炎に沈む地に 神なる声響かむ
死者の砂漠越へ 絶望の海越へ
吾を求める者は 勇気を持つて来たり
立ち上がりし者 其の名はアンリ
──吟遊詩人が歌うアンリ・サーガ
《OVA「ファイアーエムブレム紋章の謎」第1話 アリティアの王子》
概要
ファイアーエムブレムのアカネイアシリーズに登場する歴史上の人物。
作中に本人は登場せず、「アンリ・サーガ」としてその伝説が語られる。
人物
マルス・サーガのおよそ百年前、アリティア王国を建国した初代国王「アンリ一世」。
生年は不明。アカネイア暦537年没。
もとは辺境の開拓都市アリティアで暮らしていた無名の青年。「第一次ドルーア戦争」の最中、白き賢者の試練に挑み、険しい旅路を単独で踏破して神剣ファルシオンを入手。この際にアンリが辿った氷竜神殿までの道のりは「アンリの道」として後世に伝えられている。
メディウスに戦いを挑んだ。七日七晩に渡って続いたといわれる壮絶な一騎討ちの末、ついにメディウスは斃れ、アンリは人類の救世主となる。
アカネイア歴498年、氷竜神殿より戻ったアンリは光の剣を片手に、単身で地竜王アカネイア王家で唯一人生き残っていたアルテミス王女とは、彼女がアリティアに隠遁していた頃より相思相愛の間柄。しかし、英雄といえどもアンリは所詮、騎士ですらない卑賤の輩としか見られなかった。
アンリがアルテミスと相思相愛であることを知ったアカネイアの生き残り貴族たちはこれに憤激し、カルタス伯爵とアルテミスとの婚姻を強行。
こうして2人は引き裂かれ、今生の別れとなる。
失意のうちに故郷へ戻ったアンリは「アリティア王国」を建国するものの、アルテミスへの愛を貫くことを誓ったアンリは生涯に渡って妻を娶ることを拒んだ。そのために世継ぎを残すこともなく、弟・マルセレスらに「アリティアは(アカネイア)聖王国の楯となるべし」と遺言して世を去った(ちなみにアルテミスは、カルタス伯爵との間に男児をもうけて間もなく、若くして死去した)。
アリティアの王位は王弟マルセレスが継ぐことになるが、王位継承に際して政争が勃発し、グラ王国が分離独立することになる。
容姿
作中には一切登場せず描写もない為、長らく不明だった。「新・暗黒竜と光の剣」プロローグで語られる伝説の中、メディウスとアンリの戦いの一枚絵が登場し、後ろ姿であるが外見が判明。
青髪の長髪に鉢巻きを締め、立派な肩当にボロボロのマントを纏い、神剣ファルシオンを両手で構える姿が見られる。
商業出版物
佐野真砂輝&わたなべ京によるコミカライズ(あすかコミックスDX)では、緑髪のセミロングでやや逞しい美形として描かれた。
『ファイアーエムブレム ザ・コンプリート』(NTT出版)のイラストでは青い長髪の青年。淡い赤の装衣に厚い皮のマント、布止め首周り防具、黄色い腰袋。
個の英雄
個人の武勇に優れ、"群の英雄”マルスとは対照的に“個の英雄”と評される。
たった1人で野生化した竜族が跋扈するマーモトードやフレイムバレルを踏破し、単騎で地竜王を討ったというアンリ伝説が真実であるならば、個人の武力としては作中に登場するどの英雄をも上回るだろう。
余談
- 「暗黒竜と光の剣」ではマルスの祖先はアンリと説明されている(説明書に「英雄アンリの血を引く、アリティア王国のコーネリアス王は(以下略)」と記述)。弟マルセレスの存在は「紋章の謎」以降明らかになった設定。
- アンリとアルテミスの悲恋の伝承は、『暗黒竜と光の剣』当初は20章「ブラックナイト・カミユ」にてアルテミスのさだめというフレーズが出てきたのみで、内容は不明だった。『紋章の謎』の2部14章「明かされた謎」でその内容が判明。詳細はアルテミスを参照。
- 名前の由来はケルト神話のアルスターサイクルに登場するウシュナハ三兄弟の1人「アンリ(Ainle)」と思われる。三兄弟の残りの2人は聖戦の系譜で登場する「ノイシュ(ノイッシュ)」と「アーダン」。