の総称がハマスということになる。
教育や福祉などで地道な活動を続けたため、市民からの信頼は高い。創設者の一人ヤーシーンはイスラエルに暗殺されている。
憲章でイスラエルの国家承認を否認しているが、2017年に国連安保理決議242号(1967年の第三次中東戦争停戦決議)に基づく国境線を認める改訂を行った。同時に、ムスリム同胞団との関係を解消した。
2023年10月7日、ハマスはイスラーム聖戦、パレスチナ解放民主戦線などと共同で「アル=アクサーの洪水作戦」と号し、イスラエル領内に侵攻。イスラエル側は軍民(外国人労働者含む)合わせテロ行為で約1200人(当初発表は約1400人)の犠牲者を出した。ハマスなどは約1600人が戦死した。
残虐な殺害方法からISISと比較されたが、当初「赤ん坊を斬首した」と弾劾された現場でのちに赤ん坊はいなかったとされるなど、情報は錯綜している。
イスラエル国防軍は「鉄の剣作戦」と号してガザ地区に侵攻し、戦いはなお続いている。ガザ保健省によると、2024年9月16日現在で41206人のガザ地区住民の犠牲者が出たが、戦闘員の割合は不明である(イスラエル国防軍は8月15日現在で「17000人のテロリストを排除した」としている)。
また、イスラエル国防軍によると、9月16日現在の「鉄の剣作戦」戦死者は342人である(当初のハマスなどによる侵攻の戦死者367人と合計で709人)。
イスラエル側のいう「スーツを着て世界中を旅する人」はハマスの在外指導者を指す。ハマスの指導部はカタールの豪邸から指示しており、その富豪ぶりはBBCでも取り上げられた。
カタールに滞在していたイスマイル・ハニーヤ政治局長、そしてガザ地区にいるガザ地区政治局長のヤヒヤ・シンワール、ムハンマド・デイフ司令官(武装組織代表)は2024年、それぞれ戦争犯罪の被疑で国際刑事裁判所判事から逮捕状を請求された(一方で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、ヨアフ・ギャラント国防相もやはり戦争犯罪の被疑で逮捕状を請求された)。
ハニーヤがイランを訪問した際に暗殺されると(イスラエルの犯行がほぼ確実)、シンワールが代わって政治局長となった。また、デイフもイスラエル国防軍によって戦死した。
メンバー
⋯2代目指導者ランティーシーが暗殺されてからのハマス指導者。1997年、モサドの暗殺未遂(毒殺)を受けるが、実行犯を逮捕しイスラエルを脅す。ベンヤミン・ネタニヤフは当初拒否するが、アメリカ大統領、ビル・クリントンが介入するまでの事態になり、交換条件を渋々受け入れる。
元メンバー
シャイフ・ハッサン・ユーセフの息子。モサブが個人名でハッサンが父の名前、ユーセフは父の父、すなわち祖父の名前。シャイフは称号であり個人名ではない。
著書『ハマスの息子』。78ラマッラでムスリム家庭生。87第1インティファーダでの投石など、少年時代からパレスチナ人の抵抗運動に身を投じ、イスラエル軍に捕えられ投獄・釈放を繰り返す。獄中で見たハマスの実態に衝撃を受ける。その後、イスラエル総保安局シン・ベットに協力し、シモン・ペレス外相/現大統領の暗殺計画阻止をはじめ、多くの無辜の市民の命を救う。2023年10月7日に起きたイスラエル・ハマス戦争を受け、国連にて演説。
FOXニュースのインタビューに応じるモサブ。