概要
2004年6月1日、当時福岡ダイエーホークスに在籍していた杉内俊哉投手が千葉ロッテマリーンズ戦に登板するも大乱調。ノックアウトされベンチに戻った後、自分のふがいなさに憤り、右手のみならず利き手の左手でもベンチを殴って両手を骨折(負傷、全治3ヶ月)してしまう。
この時正捕手の城島健司が「利き手はやめろ!」と叫んだのだが、それを報じた日刊スポーツネット版にはなぜか「利き手はやめろ!ブルガリア!ブルガリア」と掲載されてしまった。
「ブルガリア」の部分はしばらくしてカットされたものの、深刻な事態で唐突に出た単語が意味不明というギャップから、当時のネット黎明期では瞬く間にネタにされた。
記述削除にあたって日刊スポーツ側からの説明が一切なかったこともあって、都市伝説のような扱いを受けることもある。
また、この事件以降「選手やコーチがベンチやロッカールームで暴れる(自傷行為に走る)」様子が「ブルガリア」と称されるようになった。
杉内投手は読売ジャイアンツ在籍時の2018年9月11日に現役引退を表明したが、当日のツイッターでは「ブルガリア」がトレンド入りするなどした。
なお、杉内は(特に移籍後は)ほとんどこの事件に触れることはなく、半ば黒歴史と化している。
なぜ「ブルガリア」なのか
「ブルガリア」は、現在では単なる記者の打ち間違いや変換ミス(誤植)という意見が主流だが、事件直後から以下のような推測が立てられていた。
- 杉内のあだ名説
当時、杉内が明治のブルガリアヨーグルトが好物であった、もしくは、杉内が前年に10勝を挙げていたことから「10勝」→「十勝」→「明治北海道十勝シリーズ」→「明治と言えばブルガリアヨーグルト」という連想で「ブルガリア」というあだ名で呼ばれていたという説。
杉内本人や城島をはじめ他の選手から一切そのような話がないため可能性としては低いといえる。
- 聞き間違い説
本来は「ぶん殴るな!(ぶつけるな!)」や「馬鹿野郎!」、「殴るな俊哉!」など、「ブルガリア」に響きの似た別の言葉であったのを記者が聞き間違え、聞こえたままに綴った説。
また、似た言葉なら変換ミスの可能性にもある程度信憑性が出てくると言える。
- 別のニュースが原因でミスをした説
そもそも、仮に打ち間違いや変換ミスだとしても「なぜブルガリア」なのかは意味不明であるが、これについて「同日の別のニュースが原因で入力を誤ったのでは?」という説。
例えばブルガリア出身の琴欧州が活躍した時期であったことや、事件の前後にはサッカーの国際親善試合などが開催されていることなどから、これらの記事を執筆していた関係でミスが誘発された可能性がある。
- 手書き原稿の読み取りミス説
本来は「ブルガリア」ではない別の言葉を手書きの原稿に書いていたのが、OCR(光学文字認証)での書き起こしや別人による入力作業の段階で読み取りミスが起き、「ブルガリア」となってしまった説。
ただし、他の文章に大きな間違いがないことから考えにくい。
- ステルスマーケティング説
ここまで来るともはやネタだが、サブリミナル効果のように一見無関係な話題を差し込むことで逆に強烈な印象を刷り込む、というマーケティングの一環であったのではないかという説。ただし、そうなるとなぜ明治ともダイエーとも無関係の日刊スポーツがマーケティングに加担したのかがわからない。
- 釣り人の間の隠語説
城島が釣り好きであることから「ブルガリア」とは釣り人の間で使われているなんらかの隠語であった、という説。
ステマ説以上の珍説だが、釣り用語は独特な比喩が多く(例えば「自分と相手の仕掛けが絡まってしまった状態」を「オマツリ」というなど)、全くありえないとも言い切れないような雰囲気がある。
なお、当事者の一人、城島捕手は現役引退後の2020年4月、西日本スポーツの取材に対し「そんなこと言うわけないやん!(笑)ブルガリア? 琴欧洲しか思い浮かばんけどなぁ。『利き手はやめろ!』とは言ったけど、その後に何て叫んだかなんて覚えてないですよ」と言及している。このため、少なくとも城島自身は「ブルガリア」と意図して、明確に発音したつもりはなかったと考えられる。