概要〜戦車絶対殺すマン〜
対戦車兵器の中でも異彩を放つ本兵器はドイツ国防軍にて1942年に採用された。
当時のドイツ軍での歩兵が持てる対戦車兵器と言えば、擲弾発射器のカンプピストルかM24型柄付手榴弾の弾頭を複数取り付けた収束装薬程度だった。あとは対戦車ライフルくらい。
話を戻すと、吸着地雷は弾頭に成形炸薬(パンツァーファウストやパンツァーシュレックなどと同じ)を採用し、モンロー/ノイマン効果により140mmの装甲板を貫通することができた。
また、吸着地雷の名の通り、成形炸薬を内蔵した漏斗状の本体の先端に、ブラケットを介して3個の永久磁石が取り付けられている。また、磁石は成形炸薬と目標との最適距離を保つ役割をする。
敵戦車に肉薄しなければいけない為、随伴歩兵やタンクデサントがいた場合はただの自殺行為となってしまうので、使い勝手の良い兵器では無かった。
1943年以降はパンツァーファウストやパンツァーシュレックに更新され、1944年5月には生産終了。残存していた吸着地雷はそのまま使用された。
使用法
- 戦車の死角から近づく。
- 戦車に取り付け、磁石がキチンと着いたか確認。
- 点火紐(クラッカーの紐と同じ)を引っ張って信管を作動。
- 直ちに安全圏に退避!!(爆発に巻き込まれる)
ツィンメリット・コーティング
連合国側はこのような兵器を持たなかったにもかかわらず、ドイツ軍は敵軍もこの武器を対戦車兵器として用いることを危惧して、自軍の戦車装甲に「ツィンメリット・コーティング」(Zimmerit Coating/Zimmerit-Anstrich)という磁石がくっつきにくい非磁性体を塗布する対抗処置を施していた(→独国面)。ティーガーなどの表面装甲に刻まれた独特の波型文様がそれである。この塗布工程で表面に文様が付くプロセスは未だはっきり分かっていない。
開戦後は流石に無意味な工程と気付き、1943年9月には廃止された。代わりにアメリカ軍で歩兵用の対戦車兵器として活躍したのが60mmバズーカ、かのM1A1である。
しかし現代では戦車モデラーを悩ます意匠として残る。模型ではパテにナイフで刻み模様をつけたり、専用のローラーで模様をつけたり、文様が刻まれた薄いプラスチックシートを貼り付けるなどの製作方法がある。
日本の場合
我等が日本陸軍も同様の兵器を開発している。
その名も九九式破甲爆雷。こちらは1939年から配備されている。その使用法の為か本来の意味での特攻兵器ではないが、特攻兵器に分類されることもある。平たく、円形で、磁石が4つ取り付けられているので、「亀」、「亀の子」などと呼ばれていたらしい。
吸着地雷は接近して取り付けなければならないが、九九式破甲爆雷は投擲して取り付けることもできた。もちろん近づいて取り付けることもできる。
成形炸薬とノイマン効果があまり普及していなかった時期の対戦車兵器なので、装甲破壊能力は爆風の圧力によるもの。1個で使用することも出来るが、2個を重ねる事で威力を上げられる。1個の場合は、19〜20mm。重ねた場合では32〜40mmの装甲を爆砕することができた。数値がばらけているのは、日本側の試験記録と米国側の資料に違いがあるから。いつもの。
……この他にもドイツの吸着地雷を元にしたと思われる、円錐爆雷を開発しており、基本性能も概ね同じである。
ただし、磁石による吸着ではなく、天板に設置して使用するタイプの時限爆弾である。