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ワン・オブ・サウザンド

わんおぶさうざんど

「ワン・オブ・サウザンド」とは、漫画シティーハンターに登場した「偶然により生まれる名銃」のことである。
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概要編集

日本語訳するなら「1000分の1」。1000作られた中に1つしかないほどに珍しい銃という意味である。

大量生産される製造ラインの中で、量産品のパーツの中からたまたま高精度になったものが偶然1丁に集まった結果生まれた奇跡の銃のことを指す。


シティーハンターのワン・オブ・サウザンド編集

冴羽獠千丁製造するうち、1丁できれば良いと言われるところから ─ 千丁に一つの銃と呼ばれている!



原作37話、その名も「ワン・オブ・サウザンドの巻」と、類似内容のアニメ版8話「美人に百発百中(ワンホールショット)?! 女刑事には手を出すな」に登場した半ば架空の拳銃

上記引用の冴羽の台詞では「千丁に一つ」の部分に「ワン・オブ・サウザンド」とルビが振られている。


銃としての機種は、リボルバー拳銃の老舗として名高いスミス&ウェッソンの41マグナムModel58拳銃で、これは実在する。

一部に同社の高級モデルと共通する設計はあれど、特に際立った名銃や精度特化型の銃という訳ではないどころか、この銃は「.41マグナム・ミリタリー&ポリス」という別名の通り、軍隊警察の装備品として大量配備することを視野に入れた量産型拳銃であり、万単位の数で大量に製造販売されている

しかし、冴羽が持ち込んだ1丁は、その言葉通り「偶然に組み合わされた量産パーツの精度が奇跡的に良い方に噛み合って、どんなに腕のいい銃の名工でも再現できないほどの精度となった1丁」であった。

触れ込みに違わぬ高い精度を発揮し、冴羽の超人的な銃の腕と相まって、拳銃でありながら狙撃銃でも困難な離れ業を実現し見事に依頼を成功へと導いている。


M58の英語版Wikipediaには2万丁以上作られたという記述もあるので、冴羽が述べたような「偶然すごい条件が揃った個体が発生し得る」という物語の題材に適しているとも言える。

もし本当に額面通りワン・オブ・サウザンドが出現するならば、「超高精度のM58」は、世界中に20丁ほど存在するかもしれない…というレベル。その全てが完璧なコンディションで流通する事は無いと考えると数はさらに減るわけで、けっこうなレア物である。


基本的に愛銃のコルトパイソン1丁で早抜き射ちから長距離狙撃まで、ありとあらゆる射撃をこなしてしまう器用万能の冴羽が他の銃を使う珍しいシーンの一つでもあり、困難な依頼に対して秘蔵の一品を持ち出してきた、あるいは調達してきたのだろう。


他作品に登場するワン・オブ・サウザンド編集

サバイバルホラーゲームバイオハザード・ディレクターズカットのアレンジモードでは、オートマチック拳銃ベレッタ92FSのワン・オブ・サウザンド個体とされる1丁が登場する。

たまにゾンビを一発で撃破するクリティカルヒットを出す効果があり、精度が良いというよりは、通常のベレッタにラッキーヒット的な能力をつけた強化版という位置づけ。


実銃では編集

流石に工業製品の規格として一定範囲内に収まるレベルとはいえ、どれだけ精巧な製造ラインで作られた銃器でも精度のバラつきは発生する。

これがたまたま良い方にバラついた場合、他より精度の良い個体が製造ラインから稀に出現する事は現実的にあり得るので、それをシティーハンターのような荒事のプロや狙撃手、狩猟者、射撃競技選手などが買い求める事は、簡単ではないだろうが不可能でもない。

小銃の狙撃モデルなどでは、製造ラインから精度の良い個体を選び出して狙撃モデル用の加工ラインに送り込むという製造方法を採っているものもある。


この点で「ワン・オブ・サウザンドの銃は実在し得る」と言えるが、銃のメーカーが大量生産をする過程のテストでそこまで厳密に高精度の銃を選抜し、個別に取り分けてくれる体制を整えていないと、せっかくの1000分の1が流通に乗っても区別はできない。

もしワン・オブ・サウザンドが発見されるとすれば、たまたま購入した人間が銃の精度をとても気にする人物で、買った銃をきっちりと計測して精度が高いことに気づき、それを丁寧に保存していなければならないだろう。


また、銃という道具は動作による激しい衝撃、火薬の燃焼による高熱や高圧力、使い手の荒っぽい操作などに常に晒されるものであるため、パーツが擦り減ったり変型したりする事は避けられない。

それを磨きなおしたり交換したりすれば「奇跡の噛み合い」は失われてしまうし、射手に合わせたパーツに換えたり分解整備することでもズレが起こりかねない。

ある程度の優れたベースとしては残るにせよ製造時の精度がそのまま100%維持され続ける事はあり得ないので、射撃精度の実用性を求めてワン・オブ・サウザンドを入手できたとしても、精度を確認するため試し射ちするほど、実用品として使い続けるほどに、その1000分の1の特徴は変化して失われていくという二律背反を抱えてしまう。

冴羽のような「ここ一番の大勝負」に使うにせよ、結局は、その都度整備と試射をして細かい調整を加え、その時々のベストの状態を探っていくという、銃としてごく普通の愛用法を心がけねばならない。


それなら普通に流通する中でそれなりに精度の良い個体を選んで買い、パーツの方を厳選なり特注なりして使い手に合うようにカスタムし、それで試射を繰り返して調整してしまえば良いという話に落ち着く。

総合して見ると、ワン・オブ・サウザンドの銃は実在し得るが、見つけ出して入手することも、その性能を維持することも難しく、その割にいきなり一発勝負を任せる訳にもいかない。結局は普通の銃と変わらなくなってしまうということになるだろう。


命中精度に大きな影響を与える銃弾もまた、「ファクトリーロード」や「ファクトリーアモ」と呼ばれる工場製の弾薬では規格公差内のレベルで精度にバラつきが出ているので、銃がワン・オブ・サウザンドなら良いと言う訳でもない。

流石に銃弾は試射すなわち消費なので使って確かめることはできないが、特に精密な射撃競技などではこの微妙な差すら結果に影響するため、工場内で加工精度が良い弾薬を選んだものや、専用のラインで作った高品質なものが競技用の「マッチアモ」として通常より高値で販売されている。

もっとこだわる場合は、選手自身や専門の職人が、「ハンドロード」として弾をイチからカスタムする。

質のいい薬莢を再利用する、弾頭を自家鋳造したり精密に磨き出す、データに照らし合わせながら発射用火薬の質や量を微妙に調合する、手動式のローダーで一発ずつ薬莢と雷管に組み付けると、やっていることはほぼ弾のオーダーメイドであるが、究極的な命中精度を求めるとこうした全体的なセッティングが必要になってくるのである。

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