兵隊やくざ
へいたいやくざ
有田上等兵は帝国陸軍に入隊して3年、満州北方の孫呉に駐屯する部隊の中では最古参の兵士である。
同期の仲間は皆幹部候補生試験を受けて下士官へなったが、有田だけはワザと落第して、4年の兵役期間を終えたら内地へ帰る腹積りであった。
軍隊という理不尽と暴力が渦巻く「莫迦かキチガイにでもならないと生きてゆけない世界」から一刻も離れたかったのだ。
ある日、有田は人事係の准尉に呼び出されて、新兵の世話を命ぜられる。
准尉が言うには、新兵の中に「とんでもない馬鹿力で、喧嘩がめっぽう強く教育係が散々手を焼いた男」がいるので、そいつの世話を任せたい、という話だった。
「とんでもない男」こと大宮貴三郎二等兵は、確かに態度が横柄で上官を上官とも思わず、どんな制裁も通じない男であったが、接してみると元俠客であったためか筋は通すし忠義の厚い男であった。
入隊以後、喧嘩や無断外出などで有田の手を散々焼かせた大宮であったが、有田はその度に熱心に庇った。
不条理の塊のような軍隊で、不器用ながらも一本気な大宮は、有田にとって決して見捨てられないかけがえのない戦友であった。
やがて、有田と大宮にとって受け入れがたい理不尽な命令が下るが、大宮は「今度は自分が上等兵殿を助ける番です」という。何か策があるらしいが…
大宮貴三郎:勝新太郎
有田上等兵:田村高廣
みどり:滝瑛子
音丸:淡路恵子
憲兵:成田三樹夫
黒金伍長:北城寿太郎
石上軍曹:早川雄三
阿部軍曹:仲村隆
白井上等兵:藤山浩二
衛兵司令:夏木章
木下一等兵:蛍雪太朗
野木二等兵:森矢雄二
八束二等兵:渡辺鉄弥
炊事兵:九段五郎
中沢准尉:内田朝雄
桃中軒梅竜:山茶花究
衛兵:佐藤八郎
おくま:村田扶実子
「いろは」の用心棒:谷謙一
助手:佐山真次
中隊長:網中一郎
本作の大ヒットを受けて、同様に勝新太郎主演の戦争映画が「兵隊やくざ」というタイトルでシリーズ化された。
シリーズは1968年の第8作『兵隊やくざ 強奪』で終了したが、旧大映倒産後の1972年に勝プロダクション製作で『新兵隊やくざ 火線』が公開された。
この『新兵隊やくざ 火線』は制作・配給会社の違いから他の8作品とは違い1980年代にVHSが発売されたのみでソフト化に恵まれなかったが、2020年にDVDが発売された。