概要
ワヤン・クリとは、インドネシアのバリ島やジャワ島で上演されている伝統的な影絵芝居である。この芝居で用いられる、牛の皮に細かい穴が開けられて作られた独特の様式の操り人形もこの名で呼ばれる。
日本では単にワヤンとも呼ばれるが、ワヤン(Wayang)は影、クリ(Kulit)は人形の材料である動物の皮を意味する。(人が演じるワヤン・オラン、人形劇のワヤン・ゴレもあり区別される)
10世紀頃には演じられていたという記録があり、現代では白いスクリーンに石油ランプで光を当てて、その間で人形遣いダランによって演じられ、2名以上のガムラン奏者のグンデル(鉄琴)によってバックミュージックが奏でられる。
演題はインドネシアの民話や神話の他、バリ・ヒンドゥーにおいてアレンジされた、古代インドの叙事詩『ラーマーヤナ』や『マハーバーラタ』が主である。
なお人形には鮮やかな彩色がなされているが、影絵にすることで観客には色はわからない。
これはあの世の鮮やかで美しい色彩は、現世では白黒にしか見えないという哲学ゆえであるといわれている。
また、この人形の中心には下が尖った棒が付けられており、地面に刺すことで一度に複数の人形を出演させることができるのである。
その独特の様式故に2003年に内定後、2009年9月にユネスコの無形文化遺産に正式に登録された。