曖昧さ回避
なんJ語としての「予祝」
プロ野球・阪神タイガースの第34代監督・矢野燿大氏は、以前からメンタルトレーナーの大嶋啓介氏と個人的な親交があり、2018年の二軍監督時代から「試合前に選手の活躍予想を書く」「シーズン前から優勝を前祝いする」「日本シリーズ優勝の瞬間を想像する」「シーズン中に優勝旅行について語る」などの考えを持ち込むほど、予祝に傾倒。実際、矢野監督の指導を受けた選手が好成績を残し、チームは3年連続Aクラスを達成していた。
2022年、「学校の先生みたいな立場の自分にとって、これ以上選手へ教える事はない」という趣旨の理由からキャンプイン前に「シーズン終了後の退任」を発表した矢野監督であったが、いざシーズンが始まると開幕9連敗を記録。キャンプ中に外部から講師を招いて数時間の予祝セミナーを連日開催していた点、勝利を願って試合前の「予祝ハイタッチ」も取り入れられていた点、そして後述の4月15日の試合後の矢野監督の行動が目立ってしまい、「予祝」がなんJ語としての一大ブームを巻き起こした。
この年の阪神タイガースは、貧打ではあったものの持ち前の投手力でそれをカバーし交流戦は2位&リーグ最終順位は3位で終了。結果的に矢野監督は「在任期間全てのシーズンをAクラスで終える」という快挙を果たしている。
2022年2月23日
キャンプのさなか、宜野座村野球場で行われる予定だった広島東洋カープ戦が雨天中止。豪雨に見舞われた宜野座のドーム内で、糸井嘉男・西勇輝両選手による漫才風の掛け合いと矢野監督の「予祝胴上げ」が行われた。
西勇「僕は予祝を持ってきました。ルーキー、ルーキールーキールーキー(誰か居ないかな…)、桐敷!意味分かる?」
桐敷「……」
糸井「いや、分からんやろ!(西にツッコミ)」
西勇「調べてきました、はい。未来の姿を先に喜び、祝ってしまうことで現実を引き寄せることを予祝と言います。」
西勇「このチームで予祝をやってきて、みんな考えながらやっていると思う、みんなね。けどただ一つ、できてないことがある。分かる、テル?」
佐藤輝「ちょっと分からないです。」
西勇「馬場、分かる?」
馬場「分からないです。」
西勇「糸井さん、分かりますか?」
糸井「一つしかないやないか!優勝に向けて練習してるわけでしょ。でもこれは練習してないと思うで、脱ごか?(シャツに書かれた『胴上げ』の文字を披露し)コレちゃいますか?」
西勇「胴上げです!今から監督を胴上げしようかなと思いますんで。いいですか?」
糸井「これは予祝です!」
- 当時1年目の桐敷拓馬選手に対する「ルーキー、桐敷、意味分かるか?」という質問の汎用性が高く、意味不明な行動や言動に対して「ルーキー、桐敷、意味分かるか?」と付け足すルーキー桐敷構文が流行、あらゆる場面で彼が困惑させられるコピペが生まれた。
2022年4月15日
レギュラーシーズンの読売ジャイアンツ戦。当時阪神タイガースは6連敗中で勝率1割を切る低迷ぶりであったが、巨人を逆転で下し4-1で勝利。すると、試合後のインタビューで矢野監督は一枚の色紙を取り出して全国に発信。選手への労いやファンへの感謝よりも先に予祝関連の話を持ち出したことで、ネタに拍車がかかった。
記者「相手はジャイアンツ、明日以降2戦目3戦目とありますが、タイガースファンとしましては熱い試合を期待してると思います。監督からはメッセージお願いします。」
矢野「ちょっと時間大丈夫ですか?」
矢野「あの~今日僕の友達の文字職人の杉浦誠司さんに今日来ていただいて、365枚ある札の中から、漢字を一文字引き当てるんですけど、僕がチームに、イメージしながら引いたのが、『波』という字でした。」
矢野「それを、出してくれたメッセージなんですけど。波も引く、潮もね引いて、波が起きる、浮き沈みもあるけど、みんなで大きい波を作っていこう、それが楽しむことが一番大事じゃないかっていうメッセージをもらってね、今日戦ってきました。誠司さんありがとうございます。」
- 予祝そのものがオカルト染みた行為にしか見えなかったためか、当時ぶっち切りの最下位に沈んでいた阪神に対し「予祝が不足している」「実際には予呪なのではないか?」と揶揄された。
- 「誠司さんありがとうございます」というセリフが一人歩き。名前が「誠司」のプロ野球選手が活躍すると、(どの球団のファンを問わず)「誠司さんありがとうございます」と感想を述べるようになった。
- ゲーム「ブルーアーカイブ」の公式YouTubeチャンネル内の1コーナーに、「早瀬ユウカ」が登場する「先生、ちょっとお時間いただけますか?」があり、矢野監督の「ちょっと時間大丈夫ですか?」とあまりにもセリフが似通っているだけに、(TwitterなどSNSで)ネタとして取りあげる人もいる。お時間いただけますか=ユウカ、時間大丈夫ですか=矢野。
- 文化放送「超!A&G+」では、矢作紗友里・佐倉綾音の2人によるラジオ番組「矢作・佐倉のちょっとお時間よろしいですか」が2012年からの3年間放送されており(以下同文・以下略)