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冷蔵車とは、断熱構造の荷室を持ち、鮮魚や枝肉・精肉などの生鮮食品を低温に保ちながら輸送できる設備を持つ車両である。

 広義には、鉄道車両(貨車)のみならず、同様の設備を持つ貨物自動車なども「冷蔵車」と呼ばれるが、現在のところPixiv上には鉄道車両以外投稿されていないため、特記がない限り鉄道車両に関するものである。

概要

 日本では、幹線道路や高速道路網が本格的に発展するのは1960~70年代であったため、それ以前は生鮮食品であっても基本的に鉄道によって輸送されていた。

 国鉄で運行されていた冷蔵車は、白色の塗色が基本で、フロンガス・コンプレッサー・エバポレーターなどを用いた「冷凍機械」は用いられず、ドライアイスといった冷媒で貨物を低温に保つというものであった。

 断熱材は登場時から終戦直後の頃まで主にフェルトやコルク材が使われていたが、後により断熱性の良いガラス綿(グラスウール)を採用した車両が登場すると、以後ガラス綿が主流となった。


運用

 当初は漁港に近い駅を常備駅として定め、そこで貨物を積載して市場最寄駅まで輸送し、空車で常備駅へ返送する運用を組んでいた。後に貨車の配備事務が改善されたことで特に常備駅を定めないで柔軟に運用されるようになった。


 鮮魚輸送特有の運用方では着駅変更・着駅留置を行っていた。まず着駅変更は鮮魚を発送後、市場の状況を見て目的地を変更すること。着駅留置は市場の駅に到着時点での相場が荷主にとって好ましくない水準であった時に市場の側線に冷蔵車を留置して倉庫代わりにし、相場が好ましい水準になったら出荷するというもの。着駅変更・着駅留置は特急鮮魚貨物列車では行われていない。


 車両の洗浄は主に到着駅で国鉄が委託した業者が行っていた。東京市場駅(築地市場)では水道代を節約するために海水を浄化して洗浄水に使用していた。


終焉

 長らく国民の台所を支えた冷蔵車は、1970年代には労使問題も悪化とストライキの頻発によって指定した日時までに必ず到着することが至上命題である生鮮食品の荷主からは敬遠されるようになった。

 また、国鉄としても基本的に食品以外は積み辛く、生産地からの往路は荷物を積んで消費地に向かい復路は空荷といった具合に運用効率が悪く経営的にも難がある車両でもあった。

 このため、他に替わるものが無かった長距離特急貨物列車等を除いて徐々に運用が削減され、1986年には特急貨物列車用を含む全ての冷蔵車が、より柔軟に運用出来る冷蔵コンテナ(を載せたコンテナ貨物列車)に置き換えられて姿を消した。

有蓋車との相違

 冷蔵車の車体は基本的に有蓋車に準じた構造であるものの、有蓋車と混用されることは無かった。


 無論、食品を載せるために衛生管理に特段の注意が必要であるため運用は分けることが望ましく、また生鮮食品ばかり載せていると荷室が生臭くなるがそれ以外にも次のような問題があった。


積載量

 冷蔵車の場合、車体の屋根・床・壁には断熱材が埋め込まれており、また断熱性を確保する為に荷役用の扉は必要最小限の大きさである。

 つまり、有蓋車と同様の構造であるにもかかわらず、同じ年代・同じクラスの有蓋車と比べると断熱材が足されているため車重が重くなる代わりに積載可能重量が低い傾向があり、また扉が比較的小型であるため、仮に同じ大きさの貨物を同じ量積み下ろしする場合に時間が掛かる。

 このため「この列車の有蓋車が足りないから冷蔵車で…」という具合にピンチヒッターに安易に充てがうことは出来なかった。


扉の構造

 冷蔵車は断熱性・気密性を確保するために扉が車体と密着するように外開きの開き戸になっており、引き戸である有蓋車とはこの点でも大きな違いがあった。

 当時、有蓋車の荷役を行うプラットホームではホームの端まで貨物が積まれることが往々にしてあった。

 有蓋車の場合、扉は基本的に引き戸で車体に沿って開くため仮にホーム端まで貨物が積まれていても問題なく開閉できたが、開き戸の冷蔵車の場合は仮にホーム端まで貨物が積まれていると扉が開閉出来なくなってしまう可能性があった。


 このため、レ厶1形(Wikipedia)など少数の例外を除いて有蓋車として生鮮食品以外の貨物を積むことは無かった。


おもな日本の鉄道冷蔵車

 レ5000 / レ7000 / レム5000 / レキ1 / レサ10000 / レサ5000


冷凍機械を載せた冷蔵車

 機械力でフロンガスを循環させて低音環境を得る「冷凍機械」を搭載し、いわば電気冷蔵庫クーラーと同様の仕組みで貨物を低温に保つ車両も少数ながら存在した。

 何れも1960年代に在日アメリカ軍の要請に基づいて開発されたもので、当時アメリカ本土で一般化していた冷凍食品を補給物資として日本各地の基地に輸送するためのものである。

 これは、車体が断熱構造の冷蔵車を改造し、車体に冷凍機械とそれを駆動させるディーゼルエンジン・燃料タンクを載せて、荷室内を長時間ごく低温に保つ事ができた。

 最初に戦前に製造された木造の2軸車レ5000(レ5003)で試験が行われ、結果が良好であったためレ7000を改造した「レ9000」(9000~9006の計7両)、ボギー車のレキ1を改造した「レサ900」(900~903の計4両)が登場し、何れも横浜の東高島駅常備とされた。

 後に横浜港駅へと常備駅が移ったものの、車両の老朽化などを理由に1974年にまでに全て廃止されている。


 現在生鮮食品類の輸送に使われている冷凍コンテナも、コンテナそのものに冷凍機械やその動力源が内蔵されているため、この手の車両に似た手法である。


関連項目


貨車 鉄道

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